〈東京→岩手 移住〉大好きなCAを辞めて岩手移住。選択は正しかった? #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市から地方へ完全移住をする人々が増加傾向にあるのはご存知でしょうか。自然豊かな環境でのびのびと生活ができる、住宅費などの物価の安さ、あるいは子育てのメリットなども魅力の地方移住。一方で、実際に移住した人たちのリアルな本音はどうなのでしょうか。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ人」から、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる移住者たちの「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、2024年4月に、東京から夫の地元である岩手に移住をした、ゆきさん。結婚がきっかけだったと言いますが、当初は新卒から就いていたCAの仕事を続けるために、東京と岩手の二拠点生活を考えていたんだそう。「なりたくてなった仕事だったので、辞めることに葛藤はありました」と話すゆきさんが、大好きだった仕事を退職し、岩手移住を選択した理由は何だったのでしょうか。また、その選択の結果について今、どう考えているのか。ゆきさんの #暮らしの選択肢に迫ります。
〈移住者プロフィール〉ゆき
2024年に夫の地元、岩手県盛岡市へ移住。
現在は、インスタグラムにて、岩手の魅力を発信する「ユキの暮らし✈︎元CAのいわて移住日記」を運営。
Instagram: @iwate_no_kurashi
これらの人生をどのように生きていきたいか
雄大な岩手山を背景に北上川などの清流が流れ、歴史ある城下町の街並みとレトロな近代建築が調和する、歩いて楽しい街、岩手県盛岡市。米国のニューヨーク・タイムズ紙で「2023年に行くべき52カ所」にも選ばれ、国内外から注目を集めている。そんな岩手に2024年に移住したのが、ゆきさん。元CAで、23ヶ国83都市を飛び回った経験もある。そんな彼女は現在はインスタグラムで「ユキの暮らし✈︎元CAのいわて移住日記」を運営し、岩手の魅力的なスポットの情報を発信している。
ゆきさんが岩手に移住したのは、岩手出身の夫との結婚がきっかけだった。夫とはゆきさんの地元、愛知の大学で知り合い、卒業後は、二人とも東京で就職。それからしばらくして、彼はUターンをすることになった。ゆきさんはCAをしながら東京で暮らしていたため、しばらく遠距離で交際を進め、結婚することになったのが2024年。実は、当初はゆきさんは結婚してからもCAを続けて、東京と岩手の二拠点を考えていたそう。
「CAを辞めることに葛藤はありました。なりたくてなった職業でしたし、とても楽しんでいたので。それに、遠距離をしていた時に岩手に遊びにいくことはありましたが、遊びに行くのと住むのとでは、違うと思うんです。そのため、岩手に移住することに、迷いはありました」
雪国ならでは暮らしや、地方でのご近所付き合いなど、不安をあげればキリがなかった。それでも、最終的に岩手への移住を決断したのは、結婚をして家族を持つという自分の第二の人生を考えたとき、岩手という場所がベストな選択肢だと思ったから。
CAとして勤務していた頃は目まぐるしい毎日を送っていた、ゆきさん。仕事はとても充実していたものの、職業柄、生活リズムは昼夜逆転していた。今振り返ってみると、「どこか心のゆとりがなかった」とも感じるという。
一方で、CA時代、彼が暮らす岩手に遊びに行くと、不思議と心が洗われた。豊かな自然に囲まれて過ごすうちに、日常の中にあるちょっとした発見や、ささやかな幸せにも気づけるようになった。それが、ゆきさんにとって岩手に惹かれ、移住を決意した理由だった。
「自然と気持ちが穏やかになれる環境が、とても心地良かったです。結婚したら、のんびりとした時間を過ごしたいと思いました」
大学を卒業してから精一杯働いてきたからこそ、これからは家族でのんびりと暮らしていく。そんな第二の人生を歩む場所として、岩手は最高の環境なのだと気づいたのだ。
そして、2024年4月、ゆきさんの岩手への移住生活がはじまった。
岩手に移住してから、心身の調子が整った
ゆきさんが暮らすのは、岩手県盛岡市。ゆきさんは、岩手のことを「ちょうどいい街」と話す。大都会のように、満員電車もなければ、ビル風やヒートアイランド現象の一因となるような高いビルもない。一方で、生活に必要な店や病院は揃っている。また、盛岡市には、東京駅を設計した辰野金吾らが手がけた『岩手銀行赤レンガ館』や、江戸時代からの伝統的な町家が残る『商家『茣蓙九』』、明治・大正期のレトロな洋風建築、美しい日本庭園などの歴史的建造物が数多く残っているのも魅力。まさに新旧が入り混じった街だ。また、少し足を運べば、田んぼや川など豊かな自然も身近に広がっている。加えて、岩手県民にとって重要な存在とも言えるのが、どこにいても目に飛び込んでくるほどの雄大な山、岩手山だ。
「岩手県民の会話には、必ずと言って良いほど岩手山の話が出てきます。「今日は綺麗に見えるね」とか「もう雪化粧だね」なんて、山の変化を言葉にするんです。毎日その姿を見上げることで自然と心を整えたり、穏やかな気持ちを取り戻したりされているのではないかと思っています。だからなのか、岩手の人は穏やかな方が多いです。移住前に不安だったご近所付き合いも、楽しくできています」
そんな周囲の人々の影響もあってか、気づくと、ゆきさんも岩手山を眺めることが日課になっていった。名古屋や東京で慌ただしく過ごしていた頃は、どうしても心のゆとりが持てず、身近にある自然の移ろいに目を向ける余裕もなかった。一方で、岩手に移住してからは、ふとした瞬間に広がる綺麗な景色に心動かされたり、小さな発見に出会うことで、自然と気持ちが洗われるような気がするという。そんな穏やかな時間の流れを毎日実感しながら過ごせるのは、本当に幸せなことだと感じる。
そんな大自然に囲まれた街での生活だから、結婚当初に思い描いたゆっくりした時間を過ごすことができている。都心は、夜でも明るく、24時間エンタメに溢れている。そのため、忙しくなってしまうことも、自然なことだ。元CAのゆきさんも、休みの日でも遅くまで遊びに出かけていたそう。
「岩手に移住してからは、早寝早起きができるようになりました。太陽の光で目覚めるとか、朝の自然の音で目覚めるという生活が送れるようになりました。だから、自然と体調が整って、健康になった気がします」
自然のリズムに沿って生きるとこんなに調子が整うものなのだ、と実感したゆきさん。結婚当初に考えた「第二の人生をどのように生きていきたいか」の答えが、きちんと具現化できているようだ。
岩手に来て、戸惑ったこと
そんな穏やかな生活を送る一方で、岩手に移住してから、戸惑ったこともあるそう。
その一つが、冬が降る日の運転。ゆきさんは元々運転が好きで、地元の愛知ではよくドライブを楽しんでいたそう。また、岩手は都心に比べて道が広く、運転もしやすい。ただやはり、雪の降った日には、移住して2年経った今でも不安がある。道路が凍ってしまうため、特にひとりで運転する時は怖さがある、というのだ。
「予想はしていましたが、普通に運転するのと雪道で運転するのは違いますね。けれど、ここで生きていく上では、雪の中での運転は必須。まだ不安はありますが、慣れていかないといけないと思っています」
雪道での運転に加えてゆきさんが戸惑ったのは、それまで暮らしてきた地域とは異なる、岩手ならではの言葉やイントネーションだった。特に高齢者との会話は、耳慣れない訛りや方言に、言葉をすぐには聞き取れないこともあり、夫に通訳をしてもらうこともあるんだとか。ただ、戸惑ったのは「聞き取れない言葉」だけではない。聞き慣れた言葉が、自分の知っているものとは違う意味で使われることにも驚いた。例えば、岩手県民がよく使う「だからさ」という言葉。ゆきさんがこれまで暮らしてきた関東や名古屋では、「〇〇だからさ」のように理由を示す言葉として耳にすることが多かったが、岩手では、相手の意見に対して「そうだよね」「その通り」と強く同意や共感を示す相槌の意味として用いられそう。
「最初は、それを聞いた時は、反論されてるんじゃないかなって思って、戸惑いました」と笑って話す、ゆきさん。今でも、耳慣れない言葉や独特の言い回しに戸惑うことはあるというが、そんな文化の違いも含めて、地元の人たちの優しくおおらかな人柄に助けられているそうだ。
移住者だからこそ気づける岩手の魅力を伝えたい
岩手に移住してから、ゆきさんがはじめたのが、インスタグラムで岩手の魅力を発信する「ユキの暮らし✈︎元CAのいわて移住日記」だ。
「岩手には魅力がたくさんありますが、岩手県民は、控えめで目立つことを好まない気質があると感じてます。一方で、私は岩手の魅力をもっと広げていきたいと思っています。もちろん、岩手の皆さんの県民性にお邪魔しないようにしたいという気持ちもあるので、そこはバランスを見ながらと思っているのですが」
元CAということもあり、色々な場所へ足を運ぶのが大好きなゆきさん。彼女の発信に、岩手の方から好意的な反応が多く寄せられているようだ。「ぜひ、この場所も紹介してほしいです」とおすすめを教えてもらうこともあるそう。
発信をするようになって改めて気づいた岩手の魅力について伺ってみると、こんな答えが返ってきた。
「岩手には個人店が多くあるんです。それがすごく面白いですね。例えば、同じ冷麺でも個人店で全然味が違ったりするので、飽きることがありません。そういう意味では、すごく選択肢が豊富にあって、魅力的だなと思います」
移住者だからこそ見える視点や、県民の方にとっては“当たり前”になっている岩手の魅力を、移住者ならではの目線で発信する。そうした発信が、岩手の新たな魅力に気づき、地域を盛り上げていくきっかけになれば。そんな思いを胸に、彼女は日々、発信を続けている。
これからは、岩手や東北に暮らす人だけでなく、より多くの人に岩手の魅力を届けていきたいという、ゆきさん。新たな視点で切り取られる岩手の魅力に、これからもぜひ注目していきたい。
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