「頻尿・尿もれ」が続くのは加齢のせいではない?膀胱がん・糖尿病の初期症状かも…医師が解説

「頻尿・尿もれ」が続くのは加齢のせいではない?膀胱がん・糖尿病の初期症状かも…医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-06-27

頻尿や尿もれは、膀胱がんや糖尿病などの病気のサインかもしれません。医師が解説します。

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「頻尿・尿もれ」が続くのは加齢のせいではない?

「頻尿・尿もれが続くのは、年のせい」だと思っていませんか?

実は、それだけで片づけるのは危険であり、頻尿や尿もれが、膀胱がんや糖尿病などの病気の初期サインとなっている可能性もあります。

「加齢のせい」だけではない、頻尿・尿もれの原因のひとつに、「膀胱がん」があります。

膀胱がん

膀胱は、腎臓でつくられた尿を一時的に溜めておくための袋です。

場所的には下腹部の中央、恥骨のすぐ裏側にあります。

膀胱には、約500~700mlの尿を一時的にためて、ある程度の量になったら体外に出すという働きがあります。

尿道部分の周りには、尿道括約筋を締めることのできる筋肉があり、それらが正常に機能することによって普段尿が漏れるのを防いでいます。

通常では、膀胱に尿がたまってくると、その刺激が脳に伝わり、尿意を感じます。

そして、脳からの指令を受けて膀胱の筋肉が収縮し、さらに尿道を締める筋肉が緩むと、尿は尿道を通って体外に自然と排泄されます。

膀胱がんは、そんな膀胱にできるがんの総称を指します。

膀胱がんの約90%以上は膀胱の内部を覆っている尿路上皮にできる尿路上皮がんです。

尿路上皮がんは、がんが膀胱の壁にどのくらい深くまで及んでいるかを示す深達度によって、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類されます。

また、膀胱がんには、尿路上皮がんのほかにも扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどの種類もあります。

血尿が出なくても注意が必要であり、膀胱がんは、初期には「尿が近い」、「残尿感」などの軽い症状が出ることがあります。

膀胱がんの発症リスクが高い人としては、喫煙歴がある、50代以上、排尿時の違和感があるなどが考えられますので、気になる場合には、早めに受診してください。

また、加齢が原因ではない、頻尿・尿もれを引き起こす病気として、「糖尿病」が考えられます。

糖尿病

糖尿病という病気は、インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続き、網膜症、腎症、神経障害の三大合併症をしばしば伴うことが知られています。

糖尿病が疑われる際や糖尿病と診断された場合は、網膜の状態を調べる眼底検査、腎機能検査、腱反射、動脈硬化の程度を調べる検査などを必要に応じて受けることが推奨されます。

糖尿病はその発症要因から大きく1型と2型に分類されています。

糖尿病を発症すると空腹時の血糖値が高くなる、または食事摂取後の血糖値の下がりが悪くなるといった特徴的な所見が認められます。

主な糖尿病の原因は、血糖値を降下させる作用のあるインスリンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下したり、働きが悪くなったりすることで発症すると言われています。

喉の渇きや頻尿などの初期症状がある場合には、注意が必要です。

血糖値が高い状態が続くと、体が尿で糖を排出しようとするため、夜間頻尿になります。

頻尿と同時に、水分をとっても喉が渇くという症状も糖尿病のサインです。

最近、急にトイレが近くなった、夜中に何度も起きてしまう、尿意切迫感や尿もれがある、尿の色が濃い/血が混じる、喉の渇きや体重減少もある場合には、医療機関を受診して、相談しましょう。

膀胱がん・糖尿病について、受診が遅れやすい症状を医師目線で警告

頻尿・尿もれの裏には、「膀胱がん」や「糖尿病」が隠れていることもあります。

最近、「トイレが近くなった」、「ちょっと尿が漏れるようになった」などの変化を、年齢のせいだと自己判断して、症状を放置する患者さんは少なくありません。

頻尿
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実際には、重大な疾患の初期サインであることもあるため、注意が必要です。

膀胱がんの初期

例えば、膀胱がんの初期は、頻尿、残尿感、尿意切迫感など、「ありふれた排尿トラブル」から始まることがあります。

血尿が出ないケースも多く、特に女性では、膀胱炎と自己判断してしまう傾向があります。

膀胱がんでは、初期段階では、自覚症状が軽いため、進行してから受診されるケースが多いため、血尿がないからといって安心してはいけません。

早期の状態であれば、内視鏡治療で済む場合もありますし、いったん進行すれば膀胱全摘が必要になるケースも想定されます。

また、最近になって、よく水を飲むようになった、あるいは夜間によくトイレに起きる場合は、注意が必要です。

糖尿病の初期

糖尿病の初期に見られる頻尿のタイプとしては、夜間に何度もトイレに起きる、水をたくさん飲んでしまう、喉が異常に渇く、疲れやすくだるいなどが考えられます。

これらの症状を、「加齢」、「寝不足」、「疲れのせい」と捉えて、医療機関を受診せずに過ごしてしまう人が少なくありません。

糖尿病は、顕著な症状が出る頃には、すでに血糖コントロールが破綻しているケースが多く、病状を放置すると、神経障害・腎症・失明・動脈硬化による脳梗塞・心筋梗塞の発症リスクが高まりますので、格段のケアをすることが重要です。

まとめ

頻尿や尿もれがあった際には、「年だから仕方ない」と思い込まず、体のサインと受け取ってください。

これらの症状の背景には、膀胱がんや糖尿病など、思いがけない病気が隠れていることも考えられますので、早期発見・治療でQOLを守る一歩を踏み出しましょう。

医師として強くお伝えしたいのは、「何か変だな」と思ったら、年齢のせいにせず、必ず一度専門医療機関を受診してほしいということです。

「病気だと分かるのが怖い」と受診をためらう方もいますが、本当に怖いのは、気づかないままに病気が進行することです。

特に、排尿の変化は、最初のSOSのサインかもしれません。

ちょっとした違和感を見逃さず、早期の行動が健康寿命を守ります。

心配であれば、泌尿器科など専門医療機関に相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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