大切なものはいつだって人生と共にあるという話【パリで見つけた生きやすさのヒント】
極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。
世界中が恋する都市、花の都、芸術の街…ありとあらゆる形容詞で飾られるパリに魅了される「大勢のうちの1人」になったのは10代の頃。初めて足を踏み入れて以来、留学をしたり、その後も旅行や出張で訪れたりと、私の中では数えきれない思い出のある大切な場所になっています。
東京とパリを往復する時のルーティンは、飛行機がシャルル・ド・ゴール空港に着くたび、心の中で小さく(図々しくも)「ただいま」とつぶやくこと。そして、旅の最終日には、いつも「ああ、もうこれが本当に最後。さようなら!」と永遠の別れを告げることです。何度も行ってるんだからまた行けるんじゃない? と友人たちには笑われますが、私は毎回本気のadieu(アデュー / さようなら)を置いてパリを離れます。
いつものパリ最終日。物憂げな顔でお土産探しをしていたら、奥で新聞を読んでいた店主に話しかけられました。「買い物、楽しんでる?」。「あ、楽しいです! ただ、帰国するのが寂しくて。学生時代を過ごした大好きな街なんです」と答えると、ムッシューはにっこり笑ってこう言いました。「そうか、それは残念だ。でも、いい言葉がある。たしか、ヘミングウェイの小説だったと思う。若い頃をパリで過ごした人は、どこで暮らしたとしてもその後の人生にずっとパリがついてくるんだ。ここは移動祝祭日みたいな街だからさ。それって幸せなことだよね!」。なんて素敵な言葉だろう……と、思わず買い物の手がとまりました。
ようやくいくつかの文房具を選び終えると、お会計の時にもうひとつ小さなサプライズが。「Voilà (ヴォワラ / ほら)」と差し出されたのは小さなエッフェル塔のキーリング。「これはおまけ。パリはいつも君と共にあるけど、忘れそうな時はこれを見て思い出して」と。こんなの泣いてしまうと思いながら、精一杯の笑顔で感謝の気持ちを伝えて店を後にしました。
心が晴れやかになったムッシューの言葉。大切なことは常に心の中に置いておけばいい。そうすれば、いつでも、どこにいてもまた出合えるから。私はそんな風に解釈しています。何年経っても忘れられないパリの記憶です。
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