老化は44歳で急速に進む!?40代のアノマリーと更年期の向き合い方【産婦人科医×ヨガインストラクター対談】

老化は44歳で急速に進む!?40代のアノマリーと更年期の向き合い方【産婦人科医×ヨガインストラクター対談】
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明確な理由はわかっていないけれど、統計や調査などで表れる偏り「アノマリー」。40代半ばに差し掛かる頃、女性の多くはこれまで味わったことのない体調やメンタルの“ゆらぎ(偏り)”を経験します。そのとき心身にどんな変化が起こり、40代のアノマリーを上手に乗りこなす方法はあるのでしょうか。「レディースクリニックなみなみ」の院長・叶谷愛弓先生と、クリニック併設の女性専用ヨガ・ピラティス「Studio KAJi」のディレクター・渋木さやかさんに、医療とセルフケアの両面から心身を労わるヒントを語っていただきました。

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老化は44歳と60歳で急速に進む!?女性の身体に起きる変化とは

―――スタンフォード大学の研究(※1)によると、老化は44歳と60歳で急速に進むことがわかっているそうです。女性の場合、最初のカーブである44歳で何が起こっているのでしょうか。

叶谷愛弓先生(以下、叶谷) 40代後半から50代前半の女性に起きる何らかの不調は、更年期が一つの鍵になります。したがって更年期の一歩手前である44歳も、女性ホルモンのエストロゲン分泌の低下が少なからず関係してくると思います。「更年期」という言葉が広く知られるようになり、40代になって体調の相談にクリニックを訪れる方は増えていますよ。

渋木さやかさん(以下、渋木) クリニックを受診する方はどのような症状を抱えていますか?

対談

叶谷 メンタル不調を訴える方が多く、精神的な落ち込みからくる疲れやすさ、倦怠感、不眠の悩みをよく耳にします。最初から心療内科に行くのに抵抗がある方は、まず婦人科を受診してみるといいと思います。女性ホルモン以外のところに不調の原因が隠れている場合があるので、診察や検査をしたうえでより専門的な治療が必要であれば婦人科以外の診療科をご案内しています。

渋木 私は44歳のときに明らかな体の変化を感じ、藁をもつかむ気持ちで婦人科を受診しホルモン値を調べる検査をしました。その時点で更年期と断定できる数値ではなかったですがホルモン値の低下を確認でき、体の変化が数値化されたことで、やっぱりねと納得できた自分がいました。受診する側からすると、はっきりとした不調の理由を知りたいと思ってしまいます。

 叶谷 不調の原因を知りたいという気持ちはすごくわかりますが、はっきりしないことも多くあります。心の不調が体に現れたり、仕事の忙しさやストレスが関係していたり、様々な要素が重なっている場合が少なくありません。

 渋木 不調の原因が特定できないこともあるのでしょうか?

叶谷 たとえば、ホルモン値には現れない女性ホルモンのアップダウンによる不調など、説明が難しい場合もあります。そういうときは、運動習慣の有無などを尋ねて生活習慣の見直しをアドバイスするなど、解決するというより上手く対処する方法を一緒に見つけていく対応を心がけています。

渋木 曖昧が苦手でカテゴライズしたくなるのは、日本人特有の気質かもしれませんね。ヨガをしていても「流派は?どこでティーチャートレーニングを受けたの?」と聞かれることが多く、立ち位置をはっきりさせたくなりがち。カテゴライズできない不調にも親身に寄り添ってくれる医師がいるとわかれば救われます。

叶谷 AIに健康相談をする人が増えているなかで、患者さんはわざわざクリニックを受診してくれるわけです。「同じような悩みを抱えている人は、あなただけじゃないですよ」と伝えられるのは、多くの患者さんを診てきた産婦人科医だからできることであり、それが医師の役割だとも思っています。「今日だけでも同様の症状を訴える患者さんがいましたよ」と伝えると、「私だけじゃないんだ」と心が軽くなっていく方もいます。 

対談

―――では、40代女性にヨガはどう役立つと思いますか?

渋木 ヨガは心身の健康を促進する予防医学として注目されていますが、体と心の変わり目に差し掛かる40代は、自分の取扱説明書をつくり直すことが重要ですよね。心と体に意識を向けるヨガの実践によって小さな変化を感じ取りやすくなったり、逆に悩みにフォーカスしすぎない意識の使い方などを身に付けることができたり、役立つことは多いと感じます。 

叶谷 そうですね。これさえやれば良くなるという方法を求めて病院を受診する方は多いですし、みなさん忙しいので早く解決したい気持ちはすごくわかります。でも40代、50代の不調は、この薬を飲めば治るという風邪のような単純なものではありません。その場合、生活に寄り添い自分自身をケアするヨガが、不調と上手く付き合う選択肢の一つになると思います。

「40代後半」が人生で最も幸福度が低い!?40代女性が抱える苦悩

―――世界145カ国を対象とした研究によれば、幸福度が最も低くなる年齢は平均48.3歳というデータ(※2) もありますよね。40代、特に後半に入ると、更年期によるホルモンバランスの問題のほかにも、仕事のステージや交友関係などが変化しやすく、生き方の差も顕著になりやすい年代という声も聞かれます。他者比較をしすぎて心がしんどくなってしまう時期なのでしょうか? 

渋木 たしかに比べてしまいやすい時期なのかもしれませんね。私は若いときほど他者と自分を比較し、落ち込んでしまうことがありました。周りと比べて結婚が遅かったので、子どもがいる友人に子育ての話をされても話が合わないばかりか、つまはじきにされているような孤独感を覚えていたんです。やっと結婚して子どもが生まれ、しがらみから解放されると思ったら、今度は友人の子どもと我が子を比べてしまって。どの年代でも、比べてしまう悩みは変わらずにあるのかもしれません。私自身は、年齢が上がるにつれてだんだんと人と比べることが減って楽になったと感じています。心の持ち方や視点を変える方法を、ヨガで学んでいたからかもしれません。 

叶谷 ヨガの実践によって、そうした他者比較や心の持ち方にどんな変化があったのですか?  

渋木 悩み自体をなくすことは難しいとしても悩みを俯瞰できたり、距離を取ったりできるようになったと感じます。更年期に関しても不調イコール自分と思うと抜け出せなくなるけど、同一化しないように距離を取り、引っ張られても戻ってくる練習をさせてもらっている気がします。 

対談

知っておきたい医療とヨガで自分を守る方法

―――ゆらぎやすい40代を上手に乗り越えるために知っておきたい医療的サポートと、ヨガ的セルフケア法を教えてください。また変化する自分としなやかに付き合うためのマインドリセット法はありますか?

叶谷 医療的サポートには、不調に合った漢方薬やホルモン補充療法などがあります。ホルモン補充療法をしたら劇的に症状が改善した方もいらっしゃいますよ。 

渋木 私がおすすめするのは、自律神経のバランスを整える「片鼻呼吸法」。またモヤモヤをため込まないためには、頭に浮かんだことをありのまま紙に書き出す「ジャーナリング」で気持ちを言語化すると整理できますよ。家族に話しても理解してもらえない、友達に何度も相談するのは気が引けるという人は試してみて。 

叶谷 友達に相談できず悩むくらいなら、信頼できる婦人科医に相談するのがいいかもしれません。マインドリセット法は、「適当になる」ことでしょうか。乗り越えようと思いすぎたり、不調を完璧に治そうとするより、つらいと感じるレベルが10から4くらいになればいいと思って上手く付き合っていくくらいの心持ちでいられると楽ですよ。それができると薬を飲んで不調が0にならなくても、落胆しないしドクターショッピング(不調の原因を求めていくつもの病院を転々とすること) もしなくなると思います。 

渋木 すごくいいですね。更年期はネガティブなイメージがあるけど、私は今までは気合と根性で乗り越えてきたやり方を変えてみましょうという、神様からのお知らせを受け取る時期と捉えています。そして20代、30代は足りないものを増やしていく足し算の生活でしたが、これからは人間関係も仕事もマインドも、シンプルに軽くするための引き算の生活になっていくと思います。自分の好きなものや本当に必要とされていることに熱量を注いでいきたいです。 

―――最後に心身の変化を感じ始めている40代女性にメッセージをお願いします。 

叶谷 更年期の症状はその方の性格が多分に影響していると感じます。真面目な方ほど不調を完全になくそうと解決策を求めがちですが、更年期の不調は完璧すぎても良くなるものではないので、答えを求めすぎないように意識してみてください。 

渋木 私は理想の自分像と現実の自分を比べてジャッジしないで、と伝えたいです。できないから悪いのではなく、「できなかった」で思考を止められるようになるのも自分を楽にするテクニックの一つ。友達に優しくできなかった私はダメな人ではなく、「優しくできなかった、次は気をつけよう」と切り替えて思考を深堀りする癖を手放してみてください。

※1 :Nature Aging誌掲載「Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging」 Stanford University, 2024 
※2 :David G. Blanchflower “Is Happiness U-shaped Everywhere?” NBER Working Paper / Journal of Population Economics, 2021 

更年期のゆらぎを鎮める「片鼻呼吸法」

「片鼻呼吸法」は左右の鼻を交互におさえて行います。右鼻が交感神経、左鼻が副交感神経に働きかけると言われており、この呼吸法を繰り返すことで自律神経のバランスを整える効果が期待できます。 

〈やり方〉

1. 右手の人差し指と中指(ピースフィンガー)は使わず、薬指を左の小鼻、親指を右の小鼻に添える。

2. まず右の小鼻を親指で閉じ、左鼻から息を吸う。次に両鼻を一度閉じたら、親指を離し右鼻から吐く。

3. そのまま右鼻から吸い、両鼻を一度閉じる。次に薬指を離し左鼻から吐く。

対談

4. 「左から吸う → 右から吐く → 右から吸う → 左から吐く」を1セットとして、心地よいペースで繰り返す。 
※最後は左鼻から吐いて終了。呼吸を無理に長くしようとせず、ゆったりと自然なリズムで行いましょう。3セットから始めて、慣れてきたら回数を増やして。 

今回お話いただいたのは…

対談

産婦人科医・叶谷愛弓(写真右)
レディースクリニックなみなみ院長。産婦人科医師、医学博士。東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経て「レディースクリニックなみなみ」院長に就任。女性ホルモンの変化がもたらす体調・人生の波に寄り添い、サポートするクリニックを目指している。

対談
色・香り・音にこだわった、やさしい印象の内装(写真左)。クリニックの隣には、女性専用ヨガ・ピラティススタジオ「Studio KAJi」を併設(写真右)。
レディースクリニックなみなみ
https://naminamicl.jp/

ヨガインストラクター・渋木さやか(写真左)
ヨガインストラクター、「Studio KAJi」ディレクター。一児の母。インドの伝統的なシヴァーナンダヨガを軸に、呼吸・体・心・暮らしを統合した指導を行う。更年期・マタニティ・産後など、女性のライフステージに寄り添うヨガに定評があり、Fuji Rock Festivalなど大型フェス・ヨガイベントでもメイン講師を務める。

対談
大きな窓から差し込むやわらかな自然光と「波」に包まれるような、心地よく開放的な女性専用ヨガ・ピラティススタジオ
Studio KAJi
https://www.kaji-yoga.jp/

 

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取材・文/北林あい
撮影/長谷川梓

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