理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント

 理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
Yuki Horikawa
堀川ゆき
堀川ゆき
2020-01-30
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2.怪我などのリスク回避ができている

身体のためにヨガをやっているはずが、正しい身体の使い方を知らないと、身体に良いどころかむしろ身体を壊してしまう可能性が出てきてしまいます。

過伸展を注意してくれる

過伸展とは、関節が必要以上に反ってしまうことで、「ハイパーエクステンション」ともいいます。この状態でヨガを続けていると、体重がかかることで関節や靱帯に負担がかかり、痛みや故障を招くため危険です。

過伸展の原因は、関節に頼った使い方にあります。まるで突っ張り棒のように「関節をロック」する使い方です。それだと関節にかかる負荷を筋肉で吸収せずに、関節がダイレクトにストレスを受ける状態になってしまいます。

ヨガで過伸展を起こしやすい関節は決まっています。それは、「肘・膝・手首・首・腰」の5か所です。詳しくは、以下のコラムで話してますのでチェックしてみてくださいね。

▶肘…そのポーズ、肘が「過伸展」しているかも?理学療法士による過伸展チェックポイント
▶膝…膝の「過伸展」とは?理学療法士によるアーサナ過伸展チェックポイント
▶手首…ヨガ中の痛めやすさ2位…「手首」を守る3つの秘訣|理学療法士が解説
▶腰…「ヨガで腰が痛くなる…」理学療法士が解決、骨盤のニュートラルを知ろう

理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
Photo by Yuki Horikawa

「膝」に関しては過伸展だけでなく、knee inといってポーズの際に膝が内側に入るように曲がってしまっていないかを注意してもらえるかもポイントです。膝は複雑な構造をしていて、正しく動かさないと靭帯を痛めることの多いナイーブな関節なのです。

「首」は、後屈という天井を見上げる動作で負担がかかりやすいため、頚椎とともに胸椎の伸展を誘導するなどして、過伸展を注意しなければなりません。

そして、ヨガポーズの最も基本となるタダーサナのような立位姿勢で、機能解剖学的な正しいアライメントを分かった上でヨガを指導しているかどうかも大切です。くわしくは、こちらのコラムでお話しています。

「タダーサナ」がすべてのアーサナの基本!理学療法士が重視する理想的な「姿勢」とは?

呼吸を確認してくれる

ヨガクラスの時に、ポーズに夢中なり過ぎて呼吸が疎かになってしまうことは誰でも経験があると思います。そういった状態を避けるために、呼吸を続けることをガイドしてもらうことは重要です。

なぜなら「バルサルバ現象」が起こるからです。息を止めることで、瞬発的にいつも以上の筋力を発揮することができます。運動の目的や患者さんの治療の中で、このバルサルバ現象を有効に利用できるケースもありますが、心拍数と血圧を一気に上げたり下げたりするので、高血圧や心疾患をお持ちの方にはとても危険です。そのため、ヨガ中は息を止めずに呼吸を続けるガイドが大切になります。

水分補給を促してくれる

運動中に水分補給をすることは、脱水や熱中症予防のために今は積極的に推奨されています。脱水や熱中症は、ヨガのような屋外で行うものでも当然起こり得ます。特に夏場や発汗量の多いヨガクラスの場合は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質(ミネラル)も必ず補給することがポイントです。

プロップスの利用を勧めてくれる

ブロックブランケットヨガベルトなどのプロップスや壁などを有効に使いましょう。プロップスを使うことで、ポーズの補助になり、結果身体への過度の負担や怪我のリスクを軽減することになります。プロップスでの軽減法を教えてくれて自由に選択させてくれる先生だといいですね。

3.「筋力・柔軟性・バランス能力」の3要素が揃っている

身体の機能としてまず大切な基本は、「筋力」「柔軟性」「バランス能力」の3要素だと私は思っています。それについてはこちらのコラムでお話しました。

たとえリストラティブヨガなどリラックス系のクラスだとしても、マタニティヨガでも、高齢者が多かったとしても、筋トレ系のポーズは必ず入れるべきです。ストレッチのポーズだけになってないかどうか振り返ってみましょう。ストレッチポーズで「柔軟性」ばかり高めても、実際に身体を動かして支えているのは「筋力」です。

そして、ヴルクシャーサナ(木のポーズ)などの「バランス能力」を高めるポーズにもどんどんチャレンジしましょう。バランスポーズを取ることで、筋骨格系だけでなく、感覚系、中枢神経系にも作用するのでとても有効です。

数あるヨガポーズを「筋力」「柔軟性」「バランス能力」の3つに分類して整理してみて、それぞれのエッセンスをきちんとクラス内に取り入れましょう。

最後に

機能解剖的にみた3つのポイント、いかがでしたか?あくまで、ヨガとピラティス指導をしている理学療法士の一個人の考えですが、参考になる部分や共感してもらえる部分があれば、とても嬉しいです。

もちろん私もいつもパーフェクトなクラスを提供できる訳ではありません。日々勉強中ですし、毎回反省点はあります。ヨガインストラクターの方においては、ここにあげた知識や技術だけでなく、まず生徒さんへの「思いやり」をいつも心にもつことが大切なのではないかと思います。そして個性や価値観や背景も違う生徒さん一人一人が「今日ヨガに来てよかったな」と、何か一つでも感じてもらえるような出来事や収穫があれば、充分素敵なのではないのでしょうか。

理学療法士からみた「良いヨガインストラクター」とは?機能解剖学的3つのポイント
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ライター/堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。モデルやレポーターとして活動中ヨガと出会い、2006年にRYT200を取得。その後、健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士国家資格を取得し、慶應義塾大学大学院医学部に進学。現在大学病院やスポーツ整形外科クリニックで、運動機能回復のためのリハビリ治療に携わる。RYT200解剖学講師も務める。

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