7人のヨガ賢者が語る「今、伝えたいヨガの精神」ヤスシ先生編

 7人のヨガ賢者が語る「今、伝えたいヨガの精神」ヤスシ先生編
yoga Journal online

長くヨガに親しみ、指導者としても活躍し続けるティーチャーたちにとって、ヨガとはどのような存在なのでしょうか? 伝えていきたいヨガの精神、そして人生にヨガがどのように影響しているのかをじっくり語っていただきました。7人のヨガ賢者の5人目は、ヤスシ先生です。

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♯CASE5「『あなたは、ここにいていい』とヨガで伝えたい

「ヨガが大人になってからの僕を育て、人生を教えてくれました」…そう語るヤスシ先生が、ヨガと共に30年近くを過ごしたのはニューヨーク。1987年、ダンス留学のために単身ニューヨークへ渡り、ヨガと出会ったのは1990年のこと。硬かった体の柔軟性を高めるため、ダンススクールのヨガ・プログラムを受けたのが始まりでした。

「その時にヨガを教えてくださった先生方が、とても素敵な大人たちだったんです。いわば、人生を自分自身で、パッチワークのように紡いできた人たち。ちょっとここはほつれているけれど、ここでいっぺん縫い直した、みたいにカラフルで、魅力的な生き方でした」

――当時は有名なダンスカンパニーで活躍したいとか、より多くの収入を得たいとか、キャリア志向が強かったというヤスシ先生。また、そういう履歴書に書くような内容でしか、人生の充実度や幸せは計れないと思っていたと言います。

「でもヨガの先生方を見ていて、ヨガの視点を通すと、もっと違う価値観を見いだせるようになるのかもしれないと思いました。30歳を目前にして自分を導いてくれるものを求めていた僕は、ずっとヨガのそばにいたい、いれば間違いないと感じたんです」

ヤスシ 国際ヨガの日
「自分の存在価値を繰り返し確認する作業がヨガです」/Photo by Shoko Matsuhashi

「学び始めた当初はレッスンに参加するたびに、自分より上手にポーズをとる人を見て、できない自分に落ち込みました。その頃の僕は、劣等感をいっぱい抱えていました。レッスンにも日常にも自分を否定する材料がたくさんあり、自分の存在価値を感じることが、とても難しかった」

――ターニングポイントになったのは?

「そのターニングポイントになったのはティーチャートレーニングでヨガ哲学に触れたこと。人は何かができるとか、何かを知っているから価値があるのではなくて、誰もが完璧な存在として生まれてきた宇宙からの贈り物。この世に誕生したことだけで素晴らしく、価値があるという教えでした」

「大げさかもしれないけれど、僕はそのことに気づかなかったら、生きていられなかったかもしれません。いろんな出来事や辛いことを、その都度悩んでいたらキリがないし、特に僕はたくさん劣等感を抱えていたので、やっぱり辛かったんですね。ヨガは僕が何かできるという証明はしてくれないけど、『生まれてきた以上、あなたはここにいていいんだ』ということを伝えてくれた。この、自分の存在価値をつかんでおくという大元があったから、一つひとつ悩んだり、摩擦を起こしたりせずに、生きてこられたと思うんです」

――心は存在価値をいったんつかんだとしても、見失いやすいもの。それを思い出し続けることがヨガの練習だと言います。

「今でも、自己嫌悪に陥りそうになります。だからヨガの練習をして毎日、自分の存在価値を思い出します。そうすることで自分を信じることができ、笑顔で過ごす時間が増えるんですよね。僕は生徒さんにいつも『あなた自身の存在価値を、あなたにわかってほしい』と願いながらレッスンをしています。多様であっていいんです。できない、違うといって自分の存在を否定せず、あきらめずに、寛容になること。自分だけでなく、人にも多様に存在するためのスペースを、許してほしいと思います」

インタビューに答えてくれたのは…ヤスシ先生
スタジオ・ヨギーのエクゼクティブ・ディレクター。約30年暮らしたニューヨークから、昨年帰国。ハートフルかつユーモアあふれるクラスは、日常生活とヨガをつなぐ解説と、繊細なアプローチに定評がある。

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Photo by Shoko Matsuhashi
Text by Minako Noguchi
yoga Journal日本版Vol.61掲載



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