「お局さま」がいるのは日本だけ?「お局になりたくない…」の呪いを解く

 「お局さま」がいるのは日本だけ?「お局になりたくない…」の呪いを解く
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巷で何気なく使われている言葉たち。一見すると社会に浸透しているけれど、どうしても違和感が残る…そんな言葉があります。それらの違和感に目を向け、その裏にある構造に思いを馳せてみると…「存在していたのに見ないようにしていた」事実が見えてきます。 フェミニズムやジェンダーについて執筆するライター、原宿なつきさんの連載コラムでは、日常に溢れた"言葉"に対する違和感をすくい上げ、その正体を解説していきます。今回取り上げる言葉は「お局さま」。

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先日、友人とお茶していたら、「会社のお局がさー」と愚痴られました。お局って言葉、死語かと思っていたのですが、まだ使っている人はいるみたいですね。さらに友人は、「自分もお局にならないように気をつけたい」とまで…いやいや! それって自分に呪いをかけすぎではないでしょうか。

自分を縛り、呪いをかける言葉って色々ありますよね。たとえば、かつては、「女性はクリスマスケーキ」という言葉がフツーに使われていた時代があったと言います。クリスマスケーキの売りどきが(12月)24日であるのとかけていて、女性は結婚という市場においては「24歳」が一番売りどきで、それ以降はどんどん値崩れしていく…という意味の言葉で、この呪いにかかった人は、若さが失われることを(つまり生きることを)悲観することになります。

「お局さま」は、「女性はクリスマスケーキ」ほどあからさまではないため、一見、害のない言葉のようにも思えます。しかし、「女性に呪いをかける」という点では、「女性はクリスマスケーキ」と同じくらい罪の重い言葉ではないでしょうか?

「お局さま」って誰のこと?

「お局さま」とは、会社にいる年配の女性のことです。ただし、ベテラン社員であれば全員が「お局さま」と言われるわけではありません。組織を仕切っていたり、威張り散らしていたり、口調がきつかったり………つまり、「なんだか偉そうな年配の女性社員」と認識された者のみが「お局さま」呼ばわりされるのです。

では、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じた鬼上司、ミランダは「お局さま」でしょうか? めちゃくちゃ横暴に権力を行使しまくっている彼女ですが、「お局さま」呼ばわりされることはありません。なぜなら、ミランダには編集長という役職があり、絶対的な権力者だからです。地位と権力があるゆえに、誰も逆らえないし、バカにできない存在としてミランダは描かれています。

お局さまとは、「態度はデカイけど、絶対的地位や能力があるわけではない女性社員」に使われがちです。「在籍期間が長いだけで威張りやがって」という苛立ちが、「お局さま」というワードには内包されているのです。

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原宿なつき

原宿なつき

関西出身の文化系ライター。「wezzy」にてブックレビュー連載中。



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