「耳の後ろが腫れている…」を放置してはいけない理由|注意したい〈リンパ節の腫れ〉と隠れた疾患とは
見逃せない疾患が隠れている可能性もある危険なリンパ節の腫れについて、医師が解説します。
放置してはいけない、注意したいリンパ節の腫れとは?
リンパ節の腫れをきたす疾患は様々ありますが、特に耳の後ろが腫れている際に注意する必要がある疾患のひとつに、「悪性リンパ腫」があります。
リンパは身体の免疫機能で重要な役割を果たしていますが、その免疫機能を司るリンパも「がん」になることがあるのです。
リンパのがんを「悪性リンパ腫」といい、悪性リンパ腫になると身体にさまざまな体調不良を引き起こすのです。
悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球ががん化する病気です。
主にリンパ節、脾臓、扁桃腺などのリンパ組織に発生するのみならず、胃、腸管、甲状腺、肺、肝臓、皮膚、骨髄、脳を含めてリンパ組織以外の様々な部位にがん病変が発生します。
悪性リンパ腫は、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどよく耳にする癌に比べると、患者数は少ないといわれています。国立研究開発法人国立がん研究センターによると、2022年に悪性リンパ腫に罹る患者数は男性が19,900人、女性が17,200人、合計で37,100人が罹患するといわれています。
悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などにより50種類以上に分類されており、それぞれの症例で症状や治療法が異なります。
悪性リンパ腫にはホジキンリンパ腫と呼ばれるものと、非ホジキンリンパ腫と呼ばれるものがあり、非ホジキンリンパ腫のほうが早期発見をしてもやや死亡率が高い傾向にあります。また、非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫の2種類が存在します。非ホジキンリンパ腫は、病状の進行速度によって進行が非常に遅い低悪性度のタイプから、進行が急激で早急な治療が必要な高悪性度の症例までケースバイケースです。
危険なリンパ節の腫れに対する対処法とは?
悪性リンパ腫は、ほかのがんに比べると治療をすることで高い確率で寛解状態になります。
悪性リンパ腫の治療は悪性リンパ腫のタイプや病期によって異なっており、多剤併用の化学療法や造血幹細胞移植を実施する際にはある程度患者さんの身体的負担に繋がります。
悪性リンパ腫の種類によっては、緩徐に進行するものがあり、その際には積極的な治療をせずに慎重に経過観察することもあります。
悪性腫瘍が全身に波及していない早期の段階では、がんに放射線を照射して病変を縮小させる放射線療法のみで治療を行う場合も経験されます。
がん病巣がさらに広がっている悪性リンパ腫に対する治療は、抗がん剤や分子標的治療薬などを用いた薬物療法を実践します。化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療など、がん治療をしっかり受けることで治癒を目指せます。
ただし、悪性リンパ腫は再発することや転移することが多く、完全に治ったかどうかを診断することが非常に難しい病気です。そのため、症状が改善して、悪性リンパ腫が治ったとされた場合も、長期にわたって経過観察を行う必要があります。
まとめ
悪性リンパ腫は種類によって好発年齢が異なり、子供から高齢者までどの年代の方も罹る可能性があります。
病気を早期発見・早期治療するための定期検診や倦怠感、発熱、耳の後ろが腫れてリンパ節が腫脹しているといった症状がある場合は、すぐに専門医療機関を受診して精密検査を受けるなど確実に対応しましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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