ありのままの自分を受け入れ愛するために|専門家が推奨「セルフ・コンパッション」3つのやり方
ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!セルフ・コンパッション(思いやり)は、健康や人間関係、さまざまな困難を乗り越え、癒しをもたらすことができる。
思いやりの科学の分野が、この10年で急成長を遂げている。研究者たちは、健康問題を改善し、人間関係を強化するパワフルな思いやりの実践について研究を重ねている。今回は最新の調査結果をふまえながら、自分やほかの人を大切に扱うと、心身にどのような影響が起こるかを見ていく。
子供の頃、ジェームス・ドティは世界は親切な場所ではないと感じていた。中学3年生になる前の夏、彼は故郷のカリフォルニア州ランカスターでオレンジ色のスティングレイという自転車を乗り回していた。芝刈りで稼いだお金を貯め、両親と兄と暮らしている居心地の悪いアパートから猛然とペダルを踏んで自由を得るために、この自転車を買ったのだった。
アルコール依存症だった父親は、出かけると数日から数週間は帰ってこないことが多く、残された家族が食費に困ることも度々あった。母親は慢性的なうつ状態で、ほとんどの時間をベッドで過ごしていた。父親が家にいると両親は口論が絶えず、母親は涙にくれていた。ドティの兄はひどくやせていて、いじめられていた。そのためドティは、兄を守るためにしょっちゅう喧嘩に巻き込まれていた。「怒りや絶望や恥ずかしさでいっぱいでした」とドティは言う。「何が起こるかまったくわからない日々でした。なお悪いことに、その状況にいるのは自業自得だとなぜか思っていたんです」
ある夏、ドティはひとりの女性に出会った。その出会いがすべてを変えることになった。彼女は、ドティがお金もないまま立ち寄った手品の店で働いていた。カウンターにいたその女性ルースは、とても親切で優しかったので、彼女から自分の生活について聞かれたとき、ドティは正直に答えた。「ほかの人に話したことはほとんどありませんでした。すごく恥じていたし、いろいろ判断されるのを恐れていたから」と彼は思い返す。
ルースはドティに、また店に来てくれたら、ここでは売っていない、人生を変えるマジックを教えてあげる、と言った。そこで彼は、毎日自転車に乗って店に通うようになった。ルースは彼のために昼食を持参し、ふたりは店のオフィスの金属製の椅子に座って、食べたりおしゃべりをした。ドティは、母と兄のことがいつも心配で、父に怒りを感じていることを彼女に打ち明けた。それを聞くと、ルースは瞑想のやり方を教えてくれた。彼女は彼に、不安や怒りや悲しみを感じたときに体に起こる感覚に注意を向けるように促した。そして、深いリラックスをもたらす、頭からつま先までのボディスキャニングを紹介してくれた。さらには呼吸法やマントラ、そして「私には価値がある、私は愛されている、私は自分を愛している、私はほかの人たちを愛している」と唱えるセルフ・アファメーション(自己肯定)や、将来の目標の定め方も教えてくれた。なかでも、自分の人生に関わる人々や自分自身を無条件に愛することによって「自分の心を開く」方法を彼女が教えてくれたことがいちばん大きかった、とドティは語る。
現在64歳のドティは、ルースが教えてくれたマジックは、彼が想像上の貯金箱を割って買おうと思っていたどんな手品カードよりも価値があったと語る。「ルースは本当の思いやりを教えてくれました。それは世界に対する関わり方だけでなく、世界の私に対する関わり方も変えたのです」
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