筋膜リリースがもたらす劇的な変化|米・理学療法士が語る部位別筋膜リリースのやり方

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筋膜リリースがもたらす劇的な変化|米・理学療法士が語る部位別筋膜リリースのやり方

アメリカでも注目を集めている筋膜リリース。「ほんの数分行うだけで劇的な変化が現れます」と話すのは、アメリカでヨガと解剖学をヨガティーチャートレーニングで教えている理学療法士のアリエル・フォスター氏だ。どんな変化が起こるのか、そしてそれはなぜなのか、筋膜リリースについて徹底解説。また、柔軟性など体の動かし方にも効果をもたらす筋膜リリースの具体的なメソッドを紹介する。

筋膜リリースによる変化とは

理学療法士の体験談

筋膜に関心を持ち始めたのは2006年のことだ。ヨガクラスで肩の腱板を痛めた際に、理学療法士に筋膜リリースを施してもらったことがきっかけだった。手技で結合組織をやさしく押してもらったら30分もしないうちに症状が和らいだのだ。それで完治したわけではないが、たちまち何の痛みもなく肩を動かせるようになった。
肩が回復するとすぐに、自分でも筋膜リリースを練習し始めた。フォームローラーやボールなど道具を使って凝り固まった組織に適切に体重をかけることで、さらなる可動性を生み出すのだ。
私の大腿四頭筋は、毎日自転車に乗っているためにかちかちに硬くなっていた。だが、腿の前面にフォームローラーをあてて転がしてからヨガを行うと、ベカーサナ(カエルのポーズ)のように、膝を曲げてかかとを股関節に近づけるときに感じる膝の圧迫痛が軽減された。

筋膜リリースをすべき理由

筋膜のネットワークは、全身に張り巡らされた足場のようなものだ。筋膜は細胞同士を結び付けている細胞外基質の一部(細胞間のねばねばした物質)でもある。筋膜の英語表記「myofascial」の「myo」とは筋肉を指し「fascia」は筋肉とそれを取り囲む結合組織のネットワークを指す。この網目状の組織は、骨格筋を良好に保つことや固有受容覚(身体感覚や空間における体の位置を認識する感覚)と深く関わっており、体から脳に伝達される(痛みなどの)感覚シグナルにも影響を及ぼしている。
体の線維は、動作に応じて互いの間に滑り込むようにできている。だが、けがや自転車、ランニング、繰り返し行うヨガのポーズのような反復運動によって、組織の一部が厚くなると炎症を起こし、筋膜のネットワーク全体がその部分に向かって引っ張られることがある(柔らかい網と同じように、一カ所を引っ張ると網全体が引っ張られる)。その結果、筋肉を覆う筋膜鞘はその役目を果たしにくくなり、絞ったふきんのようにねじれて、動きの制限や緊張、ついには痛みを引き起こす。

筋膜リリースがもたらす影響とは

筋肉の緊張を広く司る神経システムに影響を与える

筋膜リリースでは、スポンジのように筋肉を押したり離したりしながら、組織同士の交差運動の滑りを改善し、水分を取り込んでいく。
筋膜リリースの研究はまだ黎明期にあるが、『International Journalof Sports Physical Therapy』(スポーツ理学療法の国際ジャーナル)にて2015年に発表された論文では、私が経験したことを裏付けていた。
14の科学誌に載ったその論文では、フォームローラーを用いた筋膜リリースによって、筋肉機能に悪影響を与えることなく短期間で可動性が高まることが述べられていた。ボールやフォームローラーに筋肉のさまざまな部位をあててゆっくりと転がしたり、体重をかけたり、揺らしながら、骨や筋肉、臓器、神経線維の間の筋膜に圧を加えると、他動ストレッチだけを行うよりも可動性を高めることができる。おそらく最も興味深い研究によると、筋膜リリースは筋肉の緊張を広く司る神経システムに影響を与えるという。筋膜のネットワークには知覚神経終末が多く存在するため、筋膜にやさしく圧を加えることで神経系のつながりが整い、その部分に緊張をため込む必要がなくなるのだ。

1日5分でもヨガの練習の質が格段に上がる

ほんの5分弱でも筋膜リリースを日課にすれば、ヨガ練習の質が格段に上がるだろう(マットを敷いて、ヨガ練習を始める前にやってみよう)。まずは足から行うといいだろう。体の中で最も酷使され、関節が摩損しやすい場所だからだ。足底筋膜は、足裏全体に扇形に広がる筋膜で、足を地面につくたびに衝撃を吸収して分散させる役目を果たしている。また、静止しているときでも体重を分散している。足底筋膜は、ふくらはぎをかかとに固定しているアキレス腱につながっていて、さらにそこからふくらはぎの筋肉の筋膜鞘、ハムストリング、臀部の線維、腰、頭蓋骨とつながっていく。そのため、足裏や脚の筋膜をケアすると一番離れた首の痛みまでも和らげることがあるというのは、決して大げさな話ではないのだ。
足裏と脚の筋膜リリースが終わったら、次は腰だ。一日のほとんどを座って過ごすために、ずっと圧迫され続けている場所だ。ここにやさしく圧を加えることで、圧縮された個所に血流が促されて血行が良くなり、筋肉の健康を取り戻すことができる。
紹介する足裏、脚、腰部、臀部のための下半身筋膜リリースエクササイズを実践して、筋膜を健やかに保とう。各エクササイズはヨガのポーズと一緒に行ってほしい。それぞれの筋膜リリースを実践することによって可動性が効率的かつ安全に高まり、ヨガの練習中だけでなく、マットの外でも動作が楽になるだろう。
筋膜リリースを行った後に、ヨガポーズでの可動性や安定感が高まったなら、その部分のリリースを日常的に行うとよいだろう。まずは試しにやってみよう。そして何が起きるか見てみよう。

筋膜リリースで用意するもの

ポールやフォームローラーを用意しよう。テニスボールが一番手軽だが、ラクロス、ラド・ローラーやYoga Tune Up ボールなどの筋膜リリース用ボールなどでも良い。

筋膜リリース テニスボール
テニスボール/Photo by pixabay
筋膜リリース フォームローラー
フォームローラー/Photo by pixabay

筋膜リリースのやり方(部位別)

足裏の筋膜リリース

筋膜リリース 足裏
足裏の筋膜リリース/Photo by Matt Nager

テニスボールサイズの硬いボールを右の足裏の中心に置く。ちょうどかかとの前あたりだ。痛みがなく、ゆったりと呼吸を続けられる程度にボールに体重をかけ、できるだけ動かずに呼吸を続けながら30秒ホールドする(左の写真)。これは持続的に圧迫を加えて、その部位だけを集中的にストレッチする方法だ。位置をずらして土踏まずのほかの場所でもやってみよう。ただし、かかとと拇指球は土踏まずよりも脂肪がついているので避けること(ほとんどの人はこれらの部分の可動性を高める必要はない)。次にボールを足裏の外側、かかとと小指の中間あたりに移動させて(右の写真)、ボールに体重をかけて30秒ホールドする。ボールのサイズや体重のかけ具合によって、かかとが床につく人とつかない人がいるだろう。ボールをそのまま横にずらして、1番目と2番目の長骨(中足骨)の間にあたるようにし、体重をかけて30秒ホールド。

ふくらはぎの筋膜リリース

筋膜リリース ふくらはぎ
ふくらはぎの筋膜リリース/Photo by Matt Nager

両脚を前に伸ばして座り、ダンダーサナ杖のポーズ)に入る。筋膜リリースを行った足裏と同じ側のふくらはぎの下、アキレス腱の3 ~5cm上あたりに、中サイズのボールを置く。このままでもいいし、左の足首を右の足首に重ねてもよい(さらに強く圧迫したい場合は、手で床を押しながら腰を床から少し浮かせる)。ゆったりとした呼吸を続けよう。つま先を真っすぐに伸ばしたら、次は足首を直角に曲げる動きをゆっくりと5 ~ 10回繰り返す。こうすることで、ボールをあてている部分の皮下の組織が滑るように動く。右脚を左右に倒して筋膜を揺らしてもいいだろう。15秒ほど行ったら、ボールをゆっくりとふくらはぎの真ん中にずらし、そのまま15秒かそれ以上ホールドし、さらに4、5カ所ずらして行う。さらに、ふくらはぎの内側の肉付きのいいところで縦方向に4、5カ所移動させながら、少なくとも15秒ずつ圧をかける。

臀部の筋膜リリース

筋膜リリース 臀部
臀部の筋膜リリース/Photo by Matt Nager

フォームローラー(好みでボールを使ってもよい)の上に座り、両膝を曲げて足裏を床につける。両手を40cmほど後ろについたら(カニ歩きの姿勢のように)、ボールかフォームローラーをお尻の一番厚みのある部分にあてる。体を右に傾け、お尻を前後にゆっくりと動かしながら少なくとも1分間続ける。骨盤をやや後ろに傾けて、僧帽筋の上部線維を腰に近づけ、さらに中部線維を仙骨のほうに下げるようにする。

前腿の筋膜リリース

筋膜リリース 前腿
前腿の筋膜リリース/photo by Matt Nager

四つん這いになり、フォームローラーを膝の前に置く。前腕を床につけ、腿をフォームローラーにのせて前腕プランクの姿勢になる。ゆっくりとほふく前進のように肘で前後に移動しながら、膝頭を避けて、前腿全体がローラーにあたるように1分間続ける。この動きによって大腿四頭筋の筋膜を整えることができる。強度を上げたい場合は、左の腿を上げて左の足首を右の足首に重ね、1分間ローリングを行う(腕が辛い場合は、脚を元に戻してさらに1分間行う)。

腰の筋膜リリース

筋膜リリース 腰
腰の筋膜リリース/photo by Matt Nager

左側を下にして横たわり、フォームローラー(またはボール)を腰の横にあてる。骨を避けて、肉付きのいい部分にあてること。そのまま1分間、わずかに体を揺らしながら、筋肉と筋膜のネットワークを感じよう。さらにローラーをあてる位置を横や縦にずらしながら、お尻と腰の外側で最も強い感覚のある部分を見つけよう。ただし、骨は避けること。

すねの筋膜リリース

筋膜リリース すね
すねの筋膜リリース/Photo by Matt Nager

四つん這いになり、指を大きく広げる。ブロックを使っていたら、脇によけておく。フォームローラーをすねの下に入れて、膝と足が床から浮くように位置を調節する。右のふくらはぎの中央に左のすねを重ねる。とても繊細な部分なので、痛みなどの強い感覚があったら押しすぎないようにしよう。体重をできるだけ両腕にかける。腕を使って、頸骨の外側(この部分は頸骨過労性骨膜炎を起こしやすい)をすねの上から下までローラーの上でゆっくり転がす。体幹を使って膝を手首に近づけたら、次は後ろに押して遠ざけるようにする。この動きを最低1分間繰り返す(腕や手首に違和感がある場合は、脚をほどくと、上半身にかかる体重が和らぐ)。

筋膜リリースのやり方(ヨガポーズ別)

ヨガのポーズも、筋膜リリースを行うことにより楽に行うことができるようになる。以下に、ヨガの代表的なポーズと筋膜リリースすべきポイントをまとめているのでぜひお試しを!

ダウンドッグに変化が起こる筋膜リリース

アルダベカーサナ(半分の蛙のポーズ)が楽になる筋膜リリース

アルダマッツェーンドラーサナ(半分の魚の王のポーズ)が楽になる筋膜リリース

ヴァジュラーサナ(正座)が楽になる筋膜リリース

監修・ライター/アリエル・フォスター
理学療法博士。ヨガと解剖学をヨガティーチャートレーニングで教えている。また、yogaanatomyacademy.comの創立者でもある。

story by Ariele Foster
photos by Matt Nager
model by Ariele Foster
hair&make-up by Beth Walker
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.60掲載

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