カフェで教えてもらった小さな幸せ【パリで見つけた生きやすさのヒント】

カフェで教えてもらった小さな幸せ【パリで見つけた生きやすさのヒント】
MIKI
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2026-08-16

極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。

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「Une noisette, s'il vous plaît(ユンヌ・ノワゼット・シルヴプレ / ノワゼットを1つください)」。パリで何十回、何百回と繰り返している注文フレーズです。ノワゼットとは、エスプレッソに少しミルクを加えたもの。「ヘーゼルナッツ」(フランス語でノワゼット)のような色をしているから、そう呼ばれるようになったようです。カフェより甘みがあって、カフェオレほどどっしりしていない感じが好みで、メニューにあると必ず頼んでしまう一品です。

パリに行くと時々立ち寄るカフェでも、いつものようにノワゼットを頼みます。いつも一人でやってきては窓際の席に座り同じ注文を繰り返すうち、いつの頃からかテキパキと働くクレアと顔なじみになっていました。何か特別な会話をするわけではありませんが「今日のスカーフ、素敵ね」「待ち合わせ? 楽しんで!」など、いつもとびきりの笑顔で最高の一杯を運んでくれる彼女が大好きになりました。

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ある日のこと、日本から少し残念なメールを受け取って沈んだ気持ちでいると、クレアが声をかけてくれました。「今日もノワゼット?」「あ、注文忘れてた。お願いします!」。笑顔で答えながらコインケースからコーヒー代を出す準備をしていました。すると、目の前に置かれたのは、デミタスカップに入ったカフェと別添えの温かいミルク、そして小さなチョコレートでした。少し驚いて顔を上げると、彼女がウィンクしながらこう言いました。「これはね、ただのカフェよ。そこに、たまたまミルクがついてるだけ。あなたがノワゼットにするかどうかは、私は知らないわ!」。私が、少しミルク多めのノワゼットが好きなことを知っていて、より安価なエスプレッソの価格でサービスしてくれたのです。「え、でも……」と驚いていると、「たまには、こんな日があってもいいじゃない?」と、微笑みながら多めのおつりを返してくれました。

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金額にすると1ユーロ足らずのことですが、心遣いが本当に嬉しくて、その日のノワゼットは特別おいしく感じられました。冷たいと言われることもあるパリジャン、パリジェンヌたちですが、私が出会った人々の多くは、とても温かく、目の前がパッと明るくなるような瞬間をプレゼントしてもらったことが何度もあります。杓子定規ではない対応で、さりげなく柔らかく相手を包み込む。コミュニケーションの仕事をする上で、見習えたらいいなと思えた、幸せなカフェの記憶です。

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