19番目の新しい科「総合診療科」ってどんなところ?受診の目安とメリット、ケース別の診察例まで徹底紹介
2018年に新設された「総合診療科」は、ほかの診療科と大きく何が違うのでしょうか。また患者が総合診療科を活用するメリットや、具体的な診察例をわかりやすく紹介します。いざというときの頼れる窓口であり、慢性疾患を持つ人の良き伴走者となる総合診療科について、鋪野紀好先生(日本専門医機構 総合診療専門医検討委員会 広報部会)にうかがいました。
専門診療と連携して適切な医療提供をサポート
― 日本で最も新しい科である総合診療科。内科や外科などの専門診療と総合診療の違いを教えてください。
専門診療は「深く診る」、総合診療は「広く診て、つなぎ、伴走する」診療です。専門診療は、心臓、脳、消化器、婦人科など、特定の領域を深く診ることに強みがあります。一方、総合診療は、特定の臓器や病気だけを診るのではなく、体・心・生活背景を含めて、その人全体を診ます。そして最初の段階で症状を整理し、重大な病気を見逃さないようにしながら必要な専門診療につなぎます。
言い換えると、総合診療医は専門医の代わりではなく、専門医療をより適切に使うための案内役でもあります。また、専門医と競合するのではなく、連携する診療科であるのもポイントです。
総合診療科を上手に活用するために知っておきたいこと
― 総合診療科はどんなときに受診すればいいですか?
「どの科に行けばよいかわからない」とき、また「複数の不調が重なっている」ときに相談してください。具体的には、次のようなケースが挙げられます。
・頭痛、めまい、だるさ、不眠、食欲不振など、原因がはっきりしない症状が続くとき
・更年期かもしれないが、ほかの病気も心配なとき
・複数の病気や薬があり、全体を見直したいとき
・高齢の親の体調、介護、通院先について相談したいとき
・専門医にかかったが、症状が残っていて生活上の困りごとがあるとき
― 「複数の病気や薬があり、全体を見直したいとき」とは、いわゆる"セカンドオピニオン"としての活用を意味しますか?
もちろん、セカンドオピニオンとして受診する方もいらっしゃいます。ここでは高血圧や糖尿病など複数の疾患を抱えていて、それぞれ異なる病院に通っており、飲み合わせが悪い薬を気付かずに飲み続けてしまう場合などを想定しています。
ほかにも、高血圧の治療をしている患者さんがむくみを訴え、むくみに効く薬を処方されたとします。実は血圧を下げる薬の副作用でむくみが出ることがあり、しかも長く服用していて今までは問題がなかったのに急に発症することがあります。このような場合に総合診療科を受診していただくと、薬を変える、休薬するなどして治療を整理することが可能です。患者本人だけで判断するものではなく、現在、通院している医療機関の先生は当然ですが、それに加えて総合診療医にもご相談いただくのが良いかもしれません。
― また高齢の親の介護について、病院で相談にのってもらえるのは意外でした。症状だけでなくその人全体を診る、総合診療科の特徴と言えますね。
私が担当している50代の患者さんは、よく見ると身なりが整っておらず、疲れているように見受けられました。生活背景をうかがうと介護ストレスを抱えているとわかり、「お父様はどこの病院に行っていますか?」と聞くと「かかりつけ医がいない」とのこと。それなら「総合診療科で診てみましょうか」と声がけをして、薬を出すだけが治療ではなく、患者さんの背景にも興味を持ち根本的な解決をお手伝いします。また総合診療科は多職種につなぐ役割も担っており、高齢の患者さんをケアマネージャーや訪問介護につなぎ、地域全体の健康向上を目指しています。
抱えているモヤモヤを晴らし、医療への信頼度を高める
― 日本の医療レベルは高いですが、専門分野ごとの独立性も高く、医師に専門外のことを聞きづらい縦割り体制に不便さを感じることがあります。総合診療科はそうした部分も解消できる診療科と言えそうですが、患者にとってほかにどんなメリットがありますか。
どの科に行けばよいかを一緒に整理し、受診先の迷いを減らせます。日本はフリーアクセスで受診できるメリットがありますが、それを活用するには患者さんは「賢く受診する」必要があります。しかし常に適切な選択ができるとは限らないので、この症状だからこの専門医と、自分では判断がつかないときにお役に立てます。
また「受診はしご」、いわゆる「ドクターショッピング」を減らせる可能性があります。症状を一つずつ別々に見るのではなく、全体像として考えるため、不要な受診の繰り返しを減らせます。不安の増幅も減り、心身のつらさを含めて適切に整理・支援することにもつながります。
ほかには見落としを防ぐ視点があるので、よくある症状の中に隠れている重大な病気にも注意しながら診療します。診察では生活背景まで含めて相談でき、仕事、家庭、介護、睡眠、ストレス、薬の管理など、健康に影響する要素を含めて考えます。そして必要な専門医療につながりやすく、専門診療が必要な場合には適切なタイミングでご紹介します。
頭痛や更年期の不調…具体的な4つの診察例を紹介
― 総合診療科における診察例をケース別に教えてください。
ケース1:頭痛で内科を受診し、痛み止めを処方されたけど改善しない
頭痛はよくある症状ですが、原因は様々です。総合診療科では、まず危険な頭痛ではないかを確認します。突然の激しい頭痛、手足の麻痺、ろれつが回らない、発熱や首の硬さ、がんや免疫低下の背景がある場合などは、緊急性を考えます。一方で、命に関わる病気が否定的な場合でも、片頭痛、緊張型頭痛、薬剤の使い過ぎ、睡眠不足、ストレス、眼精疲労、抑うつ、不安、血圧、肩こり、生活リズムなどを含めて見直します。痛み止めで改善しない頭痛では、薬が効かないだけで終わらせず、診断そのもの、生活背景、心理的負担、薬の使い方をもう一度整理します。
ケース2:更年期の症状だと思うけど、原因がはっきりしない
40代以降の女性では、更年期に関連した症状が起こることがあります。ただし、イライラ、不眠、動悸、だるさ、頭痛、めまいなどをすべて「更年期だから」と決めつけてしまうと、甲状腺疾患、貧血、うつ、不安障害、睡眠障害、薬の影響、生活習慣病などを見逃す可能性があります。実際、更年期のホットフラッシュと甲状腺疾患は、どちらもほてりや発汗があり、多くは患者さん自身で区別がつきません。
総合診療科では、症状の全体像を整理し、婦人科的な評価が必要な場合は婦人科へ、精神的なつらさが強い場合はメンタルヘルスの専門家へ、身体疾患が疑われる場合は必要な検査や専門診療へつなぎます。更年期かもしれない、でも本当にそれだけなのか不安、という時に、総合診療科は相談しやすい窓口になります。また、年齢のせいで片づけず、体・心・生活を一緒に見直します。
ケース3:高齢の親が複数の慢性的な不調で悩んでいる
高齢の方では、高血圧、糖尿病、心臓病、関節痛、不眠、便秘、物忘れ、食欲低下など、複数の問題が同時に存在することがよくあります。複数の診療科に通っていると、薬が増えすぎたり、通院そのものが負担になったりすることもあります。総合診療科では、病気を一つずつ見るだけでなく、生活機能、介護状況、家族の負担、薬の整理、今後の療養の希望などを含めて考えます。必要に応じて、訪問診療、介護サービス、多職種連携につなげることもあります。高齢の親御さんについては、病名を増やすよりも、生活をどう支えるかが大切になる場面があり、総合診療科はその全体設計を一緒に考えます。現在の医療では「治し、支える医療」が求められています。
ケース4:自然療法を希望し、薬を飲むことに強い抵抗がある
まず、どういう病気なのか、なぜ服薬が必要なのかを丁寧に説明します。たとえば高血圧の治療薬の話をするときに、よく「一生、飲み続けるのですか?」と聞かれます。正しくは「生活習慣が改善すれば服薬をやめられる可能性はあり、改善するまでは継続的に飲み、その都度見直しをしていきませんか」という話をします。医師が一方的に治療を決めるのではなく、患者さんと対話しながら一緒に決めて納得のうえで治療を進めていきます。
■総合診療科がよくわかる! YouTubeライブで市民公開講座を開催
2026年6月13日(土)14時~「どう探す?かかりつけ医~かかりつけ医機能報告制度のスタートにあわせて~」を開催します。事前申し込みは不要で、当日はYouTubeから視聴できます。https://jbgm.org/ippan/#shiminkouza

プロフィール…鋪野 紀好(しきの きよし)先生
千葉大学大学院医学研究院 地域医療教育学 特任教授、千葉大学医学部附属病院総合診療科医師。千葉大学医学部卒業後、同大学院博士課程修了。米国マサチューセッツ総合病院医療者教育学修士課程修了。総合診療専門医・指導医、総合内科専門医・内科指導医として、総合診療や医学教育・研究に取り組む。
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