「私は痩せてるから大丈夫」その油断が落とし穴!“隠れ脂肪肝”が40代女性に増えている意外な理由とは|医師が解説
「脂肪肝」と聞くと、つい“太っている人の病気”というイメージを持つ人が多いですよね。でも最近、内科の現場で増えているのが、痩せているのに脂肪肝になっている人なんです。しかも、その多くが40代以降の女性。健康診断のエコー検査で初めて指摘され、「え?私が?」と驚くケースが少なくありません。医師が解説します。
「私は痩せてるから大丈夫」…その油断が落とし穴
実は、脂肪肝というのは単に“脂っこい食事をしている人”や“お酒をよく飲む人”だけに起こる病気ではありません。
むしろ最近注目されているのは、「痩せているのに脂肪肝になるタイプ」=“隠れ脂肪肝”です。
このタイプの脂肪肝は、BMI(体格指数)が標準以下なのに、肝臓に中性脂肪がたまってしまう状態。
原因は複雑ですが、主に以下要因などが重なって、肝臓の代謝がうまく回らなくなることが関係しています。
- 無理なダイエットによる栄養バランスの乱れ
- タンパク質不足
- 運動不足
- ストレスや睡眠不足
たとえば「糖質制限ダイエット」を長く続けている人は、脂質をエネルギー源として使うために肝臓に負担がかかり、結果として中性脂肪が肝臓に蓄積してしまうことがあります。
つまり、“健康のためにやっていたこと”が、逆に肝臓を疲れさせていたというパターンも珍しくないのです。
肝臓は沈黙の臓器――症状が出たときには、もう進行している?
怖いのは、脂肪肝になっても最初はほとんど自覚症状がないこと。
痛くもかゆくもないため、放置されやすいのが特徴です。
しかし、そのまま放っておくと、脂肪肝 → 炎症(脂肪肝炎) → 肝硬変 → 肝がんへと進行してしまうケースもあります。
実際、「健康診断のAST(GOT)やALT(GPT)がちょっと高いな…」という程度で済ませていたら、数年後に肝臓の炎症が進んでいたという人も。
肝臓は非常にタフで沈黙を守る臓器なので、症状が出る頃にはすでに手遅れになっていることもあるのです。
さらに最近の研究では、脂肪肝は単なる肝臓の問題にとどまらず、動脈硬化、糖尿病、高血圧、心筋梗塞といった生活習慣病のリスクとも深く関係していることがわかっています。
つまり、「肝臓だけの病気」ではなく「全身の代謝異常のサイン」なんですね。
40代女性に多いのは、出産・子育て・仕事などで生活リズムが乱れやすく、「朝はコーヒーだけ」「夜は遅い時間に軽くお菓子」など、栄養バランスが偏りがちな人。
また、ストレスでホルモンバランスが崩れ、脂肪の代謝がうまくいかなくなることもあります。
見た目はスリムでも、肝臓の中では静かに脂肪がたまっている――まさに“隠れ脂肪肝”の典型パターンです。
まとめ:肝臓をいたわる暮らし方で、“隠れ脂肪肝”を防ごう
では、痩せていても安心できない「隠れ脂肪肝」を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
ポイントは、「栄養・運動・休息」の3つをバランスよく整えることです。
まず食事。
極端な糖質制限やファスティングは避け、タンパク質とビタミンB群をしっかり摂ることが大切。特に、魚・豆腐・卵・納豆などの良質なタンパク質は、肝臓の代謝をサポートします。また、間食にナッツやヨーグルトを取り入れるのもおすすめです。
次に運動。
ハードなトレーニングは不要ですが、1日20〜30分のウォーキングや軽い筋トレを続けることで、肝臓にたまった脂肪を減らすことができます。とくに太ももやお尻などの“大きな筋肉”を動かすと代謝が上がりやすいです。
そして、もうひとつ見落とされがちなのが睡眠とストレスケア。
寝不足やストレスは、肝臓の修復を妨げ、脂肪の燃焼効率を下げます。夜更かしをやめて、少しでも自分を休ませる時間を作ること。これも立派な肝臓ケアです。
最後に、年に一度は健康診断で肝機能(AST、ALT、γ-GTP)や腹部エコーをチェックしましょう。
「見た目が痩せているから安心」と思っていると、気づかないうちに肝臓が悲鳴を上げているかもしれません。
肝臓は、黙ってあなたを支えてくれている“働き者”です。だからこそ、日々の食事や生活習慣で少しずつでも優しくしてあげたい。
疲れやすい、肌が荒れる、なんとなく調子が悪い…。そんなサインを感じたとき、「隠れ脂肪肝」という可能性も、頭の片隅に置いてみてください。
あなたの肝臓は、きっと静かに「そろそろ休ませて」と言っているのかもしれません。
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