玄米を週4回食べるだけで、認知機能が改善? 東北大学×東洋ライスが脳の認知機能改善を実証
「玄米が体にいい」とは昔からよく言われますが、脳の健康にまで影響するとしたら? 東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターと東洋ライス株式会社による共同研究が、2026年2月に東京都内で発表されました。「ロウカット玄米を週4回、6か月間食べると、高齢者の認知機能が改善する」という内容で、国際学術誌『Critical Public Health』にも掲載されたエビデンスです。発表会の内容をレポートします。
日本の高齢者が直面する「健康寿命の課題」
登壇した瀧靖之教授(東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター)は、まず日本の現状を説明しました。日本は世界トップクラスの長寿国ですが、平均寿命と健康寿命(介護を必要とせず自立して生活できる期間)の間には約10年の差があります。要介護認定の原因としてもっとも多いのが認知症です。
「有酸素運動や楽器演奏が脳にいいことは科学的に明らかになっています。でも、知っていてもなかなかできないという方が多い。より日常生活に取り入れやすいアプローチとして、私たちは食に着目しました」(瀧教授)
「ロウカット玄米」って、何が違うの?
今回の研究で使われたのは、東洋ライス株式会社が独自開発した「ロウカット玄米」(学術名:脱ロウ玄米)です。通常の玄米が食べにくい理由は、表面にある天然のロウ(ワックス)層が水の吸収を妨げ、炊いても硬くなってしまうためです。
ロウカット玄米はこのロウ層のみを特殊な精米技術(特許第6850526号)で均一に除去することで、普通の炊飯器で白米と同じように炊けて、食感も白米に近くなります。それでいて玄米の栄養素——ビタミンB群、ビタミンE、食物繊維、ミネラル、そして白米の50倍以上含まれるγ(ガンマ)-オリザノールなど——はそのまま保たれています。
「ぬかには栄養がある。しかしそのままでは食べにくく、消化もしにくい。そこで食べやすさと栄養の両立を目指して開発しました」と語るのは、東洋ライス代表取締役社長の雜賀慶二氏(92歳)。自身も若い頃は病弱だったといいますが、現在も現役で活躍しています。
研究の方法:週4回、6か月間食べてみたら
研究の対象は、60歳以上で認知機能に問題のない健康な高齢者56名(玄米群30名・白米群26名)。全国15施設からリクルートされ、それぞれのグループが週4回、6か月間にわたって指定のお米(ロウカット玄米または白米)をお茶碗1杯程度食べ続けました。
認知機能の評価には2つのテストが使われました。ひとつはFAB(前頭葉機能検査)で、計画を立てる・注意を向ける・衝動をコントロールするといった「遂行機能」を測ります。もうひとつはMMSE(認知症スクリーニングに使われる全般的な認知機能検査)です。
結果:玄米群だけ、遂行機能に有意差
6か月後、玄米群ではFABの合計スコアが平均12.67点から13.57点へと統計学的に有意に改善しました。一方、白米群では13.77点から13.46点とほぼ変化がありませんでした。
FABが測る「遂行機能」とは、目標に向けて行動を計画し、注意を向け、感情をコントロールする脳の働きのこと。仕事、人間関係、日常の買い物や料理まで、あらゆる場面で使われる「脳の司令塔」ともいえる機能です。
なお、もうひとつのテスト(MMSE)では両群とも有意な変化は見られませんでした。これは、健康な高齢者ではMMSEの得点がもともと高く、変化が出にくいためと研究チームは説明しています。
「食品による介入研究では統計的に有意な結果が出ないことがしばしばあります。今回は中程度の効果量が示されました。これは今後の研究を進める上で大きな足がかりとなる成果です」と瀧教授はコメントしています。
なぜ玄米が脳に効くの? 考えられる3つの理由
論文では、玄米が認知機能に影響するメカニズムとして主に3つの経路が考察されています。
まず、γ-オリザノールなどの抗酸化成分が酸化ストレスを軽減し、神経細胞を保護する可能性があります。次に、動物実験の結果から、玄米の摂取が前頭葉のセロトニンレベルを高め、遂行機能の改善につながると考えられています。セロトニンは気分の安定にも深く関わる神経伝達物質です。さらに、血圧・血糖・脂質への好影響が脳血管の動脈硬化を防ぎ、脳への血流を維持することも間接的な要因として挙げられています。
ただし論文では「これらの複合的な作用が関与している可能性がある」とされており、メカニズムの確定には今後のさらなる研究が必要とされています。
研究の限界と、それでも意義が大きい理由
今回の研究はオープンラベル(参加者が何を食べているか分かる状態)での非ランダム化試験であること、新型コロナウイルスの影響でサンプル数が当初目標の68名に届かなかったこと、また介入開始時点で両群のFABスコアに差があったことなど、論文自身もいくつかの限界を明示しています。
一方で、研究チームが強調するのは「日常生活への取り入れやすさ」という点です。毎日・厳密に食べ続けなくても、週4回というゆるやかなペースで、6か月という比較的短い期間でも効果が見られたことは、「続けやすい食習慣として広く実践できる可能性がある」ことを示しています。
いつもの主食を少し変えるだけでいい
今回の研究では、「特別なことをしなくてもいい。いつもの白米をロウカット玄米に替えるだけで、将来の認知機能を守ってくれる」という可能性を示しています。食事は毎日のことだからこそ、小さな習慣の積み重ねが、将来の自分の脳と健康寿命を守ることにつながるのかもしれません。
【論文情報】
タイトル:「6か月間のロウカット玄米摂取が高齢者の認知機能を改善する:オープンラベル試験」
著者:Michio Takahashi, Yuji Takano, Keisuke Kokubun, Naoki Nishiyama, Keiji Saika, Yasuyuki Taki
掲載誌:Critical Public Health(2026, Vol. 36, No. 1) DOI:10.1080/09581596.2025.2598713
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く







