夫の年収を知らない妻、妻の貯金を知らない夫。“お金の話ができない夫婦”の、その先にあるもの

夫の年収を知らない妻、妻の貯金を知らない夫。“お金の話ができない夫婦”の、その先にあるもの
Getty Images
岸原麻衣
岸原麻衣
2026-05-13

社会的に活躍し、経済的にも恵まれているはずなのに、なぜかお金のことで心が揺らぐ——。衝動買いや罪悪感の裏にあるのは、意志の弱さではなく「心のサイン」かもしれません。お金の不安に“寄り添う”専門家・ファイナンシャルセラピストの岸原麻衣さんが、お金の使い方を通して本当の不安を紐解く連載です。

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親子関係がお金の価値観を形成するなら、それは今の夫婦やカップルの関係でどのように発動するのでしょうか。今回は、パートナー間に潜むお金と関係性の問題を見ていきましょう。

「うちは財布は別々だから」「夫の細かい収入はよく知らなくて」「お金の話になると夫がムッとするから」—— そんな言葉をよく聞きます。

お金の話ができない夫婦やカップルを「家計管理の問題」として捉えるのは表層的です。ファイナンシャルセラピー(※)では、パートナー間のお金のコミュニケーション不全を「関係性の問題」として扱います。お金の話を避けるとき、私たちは実は何を避けているのでしょうか。

(※)ファイナンシャルセラピー:心理療法とファイナンシャルプランニングを統合したアプローチ

回避の3パターン

(1)拒絶への恐れ:自分の価値観や使い方を否定されることへの恐怖。お金の開示が「自分の開示」のように感じられるため、踏み込めない。

(2)力関係の変化への恐れ:収入差を明かすことで、関係のバランスが崩れることへの不安。高収入側も低収入側も、それぞれの仕方で沈黙を選びます。

(3)原家族パターンの再演:親がお金の話をしなかった家庭で育つと、「お金の話はしないもの」が無意識の前提になります。たとえば母から娘へ、気づかぬまま受け継がれるパターンです。

善意もまた、沈黙を選ぶ

「相手を傷つけたくない」という配慮が働いているのかもしれません。たとえば、伝統的な性役割の意識 ——「男性の方が稼がなくてはいけない」など—— がある場合、男性側は無言の重圧を感じ、女性側は暗黙裡に期待しています。

話せないままでいることは、安全ではありません。「お金の問題」は放置するほど「信頼の問題」へと変質していくからです。さらにいえば、お金の不透明さが関係を悪化させ、関係の悪化がさらにお金の話を難しくさせるという負のループにはまっていく。多くの夫婦が離婚の引き金としてお金のすれ違いを挙げるのは、金額の問題ではなく、「話せなかった」という積み重ねが原因です。

では、どこから始めればいいのでしょうか。

負のループから抜け出すために

お金の話を切り出す前に、試してほしいことがあります。目を閉じ、「パートナーとお金の話をする」と心の中で思い浮かべてみてください。そのとき、体のどこかが緊張したり、呼吸が浅くなったりしないでしょうか。

ヨガや瞑想をしている人ならよく知っているように、体は違和感を正直に教えてくれます。その反応こそが、あなたが何を恐れているかのサイン。緊張を感じた部位にそっと意識を向け、数回深く呼吸します。「怖い」「恥ずかしい」「傷つきたくない」——まず、その感情を自分自身が知ることが出発点です。パートナーとどう話すかは、その次の問いになります。

「いくらあるか」を知ること以上に、「なぜそれを共有できないのか」「話そうとすると何が起きるのか」という、二人の間の相互作用のパターンに気づくことが重要です。「お金の話をしよう」ではなく、「お金について、自分がどう感じているかを知ろう」から始めてみてはいかがでしょうか。

 

*お金と心の関係について、もう少し深く考えてみたいと感じた方は、プロフェッショナル・サイコセラピー研究所〈IPP〉へお気軽にご相談ください。

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