「なんとなく息苦しい」「深呼吸したくなる」はストレスだけが原因じゃない|医師が語る肺のSOS
ふとした瞬間に「息がうまく吸えない」「深呼吸しないと苦しい」と感じた経験はありませんか?現役産業医が「なんとなく息苦しい」「深呼吸したくなる」という症状の背景にある可能性を解説します。
「なんとなく息苦しい」「深呼吸したくなる」はストレスだけじゃない|医師が語る肺のSOS
満員電車の中、仕事中のデスク、あるいは夜の静かな部屋で、突如として息苦しさが襲ってくるなどの症状は、単なる気のせいやストレスのせいにされがちですが、実は見逃してはならない身体のサインかもしれません。
ストレスだけでは片づけられない肺のSOSに、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。
呼吸は無意識のうちに行っているため、普段はその大切さを意識することは少ないかもしれませんが、呼吸がうまくできなくなると、それは生活の質に大きな影響を与えます。
「最近、深呼吸しないと息が苦しく感じる」「大きく息を吸いたくなる衝動がある」という訴えは、外来でもよく耳にします。
もちろん、その背景にストレスや自律神経の乱れがあることは少なくありません。
精神的な緊張状態が続くと、交感神経が優位になり、呼吸が浅くなったり、過呼吸気味になることがあります。
しかし、こうした症状が毎日のように続く場合、呼吸器系の病気が隠れていることもあるのです。
まず注意したいのが、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患です。
これらは呼吸がしづらくなる代表的な病気で、息苦しさ、咳、痰といった症状を引き起こします。
また、間質性肺炎という病気も見逃せません。
これは肺の構造が炎症などによって硬くなる病気で、初期には軽い息苦しさや疲れやすさだけが出ることもあります。
さらには、肺血栓塞栓症など、急激に進行する病気もあるため、「最近息苦しさが強くなった」と感じる場合は、すぐに医療機関を受診すべきです。
また、意外に思われるかもしれませんが、心臓の機能低下や貧血も、呼吸困難を招く要因になります。
心不全では肺に水がたまりやすくなり、呼吸が浅くなりますし、貧血では血液中の酸素運搬能力が下がるため、体が「もっと酸素を吸いたい」と信号を出すのです。
つまり、「なんとなく息苦しい」という感覚は、肺だけでなく、全身の機能と関係している複雑なサインでもあるのです。
「なんとなく息苦しい」「深呼吸したくなる」ときの対処法とは?
では、こうした息苦しさに直面したとき、私たちはどう対処すれば良いのでしょうか。
まずは「身体的原因」を除外することが大切です。
大前提として、継続する息苦しさや深呼吸欲求がある場合は、一度きちんと医療機関で検査を受けることをおすすめします。
胸部レントゲンや血液検査、場合によっては肺機能検査を行うことで、隠れた疾患が明らかになることがあります。
特に、咳や痰、胸の痛み、動いたときに息切れが出るような場合は、自己判断せず受診することが大切です。
一方で、検査で身体的な異常が見つからず、医師から「ストレスによる過換気症候群」や「自律神経の乱れ」と診断されることもあります。
その場合、セルフケアとして以下のような方法が有効です。
深呼吸ではなく「腹式呼吸」を意識する
胸ではなくお腹を膨らませるようにして、ゆっくり吸って、長く吐くことを意識しましょう。
規則正しい生活を心がける
睡眠不足や食生活の乱れも自律神経を乱す原因です。
軽い運動やストレッチを取り入れる
血流や代謝が良くなり、気分転換にもなります。
SNSやスマホから距離を取る時間を作る
情報の過多も現代人にとってはストレス要因です。
心と体は密接につながっています。
ストレスにより体の不調が現れることもあれば、体調不良が気分の落ち込みを招くこともあります。
どちらの面も丁寧に見つめ直すことが大切です。
まとめ
「なんとなく息苦しい」「深呼吸したくなる」といった感覚は、一見些細に思えるかもしれませんが、身体からの大切な信号です。
ストレスや疲労だけでなく、肺や心臓、血液の異常など、背景にはさまざまな要因が隠れている可能性があります。
大切なのは、自分の感覚を「気のせい」で済ませないことであり、不安を抱えながら過ごすのではなく、医師に相談するという一歩を踏み出すことです。
ストレス社会の中で、私たちはつい「頑張りすぎてしまう」ことがあります。
だからこそ、息苦しさという身体のサインには、耳を傾けてあげてください。
それが、自分自身を大切にする第一歩になるはずです。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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