「パソコン作業で肩がガチガチ」“テレワーク肩こり”の医学的な対処法とは?医師が解説

「パソコン作業で肩がガチガチ」“テレワーク肩こり”の医学的な対処法とは?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-08-19

コロナ禍を経て、多くの企業で導入が進んだテレワーク。通勤時間がなくなり、自分のペースで仕事ができるようになった一方で、「以前よりも肩がガチガチになった」「慢性的な肩こりに悩まされるようになった」という声も多く聞かれます。これは、通勤という強制的な運動がなくなり、長時間同じ姿勢で作業を続けることによって引き起こされる「テレワーク肩こり」かもしれません。医学的な原因と、効果的な対処法について詳しく解説します。

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「パソコン作業で肩がガチガチ」“テレワーク肩こり”とは

私たちが肩こりを感じる主な原因は、首から肩、背中にかけての筋肉が緊張し、血行が悪くなることです。

特に、テレワークでは、以下のような要因が重なり、肩こりが悪化しやすい環境にあります。

1. 不適切な作業環境

会社では高さや角度が調整されたデスクや椅子を使用することが多いですが、自宅ではダイニングテーブルやソファ、ベッドの上などで作業することも少なくありません。

パソコンの画面位置
目線が下がりすぎると、首が前に倒れ、頭の重さを支えるために首や肩の筋肉に過度な負担がかかります。

椅子の高さ
椅子と机の高さが合っていないと、肩をすくめたり、肘が浮いたりして、不自然な姿勢になりがちです。

作業スペースの狭さ
十分なスペースがないと、キーボードやマウスの操作が不自然な角度になり、手首から肩にかけての筋肉に負担がかかります。

2. 運動不足

テレワークでは、通勤や社内での移動がなくなるため、一日の総活動量が大幅に減少します。

特に、肩甲骨を動かす機会が減ると、肩甲骨周りの筋肉が固まり、肩こりを引き起こしやすくなります。

3. ストレス

仕事のオン・オフの切り替えが難しくなったり、コミュニケーション不足になったりすることで、知らず知らずのうちにストレスを溜め込みがちです。

ストレス
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精神的なストレスは、自律神経のバランスを崩し、筋肉を緊張させやすくするため、肩こりを悪化させる要因となります。

これらの要因が複合的に作用することで、首や肩周りの筋肉は常に緊張した状態となり、血行不良を引き起こします。

血行が悪くなると、筋肉に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、疲労物質が蓄積されやすくなる結果、筋肉は硬く、重くなり、「ガチガチの肩こり」という状態に陥るのです。

“テレワーク肩こり”の医学的な対処法とは?

テレワーク肩こりを解消するためには、原因となる筋肉の緊張をほぐし、血行を改善することが重要です。

ここでは、医学的な視点から効果的な対処法を3つのカテゴリーに分けて解説します。

1. 物理的なアプローチ

モニターの高さを調整する
目線の高さにモニターの中心がくるように調整しましょう。ノートパソコンを使用する場合は、外付けモニターやパソコンスタンドを活用して目線を上げることが重要です。

椅子の高さを調整する
腕が自然に曲がり、キーボードを打つときに肩がすくまない高さに椅子を調整しましょう。

背筋を伸ばし、骨盤を立てる
椅子に深く腰掛け、背もたれをしっかりと使って骨盤を立てることで、背骨が自然なS字カーブを描き、首や肩への負担が軽減されます。

休憩をこまめにとる
1時間に1回は立ち上がり、軽いストレッチをしたり、遠くを眺めたりして、同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう。

2. 運動によるアプローチ

筋肉の緊張をほぐし、血行を改善するためには、ストレッチとエクササイズが非常に効果的です。

肩甲骨のストレッチ
肩甲骨は、肩こりと深く関連しています。両腕を前に伸ばして手の甲を合わせ、背中を丸めるようにして肩甲骨を広げます。次に、両腕を後ろで組んで胸を張り、肩甲骨を寄せるように動かします。これを繰り返すことで、肩甲骨周りの筋肉がほぐれ、血行が促進されます。

首のストレッチ
ゆっくりと首を前後に倒したり、左右に傾けたりして、首周りの筋肉を伸ばします。

ただし、痛みを感じる場合は無理をせず、ゆっくりと行いましょう。背骨の動きを意識した体操: 椅子に座ったまま、両手を頭の後ろで組み、背骨を左右にひねったり、大きく背伸びをしたりして、背中の大きな筋肉を動かすことも有効です。

3. セルフケアによるアプローチ

温熱療法
蒸しタオルやホットパックを首や肩に当てて温めることで、血行が良くなり、筋肉の緊張が和らぎます。お風呂にゆっくり浸かることも同様の効果が期待できます。

マッサージ
筋肉の硬くなっている部分を、優しく指圧するようにマッサージします。特に、肩甲骨の内側や首の付け根などは、念入りにほぐしましょう。ただし、強い力で押すと筋肉を傷つける可能性があるため、気持ちが良いと感じる程度の力加減で行うことが大切です。

まとめ

テレワーク肩こりは、不適切な作業環境や運動不足、ストレスなどが複合的に絡み合って引き起こされます。

この症状を放置すると、頭痛や吐き気など、さらなる不調につながる可能性もあります。

ガチガチになった肩を解消するためには、まずは自分の作業環境を見直し、正しい姿勢を意識することから始めましょう。

そして、こまめな休憩を挟み、ストレッチやエクササイズで筋肉を動かす習慣を身につけることが重要です。

もし、これらの対策を試しても改善が見られない場合や、痛みが強い場合は、整形外科など専門医療機関を受診することをおすすめします。

専門家による診断や治療を受けることで、根本的な原因を特定し、より効果的な対処法を見つけることができるでしょう。

日々の小さな工夫で、テレワークを快適に、そして健康的に続けましょう。

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