「二の腕が痛い...」もしかして肺がんかも?初期症状が現れにくい肺がんの、意外なサイン|医師解説


肺がんは早い時期に病変部を発見するのが難しいとされています。日常生活などにおいて自覚できる症状について医師が解説します。
二の腕が痛い...もしかして肺がんかも?
肺の上部である肺尖部(はいせんぶ)に肺がんができた場合には、二の腕が痛くなるなど、様々な症状を引き起こす可能性があり、こうした状態をパンコースト腫瘍と呼んでいます。
パンコースト腫瘍の場合は、肺がんが肺尖部から周囲胸壁に達して、その部位の神経を侵すことによって、二の腕の内側が痛くなり、時に胸や肩の痛みも出現します。
がんの進展に伴って、近傍の交感神経が侵されると、まぶた(眼瞼部)が落ちて目が細くなる、あるいは汗が出なくなるといった自律神経の異常症状が認められることもあります。
通常、パンコースト腫瘍や肺尖部にできる肺がんは発見されにくいと考えられます。
また、上大静脈の近くにあるリンパ節や上大静脈の血管に肺がんが広がると、上半身の血液が心臓に還流できず、上半身のむくみや息切れなどの症状をきたす可能性があります。
肺尖部から腕の神経にがん病巣が広がると、二の腕の痛みやしびれ、上肢の筋力低下などの症状が現れることが知られていて、こうした状態をパンコースト症候群と呼んでいます。
肺がんとは
肺がんの発症リスクとなる要因としては、自分や家族の喫煙習慣、親族や親せきに肺がんを含めたがん疾患にかかったことがある(家族歴)、労働環境などにおいて肺がんのリスクを高める化学物質(石綿など)と接触する機会が多いなどが考えられます。
一般的に、肺がんは、病変を早期発見できれば、手術でがんの病巣を切除することにより、根治を目指せるがんですが、がんの初期症状が現れにくく、早い段階で見つけるのが難しいともいわれています。
肺がんは、初期症状が現れにくいがんであり、肺がんの自覚症状に気づいたときには、すでにがんが進行していることもあります。
そのなかでも、肺がんに関連する具体的な症状には、咳、血痰、息苦しさ、胸の痛み、発熱、倦怠感などがありますし、特に、がん細胞が肺尖部にまで進展している場合には、二の腕が痛くなったり、上肢がしびれて脱力症状を伴う可能性があります。
肺は、位置的に、肋骨と肋間神経に囲まれているので、肺にあるがん細胞が進展して、大きくサイズアップすることで、二の腕や胸の痛み、あるいは背中の痛みを自覚することも考えられます。

適切に治療しないと、がん細胞は無秩序に増殖していくので、肺の近くの臓器を圧迫したり、血液やリンパの流れに乗って、遠隔の臓器に転移することも検討されます。
がん細胞が肺尖部にまで及び、腕の感覚などを支配している神経に浸潤している場合には、二の腕が痛くなったり、手がしびれることも考えられます。
また、肺がんが大きくなって、近傍リンパ節に転移すると、心臓に還流して戻ってくる部分の「上大静脈」という血管が圧迫されることになって、顔がむくむ原因になります。
これらの症状に気づいた際には、肺がんによる症状かどうかを知るために、精密検査を受ける必要があります。
自分だけですべて判断することはできませんので、体の異変や何らかの症状が続く場合は、早めに呼吸器内科など専門医療機関を受診して、相談することが重要です。
まとめ
肺がんは、肺から発生するがんの総称です。
一般的に、肺がんは症状の出にくく、早い時期に病変部を発見するのが難しいと認識されています。
肺がんの代表的な症状としては、咳や痰がありますが、それ以外にも、自覚症状として、二の腕の痛みやしびれ、肩や背中の痛み、顔の腫れなどが出現するタイプもあります。日常生活などにおいて、二の腕の痛みがあって、症状が長引いたり、悪化している場合には、肺がん(特に、パンコースト腫瘍)を疑って、適切なタイミングで、呼吸器科など専門医による診察を受けましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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