米テキサス州で感染拡大!はしかの治療に『ビタミンA』が有効?予防はできないが回復を助ける可能性


米テキサス州で発生しているはしかの大規模な感染拡大を受け、米合衆国保健福祉省(HHS)がビタミンAの摂取を推奨する声明を発表した。これまでに200件近い感染例が報告され、少なくとも2人が死亡している。専門家は、ビタミンAが重症化を防ぐ可能性があると指摘する一方で、はしかを予防する手段としてはワクチン接種が不可欠であると強調している。
ビタミンA、はしかの重症化を防ぐ?
ビタミンAは、免疫機能を強化し、視力の健康を保つ働きがあることで知られている。特に栄養不足の子どもたちの間では、ビタミンAの不足が感染症の重症化を招く要因となることが指摘されており、世界保健機関(WHO)も発展途上国においてビタミンA補給を推奨している。HHSのロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は、「ビタミンAは、はしかに感染した際の死亡リスクを下げる可能性がある。特に栄養不足の子どもたちにとっては重要だ」と述べ、感染拡大の中心となっているテキサス州ゲインズ郡にビタミンAサプリメントの供給を開始したことを明らかにした。研究によると、ビタミンAの補給ははしかによる死亡率を最大62%低下させる可能性があるとされる。特に1980年代から1990年代にかけて、サハラ以南のアフリカ地域で実施された臨床試験では、ビタミンAがはしかの重症化を防ぐ役割を果たしたことが確認されている。しかし、これはビタミンA欠乏症が一般的な地域でのデータであり、アメリカのような先進国で同じ効果が期待できるかどうかは未だ不明だ。

ビタミンAは肝油や卵黄、野菜、乳製品、魚などに豊富に含まれる
米国や日本などの先進国では、ビタミンA欠乏症の割合は非常に低い。ハーバード公衆衛生大学院のクリストファー・サドフェルド教授によると、「米国の国民健康栄養調査によれば、アメリカでビタミンAが不足している人は1%未満」とのことだ。そのため、健康な子どもや成人が過剰にビタミンAを摂取することは推奨されていない。ビタミンAは肝油(魚の肝臓由来のオイル)や卵黄、緑黄色野菜、乳製品、魚などに豊富に含まれており、通常の食事を通じて十分な量を摂取できる。クリーブランドにあるケース・ウェスタン・リザーブ大学の感染症専門医エイミー・エドワーズ博士は、「ビタミンAは体内に蓄積されるため、毎日摂取する必要はない。数日に一度、ビタミンAを含む食品を摂れば十分」と説明する。

ビタミンAは治療薬ではなく、補助的な対策
はしかの治療薬は現在のところ存在せず、症状を和らげるための対症療法が中心となる。全米感染症財団(NFID)は、ビタミンAを入院患者の補助療法として推奨しており、特に視覚障害や合併症のリスクがある重症例では有用とされている。ただし、健康な人が予防目的で摂取することには慎重な姿勢を示している。「ビタミンAの過剰摂取は、肝障害や頭痛、吐き気、めまいなどの副作用を引き起こす可能性がある」とサドフェルド教授は警告する。規定量を服用する分には問題ないが、特に妊娠中の場合はビタミンAの過剰摂取は胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、医師の指導なしに高用量を摂取するのは避けなければいけない。
最も有効な予防策はワクチン接種
専門家らは、ビタミンAの有効性を認めつつも、はしかを予防するためにはワクチン接種が最も重要であると強調する。現在、アメリカでは2回のはしかワクチン(MMRワクチン)の接種が標準的な予防策となっており、これにより感染を防ぐ効果が約97%に達する。パッツィー・スティンチフィールド看護師(NFID前会長)は、「ビタミンAは酸素補給のようなもので、病気そのものを治療するわけではない。はしかを予防する唯一の確実な方法は、適切なワクチン接種を受けること」と述べている。

出典:
Can Vitamin A Help Manage Measles? What We Know (and What We Don’t)
RFK Jr. Recommends Vitamin A, Cod Liver Oil Amid Growing Measles Outbreak
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