【整形外科医が教える】肩をいじめない暮らし方「相対安静」のすすめ

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「肩がうずいて眠れない」「肩が上がらない」……。その原因不明の肩の痛み、五十肩ではなく、けんばん断裂かもしれません。けんばん断裂を放置したら一生、肩が痛いままでいる可能性も。そうならないために気を付けたいことやセルフケアを『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)より内容を一部抜粋して紹介します。

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〈けんばん断裂とは〉肩関節を守る腱板筋群の先端にあり、上腕骨とつながっているところが「腱」。この腱が集まって板状になっているところが「腱板」。この腱板が加齢に伴い徐々に弱ってきて骨から剥がれ、穴があくのが「けんばん断裂」です。軽症なら「けんばん損傷」、重症になると「けんばん断裂」と区別する医師もいますが、この本ではまとめて「けんばん断裂」で統一します。

肩をいじめない暮らし方

少しずつ積み重なっていった負荷に耐えきれなくなり、けんばん断裂を起こした肩は、疲れ切って悲鳴を上げています。この章では、そんな肩をいたわる方法を紹介します。肩を大切にする習慣ですから、痛みのある方も、今はない方も、ぜひ心がけてください。

けんばん断裂では、断裂を拡大させないことが大切です。ですが、いつ断裂が始まったのかわからないのが、ほとんどのけんばん断裂というもの。断裂の拡大も少しずつ進むので、気づくことはできません。それでも、生活の中でけんばん断裂が進むような動きを避けることはできます。

痛む動きを避け、腱板に余計な負担をかけない

まずは、けんばん断裂の拡大を加速させやすい条件を挙げましょう。

  • 完全断裂であること(特に中断裂)
  • 腱板筋群(けんばんきんぐん)が痩せ細っていること
  • 利き手側であること
  • 重労働をしていること
  • 喫煙していること

これらの条件が重なると、断裂が進みやすくなります。はじめの2点は診断を受けなければわかりませんが、あとの3点は自分で気をつけることができます。つまり、利き手ばかりを使った重労働には要注意。タバコもよくありません。

ぜひ、肩に優しい習慣を身につけてください。それは、次のようなことです。

  • 体操を続ける
  • 肩をいじめる使い方をやめる
  • でも肩全体は錆びさせない
  • 禁煙する
  • 栄養管理をする

「どういうこと?」と、疑問に思う項目があるかもしれません。理由や具体的なやり方はこの章で少しずつ解説していきますが、これらのことが、断裂の拡大を防ぎ、痛みを減らし、長く使える肩にすることにつながります。

特に痛みが強い時期に、次の動作は厳禁です。けんばん断裂の悪化要因になるからです。

  • 勢いよく腕を振る
  • 痛む角度でオーバーヘッド動作(腕を肩より上げてする動き)を反復する
  • 痛みを我慢して、重い筋トレをする
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けんばん断裂は時間とともに断裂サイズが大きくなるケースが少なくないので、体操をするときにも負荷のコントロールが必要です(*1)(*2) 。それには、「痛みが出る動き」「あとで痛みが増す動き」を徹底して避けることです。

動かさないのではなく、肩をいじめる使い方をやめる

研究によれば、重労働をしていた人は、そうでない人に比べて、断裂の進み具合が7.7倍でした(*3)。利き手での重労働がけんばん断裂の拡大と関係するのですから、当然ながら、肩は安静にするのがいい、という考えに至るでしょう。それは正しいといえます。

ただし、やっていただきたいのは、腕をまったく動かさない「完全安静」ではありません。肩をいじめる使い方をやめる「相対安静(そうたいあんせい))」 です。「肩を使わない」のではなく、「断裂を悪化させやすい使い方をしない」ということです。

断裂を悪化させやすい使い方とは、具体的には「頭よりも高い位置での反復作業」「腕を体から離したままの荷物運び」「痛みを我慢して続ける家事や仕事」「勢いをつけた牽引や投げ動作」です。

けんばん断裂においておすすめしたい相対安静とは、次のようなことです。

  • 肘を体幹に近づけた動作
  • 利き手ばかりではない、両手の使用
  • 作業の小分け(重い物は分けるなど)
  • こまめな休憩

肩を毎日いじめるほど使わない、でも肩全体は錆びさせない。このさじ加減が大事であり、私のすすめる相対安静です。「家や仕事場などで、腕をどう使っているか」を意識して、適切な行動をとり、それを継続することが大事です(*4)。

ある男性は、高い所にある物を取ろうとすると痛みがあったり、力が抜けて落としたりしていました。それによって実際に困るだけではなく、気持ちも沈んでいたといいます。ですが私の指導を受けて、「肩に負荷がかかる動作」を意識して避けるようになりました。肩への負荷が軽くなるように工夫した結果、徐々に不具合が回復してきたという実感とともに、気持ちも上向きになったそうです。あなたの場合は、どうでしょう。無意識にやっている自分の動作を、ちょっと気にかけてみてください。
 

書影
『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)

この本の著者…歌島大輔(うたしま・だいすけ)

1981年生まれ。広島県出身(茨城県育ち)。山形大学医学部卒業。日本整形外科学会・日本専門医機構認定整形外科専門医。日本整形外科学会認定スポーツ医。NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。専門領域は、肩関節、肩関節鏡手術、スポーツ医学。フリーランス整形外科医として磨き上げ続ける知見とスキルを駆使して、複数の病院で日本全国から来院する肩痛患者の診療を行っている。とくに肩関節鏡手術数においては年間約350件と全国トップクラス。日々の診療・手術のかたわら、YouTubeやSNSでの健康情報発信やオンライン講座なども積極的に展開している。

【参考文献】
*1:Maman E. et al. Outcome of non-operative treatment of symptomatic rotator cuff tears monitored by magnetic resonance imaging. J Bone Joint Surg Am 2009.

*2:Safran O. et al. Natural history of non-operatively treated symptomatic rotator cuff tears in patients 60 years old or younger. Am J Sports Med.2011.

*3:Ko SH, et al. 2023. Risk factors of tear progression in symptomatic small to medium-sized full-thickness rotator cuff tear: relationship between occupation ratio of supraspinatus and work level. J Shoulder Elbow Surg 32: 565-572.

*4:Krischak GD, et al. 2013. A prospective randomized controlled trial comparing occupational therapy with home-based exercises in conservative treatment of rotator cuff tears. J Shoulder Elbow Surg 22: 1173-1179.

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