「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(5)親の介護が必要になる前に、準備しておけることは?

「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(5)親の介護が必要になる前に、準備しておけることは?
写真/野口さとこ
Saya
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2025-07-15

親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。

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親に「認知症ではないか」という疑いが出たら、通える範囲で、認知症外来を受診する。診断が降りたら、住んでいる自治体の役所で介護申請をすると、役所の調査員による家庭訪問がある。役所で会議があって、1〜2ヶ月で認定が降りる。これが介護認定の流れだということを説明してきました。

ただ、これは親が認知症になってからのこと。今、この記事を読んでいる「ヨガジャーナルオンライン」読者の方々は40代が多いとなると、まだまだご両親はお元気という方が大半でしょう。となると、以前のわたしのように、「今後、いったい何が起こるのか」と不安な方もきっと多いはず。「準備をしておきたい」と思うものの、何をどうしたらいいかもわからないですよね。

万一のことを両親と話しておけるのがベストですが、わたしの父の場合、死を圧倒的な不幸ととらえていて、自分の死にまつわる話をするのを嫌がっていました。つまり、永遠に若くありたいところのあるふたご座に太陽をもつ父にとって、年老いることや死ぬことは、シャドウだったわけですね。それでいて、男尊女卑が強く、自分がリーダーでいたいタイプ。さらに、認知症が発覚する前の数年は、どんどん頑固になっていて、実の娘であっても、主導権を渡すのも嫌があるところがあったので、わが家の場合は、「認知症になったら、どうするか」などを話すことはまったくできていませんでした。父の性質をよくわかっている娘たちにしても、これはその場になったら考えるしかないと腹をくくっているところがありました。

そんなわけで、何の準備もないままに介護体制づくりが始まったわけですが、ドクターの診断が降りるまではのろのろとしか進まないことを考えると、少しでも「おかしいな」と思ったら、早めに受診しておく。医療機関とつながっておけると安心なのは確か。受診へのハードルが高いのはわが家だけではないはずですが、今思うと、「人間ドック」的な感覚で、「きっと大丈夫だと思うけど、80代になったから、行ってみる? 」などと軽い感じで、明るく誘うのがよかったなと思います。

野口さとこ

70代までは元気だったとしても、80代になると急速に衰えてくることも多いもの。以前なら、何の問題もなかった電車での通院も、難しくなってきます。両親の家から通いやすい場所にある、評判のよい認知症外来を調べておくのもいいですね。

「介護の先輩の話を聞く」というのもよく言われますが、(4)でお話ししたように、自治体によって、まったく事情が違います。同じ都道府県でも、異なります。「同じ自治体か、同じ介護事業者を共有している近隣の自治体」に親がいる方からのお話でないと、意味がないかもしれません。東京在住だけれども、両親は別のエリアにいるという方などは、地元の友達や親戚のネットワークが頼りになるでしょう。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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