冷蔵庫がパンパン。そして食べ物を捨ててしまう…原因は?『捨てられる食べものたち』

冷蔵庫がパンパン。そして食べ物を捨ててしまう…原因は?『捨てられる食べものたち』

エコーチェンバー現象や排外主義の台頭により、視野狭窄になりがちな今、広い視野で世界を見るにはーー。フェミニズムやジェンダーについて取材してきた原宿なつきさんが、今気になる本と共に注目するキーワードをピックアップし紐解いていく。

Google Newsでヨガジャーナルの記事が見つけやすくなります

Googleに登録する
広告

白状します。

『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』(旬報社)という書籍を手に取ったきっかけは、冷蔵庫の奥から「いつ買ったのか記憶にない何か」を発掘したことでした。パッケージの賞味期限を見て、そっと目を閉じ、さっとゴミ箱へ……あの瞬間の、罪悪感とも敗北感ともつかない気持ち。こんな気持ちをできれば二度と味わわずに済む方法を知りたい……そう思って手に取ったのがこの一冊です。

著者の井出留美さんは、食品ロス問題ジャーナリストの第一人者。奈良女子大学食物学科を卒業後、栄養学の博士号と農学の修士号を持ち、ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグの広報室長を経て独立したという経歴の持ち主です。「食品ロス削減推進法」の成立にも協力した、いわばこの分野の第一人者。そんな食品ロスの専門家が、イラストと総ルビつきで、子どもにも読める入門書として書き下ろしたのが本書なのです。夏休みの読書感想文コンクールの課題図書にも選ばれた一冊ですが、断言します。これは大人も読むべき本です。

東京都民1年分の食料が毎年捨てられている

本書の帯にもなっているキャッチコピーは「東京都民1年分の食料を捨てる国」です。

日本の食品ロスは年間612万トン。著者曰く、「日本人ひとりが毎日おにぎり1個分を捨てている」と換算だそうです。また、世界全体では生産量の3分の1にあたる約13億トンが毎年捨てられています。

このような膨大な食品ロスを、私たちはどのように防ぐことができるのでしょうか?

スーパーでは手前から取る。賞味期限が過ぎても食べられる、と知る

本書で個人的に膝を打ったのが、賞味期限の章です。

賞味期限は「おいしく食べられる目安」であって、安全に食べられる期限(消費期限)とは別物です。それゆえ、少し賞味期限が過ぎたからといって、食べられなくなるわけではありません。

それなのにスーパーに行った際、棚の奥に手を突っ込んで、1日でも新しい日付を手に取ろうとする人は少なくないでしょう。

この行動、行動経済学でいう「損失回避」の典型です。カーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論によれば、人は同じ大きさの得よりも損を約2倍重く感じると言います。「古い日付を掴んでしまう」ことを損と感じるから、実際にはほぼ差のない数日分の鮮度のために棚の奥をまさぐるのです。そしてその結果、手前の商品が売れ残り、店頭で廃棄されてしまいます。

つまり、私たちの小さな損失回避が、社会全体の大きな損失を生んでいるわけです。

「すぐ食べるものは手前から取る」というたったひとつの行動が食品ロスの対策になる、と本書は教えてくれます。

食べ物を海外から運んできて捨てている。地産地消を心がけよう

ちなみに、食品を捨てているとき、私たちが捨てているのは食べ物だけではない、と本書は指摘しています。

日本は食料の6割以上を海外に頼っていて、食べものを運ぶ距離と量を掛け合わせた「フード・マイレージ」は国民1人あたり約6628トン・キロメートルです。これはアメリカの約6倍にも及びます。

つまり私たちが食べものを1つ捨てるとき、地球の裏側から運んできた燃料と、輸送で出たCO2も一緒に捨てているわけです。一方、日本国内では、約42万ヘクタール(東京都の面積のおよそ2倍)もの農地が、耕作されずに放置されているという現実もあります。遠くから食物を運んで、大量に捨てている一方、近くの畑は眠らせているのです。

こういった現状を変えるためには、国内の農家を支援していくなど、国を挙げての対策が必要でしょう。また、個人でできることとしては、「地産地消」を意識することが挙げられます。地元で作られたものを、地元で消費することを心がけるのです。国内の農家さんを応援する気持ちで、国内産のものを選ぶ意識が大切でしょう。

地道な対策をコツコツ続けよう

食品ロス対策のために、個人ができることはとても地道なことです。

すぐ食べるものは賞味期限の近いものから買う。できるだけ地産地消を心がける。買いすぎない、作りすぎない。外食では食べきれる量を注文する。宴会では「30・10(さんまるいちまる)運動」(最初の30分と最後の10分は席について料理を食べきる)を意識する。こういった地道な積み重ねが、食品ロスを防ぐ一助となります。

家計的にも、食品ロスをなくせば1か月あたり数千円の得になるという試算もあるので、食品ロスを防ぐための行動は、地球にも財布にも優しい行動だと言えるでしょう。

食べ物を捨ててしまうのは、「だらしないから」じゃない?

本書を読む前の私は、食べものを捨てるたびに「自分はだらしない」と落ち込んでいました。けれど本書を読んで気づいたのは、食品ロスの多くは意志の弱さではなく、「知らないこと」と「習慣」から生まれているということです。

賞味期限と消費期限の違いを知らないから、まだ食べられるものを捨てるのです。例えば、卵の賞味期限はパックされてから2週間ですが、冬場であれば57日間は生でも食べられる、そうです。この知識があるかないかで、卵を捨てる頻度は変わるでしょう。

また、棚の奥から取るクセがあるから、店頭の廃棄が増えるわけですが、知識を得て手前から取ることを徹底すれば、廃棄を減らすことができます。

つまり、知識を増やし、クセを見直していけば、根性論に頼らなくても食品ロスは減らせるということです。

これは食品ロスに限った話ではないのかもしれません。ダイエットでも片付けでも、行動を変えたいなら自分を責めるより先に知識を習得し、クセを見直す。本書は、その考え方を食卓で実践するための、具体的な実例集でもあるのです。

定期的に食べものを捨ててしまっている自覚がある方は、罪悪感を背負う前に、まず本書で「知ること」から始め、食べ物を捨ててしまう習慣のクセを見直してみてはいかがでしょうか。

Google Newsでヨガジャーナルの記事が見つけやすくなります

Googleに登録する
広告

RELATED関連記事