伸びにくい「ハムストリング」を安全に伸ばすコツ|理学療法士に教わる"ヨガのための解剖学"

 伸びにくい「ハムストリング」を安全に伸ばすコツ|理学療法士に教わる"ヨガのための解剖学"
Nobuhiro Miyoshi (RELATION)

ヨガで体を痛めないためには、体の構造と機能を理解しておくことが大切。解剖学の観点から安全にアーサナを行う方法を、理学療法士でヨガインストラクターの中村尚人先生に教えていただきました。今回のテーマは、伸びにくい「ハムストリング」を安全に伸ばすコツ!

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腿前を鍛えて腿裏のケガを防ごう

大腿部で起こりやすいケガに、ハムストリングの肉離れがあります。原因はオーバーストレッチ。硬いハムストリングを伸ばそうと、手で引っ張ったり反動をつけたりすると瞬間的に強い力が加わり、肉離れが起こりやすくなります。

ハムストリングが伸びにくい理由

ところで、なぜハムストリングは伸びにくいのでしょうか。それは、体が倒れないように姿勢を保持するための筋肉だからです。洗面台で顔を洗うときに前屈ぎみになりますが、このとき、体が前へ倒れすぎないようにハムストリングが支えています。つまり、前傾姿勢ではブレーキをかける筋肉として働くので、前屈動作で腿の裏が伸びにくいのは当然なのです。

ハムストリングを安全・効果的に伸ばすコツ

ハムストリングを安全・効果的に伸ばすには、「強引に伸ばさないこと」、「拮抗筋である大腿四頭筋を縮める」ことがポイント。大腿四頭筋が収縮するとハムストリングは勝手にゆるむからです(相反神経支配)。

STEP1〜3はいずれも大腿四頭筋を鍛えてハムストリングをゆるめる練習です。膝を曲げてもいいので、太腿の前を使って後ろをゆるめる感覚をつかんでみましょう。

キーマッスル「大腿四頭筋」とは?

太腿の前後にある筋肉で、拮抗し合う関係。相反神経支配*により大腿四頭筋を収縮させるとハムストリングがゆるむ。

*相反神経支配:拮抗する筋肉は片方が収縮するともう一方が弛緩する

左:大腿四頭筋(前面)/右:ハムストリング(背面)
左:大腿四頭筋(前面)/右:ハムストリング(背面)/Illustration by Misako Nakagawa

ハムストリングを伸ばすポーズのキーマッスルを意識した練習法

「ウッティターハスタパーダングシュターサナ」の場合
上の脚の腿前に力を入れて腿裏をゆるませる。軸足の太腿に力を入れて床を蹴ると、脚が上がりやすくなる。STEP1~3で腿前を鍛えた後に挑戦しよう。

ウッティターハスタパーダングシュターサナ(足の親指をつかんで伸ばすポーズ)
ウッティターハスタパーダングシュターサナ/Photo by Nobuhiro Miyoshi (RELATION)

STEP1:アルダハラーサナで大腿四頭筋を使う練習

仰向けになり両膝を直角に曲げ、大腿四頭筋を使って両膝を天井に持ち上げる。曲げ伸ばしを10回繰り返す。

アルダハラーサナ
アルダハラーサナ/Photo by Nobuhiro Miyoshi (RELATION)
アルダハラーサナ
アルダハラーサナ/Photo by Nobuhiro Miyoshi (RELATION)

STEP2:スプタハスタパダングシュターサナでお腹〜腿前を強化

仰向けになり、顔にすねを近づける。腹筋と太腿に力を入れて腿裏をゆるませよう。手の力は極力小さくすること。

スプタハスタパダングシュターサナ
スプタハスタパダングシュターサナ/Photo by Nobuhiro Miyoshi (RELATION)

STEP3:ドゥイハスタパーダーサナで太腿を使う感覚を高める

腿前に強く力を入れて脚を持ち上げたら、腹筋を意識して前屈する。軸足で床を強く蹴ってバランスを保とう。

ドゥイハスタパーダーサナ
ドゥイハスタパーダーサナ/Photo by Nobuhiro Miyoshi (RELATION)

教えてくれたのは...中村尚人先生
理学療法士、ヨガインストラクター。UTLにて長年ヨガの解剖学の講師を担当。医療とボディーワークの融合、予防医学の確立を目指し活動中。「TAKT EIGHT」主宰。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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Photos by Nobuhiro Miyoshi (RELATION)
Illustration by Misako Nakagawa
Text by Yasuko Ito
yoga Journal日本版Vol.59掲載



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左:大腿四頭筋(前面)/右:ハムストリング(背面)
ウッティターハスタパーダングシュターサナ(足の親指をつかんで伸ばすポーズ)
アルダハラーサナ
アルダハラーサナ
スプタハスタパダングシュターサナ
ドゥイハスタパーダーサナ