旅はメキシコから始まった｜6年間世界を旅した夫婦の記録Vol.2

これぞメキシコ！死者の祭り

毎年11月2日。死者の魂が帰ってくるというメキシコの祝祭「死者の祭り」（ハロウィンとは別物です）。特に祭りが盛大に祝うと言われる「オアハカ」という街に私たちはやってきました。死者を迎えるというと日本のお盆のようなものですが、その様子は随分と違っていて愉快。とにかくバスを降りた瞬間から、街中がカラフルな骸骨だらけ。

街中の噴水。噴水前にカラフルな服を着ているのは骸骨です。祭りのメインの花マリーゴールドを街中に散りばめられていて、街全てがまばゆい華やかさ。
ここに来るまでは「骸骨かざる祭り？なんて悪趣味なのー」と言っていたのが、実際その場で見ると、えらく可愛い。ひょうきんで、愛らしくて、どこか憎めない。そう、メキシコでは骸骨はみんな大好きな「愛されキャラクター」。

死や、骸骨に対して、暗いイメージを持っていない。それって大きなカルチャーショック。国が変われば死の概念も変わるということ。

あっという間に骸骨の虜になった私達。「ねえ、この骸骨一緒に踊れるよ！」「こっちなんて骸骨がギター弾いてる！」と二人してキャッキャ町中の骸骨を見て回りました。

そしてメインは夜。町中お化けに仮装した人でごった返す。というか、仮装した人しかいない。老いも若きもみんな仮装してる。

街が全てこんな状態。

「あー、これは私達も仮装してこればよかったねー」と振り向くと、「いやいやいや、写真映えするから、撮るだけでもかなり楽しい！」と鼻息荒くバシャバシャ撮影しているダンナ。あまりにも張り切りすぎて、私のことを忘れて、たまにいなくなり慌てて探すこと続出。

さて、この集団が向かう先はメイン会場という名のお墓。お墓といえば夜は行ってはいけないおどろおどろい所。なんなら人魂が飛んでいてもおかしくないお近づきになりたくない所のはず…なのが、私たちがついた真夜中の墓地は、「え？ここ遊園地ですか？」と思うほど一大アミューズメントパークになっていました。

マリーゴールドで綺麗に飾られた墓跡。ロウソクを持ってお祈りしている人々。その横で白いウェディングドレスときたお化けの女の人が墓地に座っていて、その隣の墓では骸骨の格好したおじちゃんたちが「サルー！（乾杯）」と叫んでテキーラをガバガバ飲んでいる。バックミュージックは鼓笛隊バンドの人達が大音量でガンガン音楽を奏でていて、その周りを皆で踊る。ついでに電飾ピカピカの観覧車やメリーゴーランドもトッピング。

一言でまとめるなら、カオス。

お墓のイメージが一気に変わりました。こんな愉快なお墓参りってあるんだ...ボーゼンとしている私たちを見て、陽気な骸骨のおじさんたちが「ほら、こっちこっち！飲みなよ！」と手招きしてテキーラを渡してくれます。それならと私達も大声で「サルー！」といい飲む。そんな声もかき消されるほど周りは賑やか。
「日本では、死者を祈るのに静かにお参りするだけなんだよ」と骸骨おじさん達に言うと、「うん、そういうのもいいんじゃないか。俺たちの国はそういう時思いっきり楽しくお参りするのさ。お墓の人も楽しい方が帰って来た甲斐があるだろう。サルー！」とまだまだ飲む。もう、本当に楽しそう。イメージしてたおおらかで明るいメキシコのイメージそのものがここにありました。

一年に一度の「死を思う時間」を心からみんな楽しんで過ごし、笑い、飲み、歌い、踊り、死者の為に祈っているーーーあの世もこの世も楽しいって、なんてステキな日なんだろう。私も死んだらこんな風に皆に楽しんでお墓参りしてもらいたいなーなんてことをテキーラの効いた頭でぼーっと考えながら、お祭りの夜は更けて行くのでした。

旅する鈴木 profile
旅の様子を伝える映像ブログ「旅する鈴木」主宰。映像作家の夫と、ヨガインストラクターの妻。第18回文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出されたほか、Google Android TVCM「見せたい写真、パッと出る篇」など、TVやラジオ、雑誌など各種メディアにも多数出演。発表作品『World Timelapse(DVD/Blu-ray)』（KADOKAWA）、『Ta Bird Books 鳥のように世界を旅するパラパラPHOTOブックシリーズ』（いろは出版）

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