何科に行けばいいのかわからないを解決!受診と治療の”困った”に寄り添う「総合診療科」を知ってもっと身近に

何科に行けばいいのかわからないを解決!受診と治療の”困った”に寄り添う「総合診療科」を知ってもっと身近に
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北林あい
北林あい
2026-05-16

テレビドラマ『19番目のカルテ』の題材になり、2018年に始まった新専門医制度で、19番目の基本領域として位置付けされた「総合診療科」をご存じですか。知っておくと受診の迷いと不安が減り、最善な治療へ迅速に辿り着く助けになります。その総合診療科の基礎知識を鋪野紀好先生(日本専門医機構 総合診療専門医検討委員会 広報部会)にうかがいました。

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症状だけを診ず、患者を取り巻くあらゆる要素を広く診る

―まずは総合診療科をよく知らない人のために、どんなところか教えてください。

総合診療科は、特定の臓器や病気だけを診るのではなく、その人全体を診る診療科です。総合診療医は内科的な症状だけでなく、年齢、生活背景、心理面、家族背景、介護状況、薬の使い方などを含めて診察し、「頭が痛いから脳だけ」「胃が痛いから胃だけ」ではなく、症状の背景に何があるのかを幅広く考えます。言い換えると、患者さんが何科に行けばいいかわからないと感じるとき、まず初めに相談できる窓口です。医師と一緒に問題を整理し、必要があれば専門医に橋渡しをして、その後も生活の中での健康管理を支えます。 

― その人全体を診る、総合診療科の問診はどのように行いますか?

もちろん症状についてお聞きしますが、発症のきっかけや生活環境についても詳しく確認していきます。たとえば頭が痛くて受診し、原因が筋肉の凝りからくる緊張型頭痛だったとします。その場合、緊張型頭痛の要因が長時間のデスクワークによるものなのか、介護や子育てのストレスによるものかを問診の中で探り、緊張型頭痛という身体に対する治療だけでなく、生活環境の改善も支援します。あるいは頭痛薬の飲みすぎによる薬物乱用頭痛の可能性も考えられるので、幅広く話を聴かせていただきます。

― 医師は常に忙しいという印象があり、患者としては生活状況まで話して時間を取っていいものかためらうことがあります。症状を取り巻く背景に耳を傾けてもらえると、精神的な重荷も軽減されると思います。問診のほかに検査も行いますか?

もちろん、必要に応じて検査も行います。しかし必要性の低い検査や繰り返しの検査は、身体的、心理的、経済的にも患者さんの負担になります。無駄な検査を極力減らすために、しっかりと問診をして本当に必要な検査をご提案します。 

― 別の科で検査をしたけれど病名がつかず、「受診はしご」をしたり、検査を繰り返したりする場面を減らせそうですね。

そうですね。「受診はしご」というのは、いわゆる「ドクターショッピング」と言われるものです。胸の痛みを訴えてきた患者さんを例にご紹介すると、最初は心臓の病気を疑い循環器科を受診し、レントゲンや心電図では異常が見つかりませんでした。次は呼吸器科で肺のCTを撮りましたが、やはり原因がわからず総合診療科を受診されました。問診をすると、痛みのある場所が帯状に広がり、服が皮膚にこすれると痛みが走るということで、心臓や肺の病気ではなく帯状疱疹と診断されました。このように問診を丁寧に行うことで、必要のない検査を減らすように取り組んでいます。

― 病名がわかれば総合診療科で治療も可能ですか?

帯状疱疹の患者さんのケースは、総合診療科で薬を処方し治療まで対応できます。より専門的な治療が必要な神経の難病だった場合などは、専門医のいる病院をご紹介します。ただし大学病院であれば診療科を幅広く網羅し、専門医が揃っているので、院内の専門科におつなぎすることが可能です。

また総合診療医は特定の臓器や疾患に限定されず、診療科全般について学んでいるオールラウンドプレーヤーなので、専門医が少ない地方などでは、総合診療医がほかの専門科の領域をカバーして治療にあたることがあります。

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 誕生の背景にあるのは高齢化。複数の疾患を抱える患者に対応 

― 総合診療科は、日本の医療の中で最も新しい診療領域と聞いています。誕生した背景を教えてください。

現代医療では、循環器、消化器、脳神経、整形外科など専門分野が発展し、質の高い医療が提供されるようになりました。一方で、高齢化により複数の病気を持つ人が増えたり、身体症状に心理・社会的背景が関係したりする場面も増えています。もはや患者さんの困りごとは、一つの臓器だけでは説明できなくなっているのです。そのため、臓器別の専門診療と並んで、患者さん全体を見て、必要な医療につなぐ総合診療の役割が重要になり総合診療科が誕生しました。

― 高齢化が大きく関係しているのですね。

そうですね。高齢になると多疾患併存といって、高血圧、糖尿病、脳梗塞など様々な病気を抱えることが増えていきます。疾患ごとに違う病院にかかると通院が大変ですし、薬がどんどん増えるのも負担になりかねません。総合診療科ができたことで全体を統括して診て、優先順位をつけて必要な薬を整理することも可能です。

― 総合診療科ができる前は、総合診療をする医師はいなかったのでしょうか?

総合診療をやっている医師はいましたが、総合診療という専門医はいませんでした。2018年4月に始まった専門医制度(医師の研修制度)では、内科や外科など19の基本領域から診療科を選んで研修を積み、その19番目に新たに設置されたのが総合診療科です。総合診療は日本の専門医制度の中で、重要な基本領域の一つとして位置づけられています。この辺りは、『19番目のカルテ』(TBS)のタイトル由来ともつながるわけです。 

『19番目のカルテ』では、「病気ではなく、人を診る」「19番目の新領域『総合診療科』の医師を描く」と紹介されており、総合診療科を知るきっかけになった方も多いと思います。また『総合診療医ドクターG NEXT』(NHK)のように、総合診療医が診断プロセスを解き明かす番組もあり、メディアの助けも借りて総合診療の考え方が一般の方にも伝わりやすくなったと思います。 

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知っておくと安心、近くの総合診療科をチェック

― 総合診療科のある病院はどのように探せばいいですか?

病院では「総合診療科」「総合内科」「総合診療部」などの名称で設置されていることがあります。地域の診療所では、「家庭医療」「プライマリ・ケア」「かかりつけ医」として総合診療的な役割を担っている医師もいます。

探し方としては、医療情報ネット、通称「ナビイ」を活用する方法があります。ナビイでは、診療日、診療科目、対応可能な疾患・治療内容、提供サービスなどから全国の医療機関・薬局を検索できます。かかりつけ医を探す際には、一次診療を行える診療領域や疾患、相談対応、時間外診療、在宅医療の提供状況なども確認できます。まずは“総合診療科”という名前で探していただくのも一つです。ただ、地域によっては“総合内科”や“家庭医療”“プライマリ・ケア”という名称で同じような役割を担っている場合もあります。また、日本専門医機構のHPにも総合診療専門医のリストが公開されているので参考にしてください。

※「総合診療科 後編」はこちらから

■総合診療科がよくわかる! YouTubeライブで市民公開講座を開催 

2026年6月13日(土)14時~「どう探す?かかりつけ医~かかりつけ医機能報告制度のスタートにあわせて~」を開催します。事前申し込みは不要で、当日はYouTubeから視聴できます。https://jbgm.org/ippan/#shiminkouza 


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プロフィール…鋪野 紀好(しきの きよし)先生

千葉大学大学院医学研究院 地域医療教育学 特任教授、千葉大学医学部附属病院総合診療科医師。千葉大学医学部卒業後、同大学院博士課程修了。米国マサチューセッツ総合病院医療者教育学修士課程修了。総合診療専門医・指導医、総合内科専門医・内科指導医として、総合診療や医学教育・研究に取り組む。

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取材・文/北林あい

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