褒められると嬉しいより苦しい。「次も期待に応えなきゃ」と感じる人の心理|臨床心理士が解説
多くの人は「褒められる=嬉しい体験、ご褒美」と考えるもの。子育てでも部下の育成でも「褒めること」は「もっと頑張ろう」と意欲を高める大事な要素とされています。でも、実は「褒められても素直に喜べない」「褒められるとプレッシャーに潰されそう」と感じる人も決して少なくないのです。これは、褒め言葉をきっかけに、相手の期待や今後の自分に対する責任まで感じてしまうことがあるから。今回は、なぜ褒められることが苦しさにつながるのか、どうすれば苦しさを軽減できるのかをお話しします。
褒められると苦しいのはなぜ?
「次も同じようにできなければ」と考えてしまう
褒められると苦しくなる人に見られるのが、「今回うまくできたことを、次回も続けなければならない」と考える傾向です。
私たちには「他者よりも優れている」「私は認められている」など、自分をポジティブに捉える「自尊感情」があります。2021年に発表された論文(※)によると、この自尊感情が「低い」人は、他者からの褒め言葉を「嬉しい」と感じにくい傾向が示されています。
例えば、仕事で作成した資料に対し、上司から「分かりやすい資料だね」「これからも期待しているよ」と褒められても、「これからも全力を尽くさないといけない」「期待に応えなければ失望される」などのプレッシャーを感じ、褒められた嬉しさをかき消してしまいます。
誉め言葉は誰にとっても良いものだと思われがちですが、自分で自分をポジティブに捉えられない人にとっては、「~せねば」や「~すべき」という思考が自分を縛る、苦しいものとなりえるのです。
「成果を出せる自分」にしか価値がないと感じる
褒められることが苦しい背景には、自分の価値を「成果」や「能力」と結びつけて考える傾向が関係している場合もあります。
・自分の「能力」が役に立ったから認められた
・「成果」を出せるほど頑張ったから褒めてもらえた
このように考えていると、褒められることで一時的には安心を得られるものの、その評価を失うことへの恐怖も生まれます。「『能力』を発揮できなければ役立たずだ」「『成果』を出せない自分に価値はない」と考え、自分で自分を追い込んでしまうからです。
本来であれば、人は「そばにいるだけで心地よい」「生きていてくれるだけで嬉しい」など、存在そのものに価値があります。しかし、「能力」や「成果」を価値だと感じると「何もしない/できない自分には価値がない」と感じ、ただ存在するだけでは不安になってしまうのです。
褒められて苦しいときの対応とは?
「事実」と「想像」を分ける
では、褒められることが苦しいとき、どうすればよいのでしょうか。
まずは、「(客観的)事実」と「想像」を分けて考えてみましょう。
例えば、「今日の仕事は丁寧だね」と褒められたときは、
【事実】「今回の仕事が丁寧だった」
【想像】「これからも絶対に失敗してはいけない」「今後も成果を出さないと見捨てられる」
という風に分けてみます。
「事実」は誰が見ても「その通りだ」と判断できる出来事、「想像」は自分の心のなかだけに浮かぶ考えや感情を指します。
ネガティブな「想像」に飲み込まれると、褒められても疑心暗鬼になったり、苦しくなったりします。「事実」にも目を向ける練習をしていきましょう。
褒め言葉をほどよく受け取る練習をしよう
褒め言葉を拒絶したり、苦しいのに無理にすべて受け取ろうとしたりすると、褒めてくれた相手との関係がぎくしゃくしてしまうかもしれません。
褒め言葉は他者からの言葉のプレゼント。強く拒絶すると「頑張って伝えたのに…」と相手を傷つけることにもなりかねません。褒め言葉を投げかけられたら「ありがとうございます」と伝え、少しだけ心のなかに置いてみましょう。心のなかに置いておくのが苦しいなら、紙に書いて引き出しに入れておくのでも良いです。
また、過剰だと感じる褒め言葉を「せっかく褒めてくれたのだから」と無理に受け取ろうとすると、自分の本心との差が開きすぎて、「私はそんな人間じゃない」と心のなかにモヤモヤが溜まります。褒め言葉は受け止められる範囲で受け止めればOK。
仮に「あなたは何でもできるね」と褒められたとき、本心では「何でもできる訳ではない」と感じたら、「何でもできる訳ではないけれど、少なくとも今回の仕事はできた」と、自分が抱えられるサイズに整えて、心のなかに置いておきましょう。
引用文献
※猪股由衣・茅野理恵(2021)自尊感情と教師からの「ほめ」に対する反応との関連 信州心理臨床紀要 第20号 pp27-50.
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