ありのままの自分を受け入れ愛するために|専門家が推奨「セルフ・コンパッション」3つのやり方

 ありのままの自分を受け入れ愛するために|専門家が推奨「セルフ・コンパッション」3つのやり方
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研究室から日々の生活へ

他人や自分自身に思いやりを示す(またはしない)ときに生理学的に起きていることを知るのもいいが、その学びを日常生活に生かすのも大事だとネフは言う。たとえば、自分に厳しい人がいるとしよう。慢性的に自己批判をしていると交感神経系が優位なままになり、それが続くと不調につながる。 

「本来、交感神経系は肉体的な脅威に対して活発化するものでしたが、現代の私たちを脅かすもののほとんどは、私たちのマインドから生み出されています」とネフは言う。「たとえば〝私は十分ではない〞といった思考です」。だが、それとは逆のこと、つまり、ありのままの自分を受け入れて慈しみ、セルフ・コンパッションを実践すると、自分の痛みや傷を優しく愛をもって抱きしめられるようになり、交感神経系がオフになって癒しが促進されるのだ。

もちろん、自分を親しい友人のように思いやるのが難しい人もいるだろう。人には思いやりを持つのに、自分には優しくできない人が多いとネフは言う。だが次のことを聞いたら、考えが変わるかもしれない。「自分へのセルフ・コンパッションを最優先にすると、人に対してさらに思いやりが持てるようになります」。なぜなら副交感神経系(穏やかさ、リラックス、安心感をもたらす神経系)がより頻繁に優位になると、世の中に対してもっとマインドフルで優しい自分でいられるようになるからだ。これは思ったよりも簡単に実践できる。その根拠は私たちに生まれつき備わっている、人を助けたり人とつながろうとする能力にある、とドティもネフも述べている。

「哺乳類はとても未熟な状態で生まれます。私たちの脳は完全に発達するまでに数十年かかるため、乳児や子供が安全を感じられるような生物学的システムが必要だったのです」とネフは説明する。だからこそ、私たちは優しく穏やかな声のトーンを聞くと安心し、ボディランゲージを通じて人の感情を感じ取ることができる。また、ほかの人の動作を反射的に真似たりもする。「私たちは顔の表情や声の抑揚、ボディランゲージ、匂いを通じて感情の状態に反応するように調整されています。それらは潜在意識レベルで行っています」とドティは説明する。
私たちは、この生来備わっている思いやりの能力を高め、実践を通じて強化することができる。これが医療現場でどう生かされるかという調査に関心を持つ医療従事者や患者も多い。2019年に『BMCメディカル・エデュケーション』誌に掲載されたレビューによると、セルフ・コンパッション・トレーニングを受けた医学生は、仕事のストレスをうまく管理でき、患者とより良い交流が持てていることがわかった。米国臨床腫瘍学会の機関誌で発表された別の研究では、入院患者はほんの40秒でも思いやりのある言葉を聞くと、不安が軽減されるという。また『ヘルスサービスリサーチ』誌での2010年の研究では、心臓発作後に思いやりに満ちたケアを受けた患者は、1年以内に死亡するリスクが低かった。

この分野を調査している学者たちは、研究の結果を教室でも活用している。ウェズリアン大学の心理学教授スコット・プルスは、自分の社会心理学のコースを「思いやりの日」で締めくくることにしている。プルスは生徒たちに一日中思いやりを持つことに集中させ、その体験をレポートに書かせている。ほとんどの生徒が、このエクササイズによって家族との関係修復ができたり、隣人たちに手を差し伸べるようになったと報告している。

どれだけ思いやる力があるかに関わらず、ヨガの練習はさらにその能力を高めてくれる。「ヨガを実践している間、私たちは体や呼吸の動きに意識を向け、考えることをやめています」とネフは言う。

「その瞬間は、日々の出来事や自分の欠点も忘れているでしょう。私たちは体に意識を向けて大切に扱い、穏やかに自分自身とともにいられます。それがセルフ・コンパッションです」

結局のところ、自己批判ばかりしている人は、他人に対しても批判的になりやすい。「自分を大切にしていなければ、ほかの人との関係も問題が起こりがちでしょう」と、クリパルセンターのライフコーチで上級教員であるアルーニ・ナン・フトゥロンスキは言う。「セルフ・コンパッションは、変化の種を育む大地です。力や意思やエゴで変化を起こそうとしても、それは一時的です。でも思いやりを持つと、自分よりも大きな何かが現れます。それは恵み、大いなる力、体の知恵と呼ばれる人生のパートナーです。私たちは一人ではありません。そして、その変化はずっと続くのです」

1968年にルースがドティに将来の夢をたずねた時、彼が真っ先に答えたのは、医者になるということだった。彼女はドティに、きっと大学や医学部に通えるようになると信じさせた。いまや外科医になったドティは、脳の手術を行う際には、ルースから学んだ実践で呼吸を落ち着かせ、手を安定させ、体をリラックスさせている、と話す。その実践は、ドティが教えるセルフ・コンパッション・トレーニングにも組み込まれている。 

「私たち誰もが、思いやりによってほかの人の人生を変えることができます」とドティは言う。「私が子供だった頃、ルースはこう言いました。〝あなたの心はコンパスで、それは最も素晴らしい才能なの。迷ったら、とにかくコンパスを開きなさい。そうすれば、正しい方向に導いてくれるから〞」
コンパッションを教えたり学ぶとき、ドティは自分のベストを尽くし、ほかの人にもそのマジックを見せるようにしている。

ありのままの自分を受け入れ、愛するために
「体に意識を向けて大切に扱う。それがセルフ・コンパッションです」

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by Amanda Tust
photos by Bryan Garces, Jon Tyson, Jonne Huotari / Unsplash
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.71掲載

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ヨガジャーナル日本版編集部

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