月経カップや吸水ショーツだけではない!日本と東南アジア市場に見るフェムテックの真髄
月経カップや吸水ショーツなどピリオドヘルス関連のアイテムが注目され利用者が増えている『フェムテック』。実は全世界人口の約半分の健康問題の支えとなると期待されているそう。今回は、世界初のフェムテック専門オンラインストアを展開するfermata(フェルマータ)株式会社の初の海外支店であるfermata Asia Pte. Ltd.にお話をお伺いしました。そもそもフェムテックとは何なのか、何を目指しているのか?また日本そして東南アジアのフェムテック市場の動きや違いなどについて興味深いお話が盛りだくさんのインタビューとなりました。
そもそもフェムテックとは?
——ここ数年で「フェムテック」という言葉を耳にすることや目にする機会がとても増えました。けれど「フェムテックって何?」と聞かれるとしっかりと答えられる人は少ないのではないかと思います。そもそもフェムテックの言葉の語源は何なのでしょうか?
フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語で、英語のFemTechがそのまま日本語としても使用されています。2012年にドイツの月経管理アプリ『Clue』の設立者イダ・ティン氏が初めてこの言葉を使ったと言われています。
——2012年と言うと、まだ生まれて10年なんですね。具体的にはどういったサービスがフェムテックになるのでしょうか?
ライフステージごとに女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決するのがフェムテックです。
具体的に身近なものですと月経予測や妊娠サポートをするアプリや、最近日本でも利用者が増えている吸水ショーツ、月経カップなどがフェムテック分野に入ります。
また、シンガポールをはじめとした海外では不妊対策、セルフプレジャー(セックストイ)や更年期障害の改善、女性特有の病気ケア、遠隔治療(ビデオチャットを利用して専門医に相談ができるサービス)などは人気のフェムテックです。
——更年期障害の改善や遠隔治療などは興味深いですね。
フェルマータでは販売されていませんが、更年期のほてりを感知するブレスレットは人気です。シンガポールでは、遠隔治療は、婦人科を受診したくてもできないという働く女性が多いことも理由に上げられますが、プライバシーを守りたいと言う方も多く、例えばビデオチャットで低用量ピルを処方してもらうことが可能です。
女性の活躍をサポートするフェムテック
——米リサーチファームFrost&Sullivanの2018年の調査によると、フェムテックは2025年までに5兆円規模のマーケットになると予測されていますね。世界では今まさに注目の分野と言えますが、日本でも同様に注目が集まっているように感じます。この勢いを後押ししている背景には、どういったものがあるのでしょうか?
日本でも、ここ10年〜20年で女性の社会進出が活発になったことが一因と言えるかもしれません。企業でも管理職の女性も増えていますし、出産しても働き続けている女性も多いです。
社会で活躍する女性が増える一方、月経痛やPMSの辛さ抱えながら無理をして働き続ける女性がいたり、出産を機に復職できない女性がいたり、更年期に入ってそれまで無理できたことができなくなっているのは、フェムテックによって解決していけることではないでしょうか。
——体調を崩してまで無理をしていた人や「女性だから」という理由で諦めていた方にとっての救世主ですね。
シンガポールの話にはなりますが、女性は産後2~4か月でフルタイム復帰するのが一般的です。そんな女性を支援していくための『マッサージ機能付きのハンドフリー搾乳ブラ Lilu』などは良い例だと思います。
搾乳は時間もかかります。また産後3ヶ月であれば1日に3回〜6回程度搾乳しなくてはいけません。けれど、勤務中数時間ごとに搾乳をするのは仕事にも精神的にも負担がかかります。個人差はありますが、搾乳をしなければ乳腺炎にもなってしまうこともありますから、まさに働く女性の救世主と言えるフェムテックではないでしょうか。
——シンガポールでも日本同様に、少子化が進んでいますが、こういったフェムテックのサービスが増えて、一般的になれば子育てと仕事の両立という課題の助けにもなりそうですね。
少子化という社会問題もフェムテックが解決をしていきたい問題です。最近では福利厚生の一環として不妊治療を受けられる『Carrot Fertility』というフェムテックサービスが注目されています。加入企業の従業員は、費用負担を減らして、卵子凍結や人工授精の治療を受けることができる他、養子縁組のサポートを得ることができるといったサービスです。
また、フェルマータシンガポールでも取り扱いのある『kegg』は、排卵日測定と膣トレ デバイスで、妊活をしている女性をサポートしてくれる機器です。おりものの状態から、排卵日と妊娠しやすい時期を事前に割り出してくれるものでわずか2分で計測できます。付属で骨盤底筋トレーニングもできるようになっています。
——一人一人の女性の健康を支えるだけでなく、社会全体をより良い方向へと導くためのものとして注目されているというわけですね。
その他にも、ここ1−2年で「生理貧困」という社会問題が浮き彫りになりました。お金がなくてナプキンが買えないという、特に学生に多いと言われています。多くの女性が声をあげた#metoo運動も後押しとなって、こうした生理や今までタブーとされてきた女性の「性」の問題に声を挙げる人が増えたのも、フェムテックの勢いを後押ししてくれていると思います。
性に対するタブーはなくなるのか?
——フェムテックの誕生によって、なんとなく他人には共有しづらかった女性特有の悩みや問題が、最近では可視化されるようになったと感じています。性に対するタブーはなくなりつつあるのでしょうか?
日本では、ここ数年でだいぶ性に対してオープンな人が増えてきたように思えます。先述した生理貧困などの問題を解決するために、トイレに「生理用品を置いてほしい」と張り紙を貼る学生がいたり、小学校で行われる性教育を男女別々で行うのではなく、一緒に行うことを促す署名活動をしている人などもいます。
ポジティブな人も増えてきましたが、やはり中には揶揄するような人もいるのは事実です。
——色々な意見を持った人がいますからね。シンガポールではどうでしょうか?
フェムテックという言葉の盛り上がりを見ると、アジアでは日本が先行しており2021年ごろからシンガポールでも注目度が高くなってきたように思います。
日本では吸水ショーツがブームとなりフェムテックを牽引しましたが、シンガポールではセクシャルウエルネス分野から盛り上がりが始まりました。例えば、緊急避妊薬や性感染症検査キットのオンライン・サービスを提供するEase Health が注目を集めました。
国によって医療機器等の承認プロセスが違うため、日本ではまだ申請中のデバイスをシンガポールでは先行して販売できるケースもあります。新しい製品やサービスをいち早く導入しやすい面があるので、今後フェムテックの進展は早いかもしれません。
おすすめのフェムテック
——フェムテックが今よりも身近になることで、女性の健康課題解決や社会全体がより明るくなっていきそうですね!フェムテックには興味があるけれど、たくさんのサービスの中から何から始めてみればいいか分からないという方におすすめはありますか?
初心者の方で月経のある女性でしたら、吸水ショーツは持っていて損はないと思います。ただ履くだけなので。ただし個人差はあると思いますが、1−2日目など多い日で外出する日は、月経カップと合わせて使用するのがおすすめです。4-5日目など、少ない日は生理用ショーツだけで快適に過ごすことができる方が多いと思います。
——月経カップは気になっている方も多いと思いますが、「使用が難しいのでは?」と躊躇されている方も多いようです。
月経カップは慣れるまで数か月かかる人も多く、最初のハードルは高いかもしれません。しかし、カップひとつあれば他の生理用品が必要なくなったり、生理の日でも温泉や水泳を楽しめたり、慣れるとその便利さに手放せなくなる人も多いです。
サイズと硬さが選ぶポイントです。経腟分娩経験者は大きめのサイズを、膣に違和感を感じやすい方はやわらかめを選ぶのがおすすめ。例えば韓国のセクシャルウェルネスブランド『EVE』の月経カップはやわらかい医療用シリコーンでできているので初心者におすすめしています。
自分に適した装着のコツやタイミングなどを模索しているうちに、自分の体をより理解できるようになっていきますよ。
——ピリオドヘルス関連のアイテムは取り入れやすいということですね。生理が止まっている女性などはどうでしょうか?
産後や更年期を迎える女性がよく抱える問題として尿もれがありますが、そういった方は、膣トレのためのディバイス『Perifit (アプリ連動・骨盤底筋トレーニング)』はおすすめです。アプリに数多くのゲームが用意されていて、楽しくトレーニングができます。さらに骨盤底筋力が数値化され、可視化できるのでトレーニングが続けやすいのではないかと思います。
ライターの取材後記
私がフェムテックを知ったのは約5年前。サステナブル関連の取材を通して、吸水ショーツに出会ったのが最初でした。ゴミを減らすことはもちろんのこと、女性の健康課題、そして女性の社会進出を助けるというフェムテックが挑んでいることはまさにサステナビリティーなのだということが、改めて今回の取材で理解できたと思います。この取材を通して、フェムテックの真髄に触れることができました。今後も、目が離せませんね。
取材協力- fermata Asia Pte. Ltd.
「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに掲げ、女性のウェルネス課題の解決・支援事業を行うfermata(フェルマータ)株式会社の初の海外支店として2020年に設立。
東南アジア初のフェムテック専門ECサイト「fermata Singapore」では、日本未入荷のプロダクトも含め多様な商品をお届け。その他にもイベント開催や『東南アジアFemtechマーケットマップ』を作成し、日本と東南アジアを繋げてボーダーレスなフェムテック市場を創出。フェムテック産業の活性化を図っている。
※本記事でご紹介した商品の内、『Lilu ハンズフリー マッサージブラ』、『kegg fertility tracker & kegel ball 排卵日測定 & 膣トレ デバイス』『Perifit (アプリ連動・骨盤底筋トレーニング)』は、フェルマータシンガポールでのみの取り扱いとなります。
日本からご購入される場合は、以下の点をご留意下さい。
・購入者ご自身が使用される場合のみ対象となります。自己責任のもと、個人輸入および製品をご利用ください。
・輸入における送料は購入画面(Check Out)でご確認 できます。関税・消費税は、配送業者の指示に従って国内にてお支払いください。
AUTHOR
桑子麻衣子
1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く