【未来へ手渡すプロダクト】耕作放棄された茶畑の実から、フェイシャルオイルへ。SAICHAのエシカルなものづくり〈前編〉

【未来へ手渡すプロダクト】耕作放棄された茶畑の実から、フェイシャルオイルへ。SAICHAのエシカルなものづくり〈前編〉
イラスト/藤原琴美
林ゆり
林ゆり
2026-10-18

私たちの日常を支えてくれるモノは、一体どこからやってきて、どこへ向かうのでしょうか。「未来へ手渡すプロダクト」では、廃材や不要資源から新たな価値を生み出すアップサイクルのものづくりや、持続可能な循環を大切にする生産者の想いを紹介します。一つひとつのプロダクトに込められた理念やストーリーを通して、“買う”を単なる消費ではなく、次世代へ未来をつなぐ“応援”へ——。そんな想いから生まれた連載プロジェクトです。

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生産者の高齢化や、生産コストと市場価格の採算が合わないことなどによる耕作放棄された茶畑が増えています。このまま放置すると、雑草が繁殖し、荒廃したり、森林化したりして、周辺の環境にも悪影響を及ぼすことになります。また、耕作が放棄されることにより、お茶の花が咲き、実がなります。そんなお茶の実に着目し、そのパワーを最大限に生かしたスキンケアブランドが「采茶~SAICHA」です。前編では、茶の実のみで作られる「SAICHA」ブランドの誕生のきっかけや、エシカルなものづくりについてうかがいました。

SAICHA

エシカルに舵をきったことで出会えた茶の実という国産原料

――多くの化粧品を取り扱う中で、新たに自社ブランド「SAICHA」を立ち上げることにしたのは、なにかきっかけがあったのでしょうか。

北川愛巳さん(以下 北川):37年にわたり化粧品業界でのものづくりの中で、使用成分へのこだわりや環境配慮だけでなく、社会貢献にもつながるコスメを追求することに舵をきりました。そこには、ニュージーランド発の「エティーク」というエシカルコスメブランドの取り扱いを始めたことによる基盤もありました。私たちは、輸入商社でもあるのですが、国産にこだわったサステナブルなものづくりができないかを模索しました。そんなときに出会ったのが、静岡の耕作放棄地で収穫されるお茶の実です。実は、茶の実オイルには、他の種子油に比べても、コエンザイムQ10が豊富に含まれていることがわかっています(原料メーカー調べ)。そんなお茶の実を活用したいと取り組んでいた人に出会えたことも大きかったと思います。

――お茶というと葉っぱを思いうかべますし、実の部分というのは、一般的にはあまり見かけませんよね。

北川:そうですよね。お茶は、葉の部分を収穫するため、花が咲いてしまうと、それは手入れが行き届いていない茶畑ということになります。耕作放棄された茶畑では、花が咲いて実がなります。つまり、お手入れされないから、実ができるということです。「SAICHA」に使っているお茶の実は、静岡で採られたものです。例えば、静岡県掛川の茶畑のものですが、斜面であるため南から太陽がよく当たり、寒暖差が大きい地域です。その厳しい自然環境でストレスを受けることで、ポリフェノールやオレイン酸、ビタミンEなどが、お茶の実には凝縮されています。植物が生き延びるための術として蓄えたものが、お茶の実に凝縮されています。その自然の力の恩恵を受けて出来上がったのが、「SAICHA」のオイルになります。

SACHA
今回お話をうかがった、株式会社ピー・エス・インターナショナルの北川愛巳さん。

――過酷な自然環境で育ったお茶の実ならではの自然の恵みですね。また、原材料だけでなく、エシカルなものづくりにもこだわっているそうですね。

北川:実は、お茶の実からオイルにするのが、すごく大変なんです。大きさもバラバラで、収穫・選別といった工程の一部は手作業で行っています。就労継続支援B型(B型就労施設)で、種を割って、中の実を出す作業をお願いしています。お茶の実は、ひとつずつ割って、その中の柔らかい実を取り出し、さらにその中の種からオイルを絞ります。B型就労施設では、障がいのレベルによって、毎日作業する人や、週1日の人もいます。みなさん、社会とつながっているということを喜びに感じて作業してくれています。また、活用されていなかったお茶の実は、お茶農家さんから、二番茶と同じ価格で買い取りをしています。それによって、お茶畑が継続していくことで循環が生まれればいいと考えています。

――ものづくりの過程で、さまざまな人との関りを持ちながら出来上がっているのですね。そして丁寧に取り出された種から、オイルが絞られるのですね。

北川:実は、お茶の実2つから1滴くらいしか絞れず、搾油率は約13%のみとなり(1kgのお茶の実から約130gのオイル)、丁寧に搾油して、みなさまにお届けしています。

――ということは、多くのお茶の実から出来上がる量は、かなり少なくなりますね。

北川:この「CHフェイシャルオイル20mL」のボトル1本に、約400粒のお茶の実のオイルが入っています。そのほかのものは、一切入っていません。最初は、なにか香りをプラスした方がいいのかなとも思いましたが、お茶の実が生き残るために持っているワイルドな香りも一緒に楽しんでもらおうと、なにも加えないことにしました。そのため、年によって香りや色が若干変わることもあります。そこは、ワインのように違いも楽しんでもらいたいです。

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――100%だからこその楽しみ方でもありますね。

北川:1番絞りのみを使って、香料なし。原点であり、最高です。この香りが好きと言ってくれる人もいますし、お肌に全力で寄り添ってくれますよ。使い方も自由で、洗顔後、最初にブースターのように使ってもいいですし、オイリースキンの場合は、ローションの後、オイルを使って、もう一度ローションを使うというのもおすすめです。夜は、最後にオイルを使うといいですが、忙しいときは、オイルひとつでもOKです。過酷な環境で、自分自身を守るための成分を蓄えたお茶の実の恵みをおすそ分けしてもらっているという気持ちで使ってもらえたらうれしいです。

耕作放棄された茶畑だから実がなり、今まで活用されていなかったお茶の実のポテンシャルの高さを生かした「SAICHA」。後編では、リブランディングした新たな展開についてお聞きします。

今回(vol.5)の「未来へ手渡すプロダクト」は…

「采茶~SAICHA「耕作放棄された茶畑で育った、ワイルドな茶の実オイル」

耕作が放棄されることによって実るというお茶の実。放置すると周囲の環境にも悪影響を及ぼすことから、新たな可能性を求めて開発されたフェイシャルオイルが「SAICHA」です。茶畑の土地と人、自然の循環をぎゅっと詰め込んだ肌に寄り添ってくれるオイルです。

采茶~SAICHA https://www.saicha.jp/

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イラスト/藤原琴美
撮影/長谷川梓

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