「新生活」には期待だけでなく不安や息苦しさも伴う。新生活が始まるあなたに、私が伝えられること|連載 #こころをほどく
元アナウンサーの渡邊渚さんが、自身の心に宿る想いをひとつずつほどきながら、心身のつながりや揺れ動く気持ちを綴るエッセイ連載。
新しい日々が始まるこの季節。
咲き誇る桜の花が新年度を祝ってくれているかのようで、春は毎年、明るい未来への始まりを感じさせます。
クラス替え。
卒業。
就職。
職場環境の変化。
それぞれが、それぞれの場所で、これまでとは違う役割を背負い、新しい一歩を踏み出していきます。
でも、明るくなればなるほど、影も色濃くなります。
新生活は美しい面だけじゃなく、不安や息苦しさも感じるものだと思います。
うまくやらなきゃ。
早く馴染まなきゃ。
期待に応えなきゃ。
必要とされる存在にならなきゃ。
と、小さな決意が少しずつ重さを増していく。
まだ足りない。
もっと努力しなきゃ。
誰よりも行動しなきゃ。
頑張ろうという気持ちが、徐々に自分への見えない圧に変わっていくこともあるでしょう。
周囲と比較して、自分が劣っている、ダメな人間なのかもしれないと思ったり、向いてないのかなと不安になったり。
そんな時に思い出してほしいのが、“あなたの好きなこと“です。
それは誰よりも優れていたり、誇れるものじゃなくていいのです。
誰かに褒められるわけではないけど、つい時間を割いてやっていること。
理由もなく、ただ惹かれているもの。
あなたをあなたらしくいさせてくれるもの。
それを忘れないでほしいです。
新しい生活に慣れようと頑張り続けていると、次第に本来の自分が見えなくなっていきます。
仕事や他者との時間に重心を置きすぎて、自分の心を犠牲にしていることも。
そんな時に、“ただそれをしているだけで、ほんの少しだけでも気持ちが晴れるもの”が、必要なのです。
今の私にとっては、刺し子をしたり、パラコードを編んだり、ただ無心で何かを作っている時間が、それにあたります。
ひと針、ひと針、布に糸を通していく時間。
一本の紐を、ゆっくりと編み上げていく時間。
最初は何もなかったものが少しずつ形を持ち始める過程。
そこには誰かの期待や評価も入り込んできません。
ただ、手の中にある感触とゆっくりと流れる時間だけが、そこにあります。
何も気にすることなく、ただ好きなことをしている時間はありのままの自分でいられて、自然と落ち着いて過ごすことができ、また“居心地のいい自分”を探す時間にもなっています。
もし、その「好きなもの」を楽しめなくなっていたら、それは、心が少し疲れているサイン。
好きだったはずなのに、手が伸びない。
やりたいはずなのに、余裕がない。
気づかないうちに、自分を後回しにしすぎているのかもしれません。
頑張りすぎている自分に、ストップをかけて、
「あなたらしく生きていいんだよ」
「本当の自分は、好きな自分は、どこにいる?」
と心の声に耳を傾けてください。
好きなことがない、と思う人もいるでしょう。
でも、そんなことないと私は思います。
あなたが無意識で能動的にやっていること、周囲の人に誘われてやってみたこと、日常的にやりすぎてて見落としていること、何かしらに、きっと、あなたの心が踊ったり、はたまた気持ちが楽になったりすることがあるはずです。
ない、と決めつけないで、少しだけ丁寧に自分と向き合ってみてくださいね。
ここまで長々と書いてきましたが、皆さんに一番伝えたいことは、『本当の自分を見失わないためにも、好きなものを手放さないでほしい』ということです。
大きな夢でなくていいし、人に誇れる特技でなくてもいい。
誰かに説明できる必要もない。
好きなことがあれば、あなたは、どこにいても、自分に戻ることができるはずです。
うまくいかない日も、頑張っても報われないと感じる日も、笑顔の仮面をかぶっている日も、好きなことだけは、手のひらで大切に守り続けてください。
強い春風が吹いたとしても、あなたの心の灯火が消えないように。
好きなものを守り続けることが、あなたの心の助けになるでしょう。
新年度を迎えるあなたへ。
どうか、あなたの「好き」を、ひとつだけでもいいから、そっと持ち続けていて。
それだけで、あなたはきっと、どこへ行っても大丈夫だから。
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