更年期に太りやすくなった人への処方箋 |「水を飲んでも太る」その理由と抜け出す方法
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
「水を飲んでも太る」——そんな声が増えています。
「最近、何をしても痩せない」
「昔と同じ量しか食べていないのに体重が増える」
「ダイエットしても結果が出ない」
40代後半から50代にかけて、こうした声は本当に多くなります。特に更年期を迎える頃、ホルモンの変化によって代謝が下がり、脂肪が落ちにくくなるのは確かです。
でも、ちょっと考えてみてください。「なぜ太るのか」を感覚ではなく、数字で理解していますか?
まず、自分の「基礎代謝」と「1日の必要カロリー」を知ろう
ダイエットというと、「食べない」ことばかりに意識が向きがちです。けれども、本当に大切なのは「自分の体がどれくらいのエネルギーを使っているか」を知ること。
例:50代女性の場合
50代女性・身長160cm・体重60kg・運動量が少なめの人の基礎代謝はおよそ1,200〜1,300kcal。 一日の活動量を加えると、必要カロリーは1,700〜1,900kcal程度になります。
これを知らずに、なんとなく「少なめに食べてる」と思っても、実際には必要量を超えていることも多いのです。今はネットで「基礎代謝 計算」や「必要カロリー 計算」と検索すれば、すぐに出せます。まずは“自分の数字”を知ること。これが第一歩です。
「ちょっとしか食べてない」その“ちょっと”に落とし穴
実際に食事を記録してみると、多くの人が気づきます。「意外と食べていた」という事実に。
“ちょっと”の例
- 子どもの残したご飯を一口
- 仕事の合間の飴玉やチョコ
- 夜、なんとなく口にするナッツやおせんべい
こうした“ちょっと”が積み重なると、1日200〜300kcalはすぐに上乗せされます。1か月で見ると、9,000kcal(=脂肪約1kg分)にもなるのです。
ですから、ダイエットの第一歩は「記録」。アプリでもノートでも構いません。食べたもの、飲んだもの、すべてを書いてみましょう。数字にしてみると、思わぬ気づきがあります。
1kgの脂肪は「9,000kcal」
1日あたりの目安
脂肪1kgを落とすためには、9,000kcalのマイナスが必要です。これを1か月(約30日)で減らすには、1日あたり300kcalのマイナスを作ることになります。
これは、ごはん1杯(160g)を減らすか、チョコレート2枚分を控える程度。あるいは、20分のウォーキングを加えるでもOKです。
大事なのは「1日で頑張りすぎない」こと。急激に減らすと、筋肉や骨密度まで落ちてしまい、結果的に代謝が下がってリバウンドしやすくなります。焦らず、「1か月で1kg」を目安に。確実に体が変わっていきます。
同じカロリーでも、太り方は違う?
消化で使われるエネルギーの違い
「同じカロリーなのに、パンだと太るのはなぜ?」そんな疑問を持ったことはありませんか?実は、食べるものの“中身”によって、消化・吸収に使われるエネルギーが違うのです。
- タンパク質:食べたカロリーの約30%を消化で使用
- 脂質:3〜5%程度しか使用されない
つまり、「同じ300kcalでも、肉や魚の方が“燃える力”を引き出す」ということ。さらに、食物繊維が多い野菜や雑穀は、消化吸収がゆるやかなので血糖値が上がりにくく、脂肪がつきにくいのです。逆に白いパンや砂糖の多いお菓子は、血糖値を急上昇させ、脂肪合成を促してしまいます。
「満足感」で食べると失敗する
満腹感より栄養バランス
更年期の体は、ホルモンの影響で“満腹中枢”が鈍くなりがち。「お腹が空いた」よりも、「なんとなく口寂しい」で食べてしまうケースも少なくありません。
ここで大事なのは、「お腹いっぱいか」ではなく「必要な栄養が足りているか」で判断すること。糖質・脂質・タンパク質のバランスを見直すと、自然に間食が減っていきます。
また、温かいスープや具沢山味噌汁を先にとると、胃が落ち着き、食べすぎを防げます。冷たい飲み物より、温かいもので体を“代謝モード”に切り替えましょう。
「代謝が下がる」は避けられない?
日常動作を筋トレに
いいえ、整えることはできます。確かに、エストロゲンが減ると筋肉量や代謝が落ちます。しかし、それは“絶対”ではありません。筋肉を使えば、代謝は必ず戻ります。
- 階段を使う
- 洗濯物を持ち上げるときに姿勢を意識する
- 買い物袋を持ちながらかかとを上げ下げ
こうした「ながら運動」で十分。筋肉が使われると、体温が上がり、エネルギー消費が自然に増えていきます。
「焦らないこと」がいちばんの薬
リバウンドを防ぐために
更年期以降は、体の変化がゆるやかだからこそ、焦るとリバウンドの落とし穴にハマりやすくなります。急激に痩せた人の多くは、同じ期間でリバウンドするといわれています。たとえば3か月で5kg落としたなら、また3か月で戻るという具合。
体は“短期間の変化”を危険とみなし、元に戻そうとします。だから、ダイエットは「スピード」より「安定」が命。体にとっての“安心できるペース”で続けることが、唯一の成功法則です。
記録する人は、成功する人
アプリでOK・「見える化」がカギ
「毎日記録している人」と「感覚でやっている人」では、成功率がまったく違います。研究でも、食事記録をつけている人の方が3倍以上ダイエットに成功しやすいというデータがあります。
アプリで食事を撮影するだけでもOK。カロリーが分からなくても、「見える化」することで自然と食習慣が変わります。
まとめ:理論はシンプル、続けることがすべて
進め方のステップ
- 基礎代謝を知る
- 必要カロリーを把握する
- 記録をつける
- 1日300kcalのマイナスを意識する
- 急がず、続ける
これだけで、1か月に1kg、半年で5〜6kgは確実に変わります。更年期は、体の“リセット期”。焦らず、自分の体と向き合う時間に変えていきましょう。
今日からできる小さな一歩
- 朝、体重計にのる(意識が変わる)
- 食べたものをスマホで撮る(記録になる)
- 夜に白湯を飲む(代謝を上げる)
- 1日3回、深呼吸する(自律神経を整える)
焦らず、比べず、淡々と。「ゆるやかに、でも確実に」——それが更年期のダイエット成功の処方箋です。
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