後編|発達障がいを描く漫画家ぴーちゃん「『自分を許す』作業を繰り返すことが、鬱抜けのきっかけに」
発達障がいを抱える人たちへ、どうか「自分のこと」を雑に扱わないで
ーー発達障がいを抱え、生きづらさを感じている方たちへ伝えたいメッセージはありますか?
「『何とかなります』とか『人生生きてれば絶対いいことあります』みたいな励ましは、無責任で好きではないです。一つ言えることは『どうか自分のことを雑に扱わないで欲しい』ということですね。自分で自分を諦めてしまうと、そこですべてが終わってしまいます。辛いことはたくさんあるけれど、自分のことだけは見捨てないで欲しいなと思います。鬱抜けした経験があるからこそ言えることですが、自分を深く愛せるのは自分しかいないと思うので、自分を雑に扱うことはしないで欲しいなと思います。」
ーーぴーちゃんさん自身が、自分を大切にしようと思えたきっかけや瞬間があったのでしょうか?
「パレットークに入ってフェミニズムに多く触れる機会があって、フェミニズムを学んでから『自分を大切にする』ことについて考えるようになりました。初めは難しそうというイメージが強かったのですが、フェミニズムを専門にしている副編集長の伊藤さんと話しているうちに徐々に理解が深まっていき、私に必要だったのはフェミニズムだったんだ!と思いました。他にも、ボディポジティブの考えにもすごく助けられたと思います。自分の体がすごく嫌いだったのですが、自分の顔や体に対して自分のままでいいんだと思えたし、ナルシシズム的な意味ではなく、自然にあるがままで美しいものなんだと思えました。そう思ってから、不思議と周囲からも肯定的な言葉を投げかけてもらえる機会が増えたという実感があります。まずは自分を肯定することが、他人から肯定されることにも繋がっていくのだと実体験をもって学びました。」
同世代の生きづらさを抱えている人たちのロールモデルになりたい
ーーSNSやコミックエッセイなど活動の幅を広げていらっしゃいますが、今後の目標や予定はありますか?
「私が発達障がいと診断された時や、鬱になった時に、欲しかったものになろうと決めています。自分と同世代のロールモデルです。20代で発達障がいをオープンにしている人がいなくて、欲しいと思える情報が手に入りづらかったし、何を目標にしていいのかも分からない状態でした。それでも走り出さなきゃいけないことで混乱してしまいました。もしあの時、寄り添える存在がいたら、こうすればいいんだとか、あんな風になりたいという原動力になっていたと思うので、私が同世代の生きづらさを抱えている人たちのロールモデルになれたら嬉しいです。そのためには、絵を通して、分かりやすく発達障がいについて伝えていくことが大切だと思っています。」
プロフィール/ぴーちゃん
1997年生まれ。元美大生。普段はイラストレーターとして活動。WEBメディア「パレットーク」で働くインターン。 同メディアの記事「うちのインターン生はADHDです。」が話題を呼び、ADHDとうつを抱えてサバイブしてきた日々を描くコミックエッセイ『ぴーちゃんは人間じゃない?ADHDでうつのわたし、働きづらいけどなんとかやってます』 (イースト・プレス)が好評発売中。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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