「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(4)父の介護認定は降りたものの、地域ごとに事情が違う!?
親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。
アルツハイマー型認知症に進行するだろうと言われた2024年春頃の父は、睡眠導入剤を止めたために徘徊もなく、物忘れが少しあるくらい。京都からたまに訪れるわたしの目には認知症があるのかもはっきりしませんでした。
ただ、どの程度のペースで進行していくかがわからないので、気持ちだけは焦る。とは言え、行政手続きは時間がかかるもの。2月の徘徊、3月末の認知症外来受診、4月末のアルツハイマーに進行するという診断と介護申請、5月の介護認定の調査。介護認定が降りたのは6月末のことで、実に4ヶ月を要しました。
父の介護認定は、「要支援1、2」より介護度が重い「要介護1」でした。自立歩行、着替え、食事、排泄などひとりでできますが、認知症は「進行性」なので、今後、よくなることはない。介護保険財政も逼迫するなか、それ以外の病気では介護度の判定結果が軽く出ることもあるそうですが、認知症の場合は、「要介護」がつくことがほとんどだと、その後、出会ったケアマネジャーさんには説明いただきました。
ただ、地域差はあるようです。同じ頃、お母さまに「アルツハイマー型認知症」の診断が降りた関西の読者の方の話ですと、認知機能の低下により、農道に落ちる自損事故を起こし、認知症薬をかかりつけ医から処方されているにも関わらず、介護申請を却下されたと言うのです。「要介護」の下の「要支援」さえ認定されなかったと聞き、わたしがケアマネさんに聞いた事情と違ったので、驚きました。同居のお父さまが畑もしているほどお元気だったこと、独身の彼女が実家の敷地の離れに住んでいたこと、彼女の職業が看護師だったこと。ポジティブな要素が多かったのもあるかもしれませんが、役所の家庭訪問では「自分でできるだろう」と言わんばかりの対応をされたとか……。

現在、お世話になっているケアマネジャーさんによると、介護度は、介護に関わっている1日の合計時間で1次判定され、その後、医師や看護師、介護職など専門家によって、審査会が行われて決まるので、家族が「見守りや声がけに時間を費やしていること」、「今後も心配な言動が続きそうなこと」を伝えないと、1次判定で介護度が軽くなってしまうのだそうです。よくあるパターンとしては、介護認定のための役所の調査の際、調査員の前でだけ、患者本人が「高齢者であっても、自分はしっかりしている」という感じで取り繕い、実情が伝わらないこと。玄関を出てから、本人には見えないところで、家族から調査員に困りごとを伝えることが重要だそうです。
わたしの両親が住んでいる自治体は、「東京の田舎」ではあるのですが、1年ほどお世話になってみて、行政も介護保険も機能している印象を受けます(現場のみなさんの努力もあると思いますが)。いくら困りごとを伝えても、介護施設やケアマネジャーが圧倒的に不足しているエリアでは認定をしたくてもできない事情が行政側にあるのかもしれません。また文化的に、家族による介護がまだ前提であることもあるでしょう。
→【記事の続き】「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(5)親の介護が必要になる前に、準備しておけることは? はこちらから。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
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