更年期以降の頭皮ケア、間違えてない?皮膚科専門医が教える「閉経後の薄毛、抜け毛ケア」

更年期以降の頭皮ケア、間違えてない?皮膚科専門医が教える「閉経後の薄毛、抜け毛ケア」
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増田美加
増田美加
2026-10-03

更年期を過ぎると薄毛や抜け毛を心配する女性の声が増えてきます。閉経後増える女性の薄毛、抜け毛のケア方法を意外と間違えている人が多いといいます。原因を知れば、正しいセルフケアがわかります。長年、女性の薄毛治療をしている皮膚科専門医を取材しました。

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女性ホルモンのゆらぎが原因?

「女性の薄毛に悩む方は、45歳前後から始まる更年期以降に大きく増え、年齢を重ねるにつれてさらに多くなる傾向があります。

クリニックを受診される女性も50歳を過ぎると一段と増え、最も多いのは50代半ばから60代の方々です。なかでも、もともと髪の量が多かった方ほど、急に抜け毛が増えたり髪が細くなったりする変化に戸惑い、髪型がまとまらなくなったことに大きなショックを受けて来院されるケースが少なくありません」と堀内祐紀先生。

更年期以降に、薄毛や抜け毛が増える原因はどこあるのでしょうか?

「原因はひとつではありませんが、おもな要因は女性ホルモンのバランスの変化です。その影響で、うねりやパサつきが出るなど髪質が変わり、髪の太さやハリ・コシが失われて、全体のボリュームが少なくなっていきます。さらに、食生活の偏りや睡眠不足といった生活習慣の乱れが重なると、こうした変化がより進みやすくなります」(堀内先生)

更年期以降は、女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで、ヘアサイクル(毛周期)に変化が生じます。

髪の毛は1本1本に寿命があり、「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルを経て、おおよそ2〜6年で自然に抜け落ち、同じ毛穴から新しい髪が生えてきます。こうして髪は毎日少しずつ生え替わっており、1日に50〜100本程度抜けるのは正常な範囲です。

毛周期
イラスト/Adobe Stock

頭髪の約9割は成長期にあり、エストロゲンにはこの成長期を長く保つ働きがあると考えられています。しかし、エストロゲンの分泌は40代半ばごろから、ゆらぎながら低下していきます。

その結果、成長期が短くなり、髪が十分に太く育たないまま、細く柔らかい状態で抜け落ちてしまうことが増えるのが更年期です。また、年齢を重ねると、髪が抜けてから次の髪が生えてくるまでの期間も長くなる傾向があります。そのため、抜け毛の本数がそれほど増えていないように感じても、新しく生えてくる髪が少なくなったり、生えても細く弱い髪になったりします。

こうした変化が重なることで全体のボリュームが減り、特に分け目や頭頂部が目立って、髪の量が減ったと感じやすくなるのです。

エストロゲンの減少だけでない薄毛の原因

「更年期になると、エストロゲンの分泌が減少します。その影響で、ある程度抜け毛が増えるのは自然な変化です。しかし、なかには目に見えて髪のボリュームが減る方もいます。その代表的なものが“女性型脱毛症(FAGAと呼ばれることもあります)”です。 

男性型脱毛症(AGA)では、額の生え際の後退や頭頂部の薄毛が見られます。一方、女性型脱毛症では、生え際は比較的保たれたまま、頭頂部を中心に全体的に髪が薄くなっていくのが特徴です。男性のように完全に地肌が見えるほど抜けてしまうことは、あまりありません」(堀内先生)

女性型脱毛症の主な特徴は、次のとおりです。

頭頂部の広い範囲が薄くなる

分け目が目立つ

つむじ周辺の地肌が透けて見える

また、薄毛の原因は女性ホルモンの変化だけではありません。遺伝的な体質に加え、

  • 過度なダイエットによる栄養不足
  • 強いストレスや精神的なショック
  • 喫煙や生活習慣の乱れ
  • 頭皮の血行不良
  • 紫外線による頭皮へのダメージ

など、さまざまな要因がかかわっています。

「実際には、原因はひとつではなく、いくつかが重なっていることがほとんどです。さらに、病気が関係している場合もあります」(堀内先生)

例えば、次のようなものです。

  • 円形脱毛症
  • 甲状腺の病気
  • 鉄不足(鉄欠乏性貧血など)
  • 男性ホルモンが増える卵巣の病気(多嚢胞性卵巣症候群など)
  • 膠原病(全身性エリテマトーデスなど)
  • 頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎など)
  • 感染症や、新型コロナウイルス感染症の後に起こる脱毛
  • 薬の影響(抗がん剤など)

「そのため、年齢のせいと自己判断せず、何が原因なのかをきちんと見極めることが大切です。クリニックでは、問診や診察、必要に応じて血液検査などを行い、その方に合った治療法を一緒に考えていきます」(堀内先生)

意外と知らない、正しいシャンプーと乾かし方

「髪のケアの基本は、正しいシャンプーです。実は、洗い方や乾かし方を正しく身につけている方は意外と少ないものです。基本のポイントを確認して、普段のケアに取り入れてみてください」(堀内先生)

シャンプーは、髪よりも頭皮を洗うものと考えましょう。頻度は1日1回、ニオイや皮脂が気にならなければ2日に1回でも十分です。毎日洗っても、それが原因で抜け毛が増えることはありません。ただし、爪を立ててゴシゴシこするなど、頭皮に刺激を与える洗い方は避け、指の腹でやさしく洗いましょう。
シャンプーは、洗浄成分などが刺激になりにくく、自分の頭皮に合ったものを選びます。

大切なのは、シャンプーやトリートメントが頭皮に残らないよう、お湯でしっかりすすぐことです。髪の表面だけでなく、頭皮までお湯が行き渡るように意識しましょう。なお、トリートメントの種類は抜け毛や薄毛にはあまり関係しないので、それほど気にしなくて大丈夫です。

シャンプー
photo/Adobe Stock

お風呂から出たら、すぐに乾かし始めましょう。濡れたままにしておくと、頭皮で雑菌が繁殖しやすくなるためです。髪ではなく、頭皮を乾かすイメージで行います。ドライヤーは頭から20cmほど離し、乾きにくい根元から風を当てます。頭皮の傷みや乾燥を防ぐため、温風が同じ場所に当たり続けないよう、ドライヤーを小刻みに動かしましょう。根元から毛先に向かって指を通しながら乾かすと、髪の絡まりや切れ毛を防ぐことができます。

食事と生活習慣を見直すことが大切

抜け毛を減らすためには、食事・睡眠・運動といった基本的な生活習慣を整えることが、想像以上に重要です。なかでも食事は、髪の健康に直結します。

「髪の毛の大部分は、ケラチンというタンパク質でできています。そのため、動物性・植物性を問わず、良質なタンパク質をバランスよく摂ることが大切です。さらに、鉄、亜鉛、銅などのミネラルや、ビタミンB群、ビタミンA・C・Eなども、髪の成長を支える栄養素です。

ただし、特別な食品を取り入れるよりも、栄養不足にならないことが基本です。“海藻が髪に良い”といった話もありますが、特定の食品だけで髪が増えるわけではありません。また、ビタミンAやEなどは、サプリメントで摂りすぎるとかえって抜け毛の原因になることもあります。情報に惑わされず、タンパク質をしっかり摂り、栄養バランスの整った食事を心がけましょう」(堀内先生)

また、無理なダイエットは抜け毛の原因になるため、注意が必要です。

「日本女性は、月経のある年代を中心に鉄が不足しがちな方が多く、過度な食事制限によって貧血が進むと、抜け毛が増えることがあります。髪は体にとって生命維持の優先度が高い組織ではないため、栄養が不足すると、まず髪の成長に影響が出やすいのです。

鉄不足と抜け毛の関連は以前から指摘されており、体内の鉄の貯蔵量を示すフェリチン値が低い方は、抜け毛が増える傾向があるともいわれています。極端なダイエットによるタンパク質不足も、数か月後に一時的に抜け毛が増える”休止期脱毛”を引き起こす原因になります。

そのため、薄毛の治療では外用薬などを使うだけでなく、血液検査で栄養状態を確認し、食生活を見直すことも大切にしています」(堀内先生)

体を動かすことも、髪の健康につながる

食事と並んで大切なのが、適度な運動です。髪が育つには、十分な血流が欠かせません。髪をつくる毛包は細胞分裂が非常に活発な組織で、酸素や栄養が行き届かないと、成長期を保ちにくくなると考えられています。

「頭皮マッサージやヘッドスパには、一時的に頭皮の血流を良くしたり、リラックスできたりする効果があることが報告されています。ただ、髪が生えてくることを直接促すという明確な医学的根拠は、現時点では十分とはいえません」(堀内先生)

一方、ウォーキングなどの有酸素運動を続けると、全身の血流が良くなり、血管の働きも改善することがわかっています。ヨガやピラティスなどの適度な運動も、心身をリラックスさせ、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。

「適度な運動を習慣にすることで、ストレスによるホルモンの過剰な反応が穏やかになるともいわれています。こうした全身の変化が、ヘアサイクルを整える環境づくりにつながると考えられます。

頭皮だけを刺激するよりも、体全体の血流と代謝を整えるほうが、長い目で見ると髪のためになります。無理のない運動を続けることをおすすめします。ラジオ体操のような軽い運動からでもかまいません。

髪の悩みは、頭皮だけの問題ではありません。体全体のコンディションを整えることが、結果として髪の健康を支える近道になります」(堀内先生)

お話を伺ったのは・・・堀内祐紀(ほりうちゆうき)先生

秋葉原スキンクリニック院長。東京女子医科大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学皮膚科学教室入局。JR東京総合病院、埼玉協同病院勤務を経て、2007年、秋葉原スキンクリニック開設。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本医学脱毛学会理事、Aesthetic Medical Academy理事、美容皮膚エキスパートナース育成協会理事、日本メソセラピー研究会理事、Allergan Medical Institute Japan Faculty。

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