代謝アップ&良い姿勢に!理学療法士が解説「抗重力筋」を鍛える方法
理学療法士が「抗重力筋」を鍛えて代謝をアップし、良い姿勢になる方法を教えます。
抗重力筋とは
抗重力筋(こうじゅうりょくきん)とは、「地球の重力に対して姿勢を保持するために働く筋肉」のことです。立っているだけ、座っているだけでも常に抗重力筋のどれかが働いています。抗重力筋は、下腿・大腿・殿部・腹部・背部・首といった身体の前後に張り巡らされ、前側の筋肉と背中側の筋肉とが互いに伸び縮みをしながらバランスを取っています。
具体的に抗重力筋をあげてみましょう。文献によって少し違いはありますが、首都大学東京理学療法科教授で医学博士の竹井仁先生によると、以下の筋肉です。
・頚部伸筋群と頚部屈筋群
・脊柱起立筋群
・大殿筋
・ハムストリングス
・下腿三頭筋
・腹筋群
・腸腰筋
・大腿四頭筋
・前脛骨筋
ちなみに、時々生徒さんに聞かれるのですが「抗重力筋」という名前の筋肉は存在しません。抗重力筋は、上記した複数の筋肉の総称です。
私達の身体は、筋肉が働かないと、体幹や内臓の重さで前に倒れます。その前方にかかる力を制御するために、後方から引っ張る力が必要です。それは、頚部伸筋群・脊柱起立筋群・ハムストリングス(その中でも特に大腿二頭筋)・下腿三頭筋(その中でも特にヒラメ筋)です。
全て身体の背中側にある筋肉で、これらは「主要姿勢筋」と呼ばれます。主要姿勢筋は抗重力筋の中でも特に重要な筋肉です。
抗重力筋はなぜ大切?
まず一番大切な役割は「姿勢の保持」です。抗重力筋が働かなければ、私達は歩くどころか、立つことも座ることもできません。また姿勢が良いことで、基礎代謝が高まります。血流など体内の循環も良くなり、脂肪も燃焼しやすくなります。さらに、姿勢が良いとバランスよく筋肉が発達するので、ボディーラインも綺麗に維持してくれます。
つまり逆に考えていくと、抗重力筋が衰えると、姿勢を正しく保てなくなり姿勢が悪くなります。不良姿勢を続けることで、余計なところに脂肪やたるみがついてスタイルも崩れやすく、また身体に負担がかかって慢性痛や関節の変形を引き起こしていきます。例えば、座り仕事や立ち仕事のように一定の姿勢を続けることも、抗重力筋の疲労や過緊張、萎縮につながり、抗重力筋のバランスが乱れます。
また不良姿勢により、代謝の低下、筋力の低下、バランス能力の低下、柔軟性の低下、持久力の低下が起こり、転びやすくなります。若い人なら多少転んでも大事には至りませんが、高齢の場合は転倒による骨折のリスクが非常に高いのです。また、治癒にも時間がかかりますし、長年の慢性痛に悩まされたり、たった一度の転倒で二度と歩けなくなってしまうケースも珍しくありません。
予測的姿勢制御
少し専門的な説明になりますが、抗重力筋の役割として、「予測的姿勢制御」というものがあります。より難しい言葉になりますが、「先行随伴性姿勢調節」(anticipatory postural adjustments:APA)とも言われます。
私たちはバンザイする時も、歩き始めに足を前に振り出しても、いきなりバランスを崩したり転倒する事はありませんよね?それは「予測的姿勢制御」が働いているからです。
「予測的姿勢制御」とは、私たちが何か意識的な動きを行う際に、あらかじめ予測して姿勢を崩さないように制御してくれる身体の働きのことです。
片側の腕を前方水平位に素早く動かした際の、筋肉の働きを調べた研究があります。動きは肩関節の屈曲なので、メインで働く筋肉は三角筋前部です。しかし筋肉の波形を見てみると、抗重力筋であるハムストリングスと脊柱起立筋群が、三角筋前部より先行して働いていることが分かりました。
つまり、抗重力筋がまず活動を起こして身体を安定させた後に、腕の筋肉が活動をしていることになります。
このように、日常生活の中で無意識のうちに「予測的姿勢制御」が働くからこそ、私たちは動作が行えているのです。姿勢を保持する抗重力筋は、何か動作を起こす際にも不可欠なのです。
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