「めまいが続く…」を放置してはいけない!注意したい〈めまい〉と隠れた疾患とは|医師が解説

 「めまいが続く…」を放置してはいけない!注意したい〈めまい〉と隠れた疾患とは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-09-21

放置してはいけない危険なめまいについて、医師が解説します。

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放置してはいけない、注意したい危険な〈めまい〉と隠れた疾患とは?

めまいをきたす疾患は、様々ありますが、特に注意する必要がある疾患のひとつに、「椎骨動脈解離」があります。

私たちの脳に栄養を送るための血管動脈として、左右の頚動脈と脳底動脈の3本の太い血管があります。

左右の頚動脈は左右の大脳に栄養し、脳底動脈は主に頭の後ろ側にある小脳や脳幹というところに血液を送っています。

脳幹は非常に重要な部分で、大脳からの神経を束ねまとめて脊髄神経に送る場所であり、意識の中枢がある場所であり、そして心臓や肺を動かす司令部分でもあります。

また、私たちの五感である目や耳、口を動かす脳神経の核がある重要な場所でもあります。

特に、大事な脳幹を栄養する脳底動脈は1本しかありませんが、そこに流れ込む血管は左右2本あり、それが「椎骨動脈(ついこつどうみゃく)」です。

首から脳に血液を送っている動脈は2対あり、首の前側にある頚動脈、首の骨の中にある椎骨動脈です。

椎骨動脈は逆Yの字状に首の左右に一本ずつあります。

脳や全身の動脈どこででも起きますが、首の後ろから脳幹に流れる椎骨動脈で起きるものを「椎骨動脈解離」といいます。

動脈が膨らんでこぶ(解離性脳動脈瘤)ができ、そのまま破裂することで、くも膜下出血を起こす、または詰まることで脳梗塞(こうそく)を起こして、めまい症状を発症する場合があります。

脳の血管
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特に、椎骨動脈解離は首に強い負担が掛かると起こりやすく、例えば整体やカイロプラクティック、美容院でのシャンプーなども発症の引き金になります。

また、首を激しく動かすスポーツや首に衝撃がくるスポーツ、交通事故によるもの、首をぶつける場合でも発症する可能性があります。

無理な負荷は、解離を引き起こします。

ただし、必ずしもそれらしい発症原因があるとは限らず、本人に自覚がなくても引き起こされる疾患なので、思い当たる節がない場合も想定されます。

椎骨動脈解離の場合、解離を起こした側だけが痛むケースが多く、代表的によく見られる初期症状は、うなじや後頭部の強い痛み、めまいなどが挙げられます。

椎骨動脈解離は40代から50代が好発年齢ですが、若年者にも起こります。

左右片側だけの痛みである事が特徴であり、痛みは通常の頭痛よりも強い傾向にあり、長期間痛みが続きます。

椎骨動脈解離はくも膜下出血も脳梗塞も発症する可能性がありますし、発症した時の症状の程度も様々なので、頭痛やめまいを急に感じたら放置せずに専門医療機関でMRI検査を受けることをお勧めします。

危険なめまいに対する対処法とは?

椎骨動脈解離は、血管の壁が剥がれる病気です。

解離を起こすと下記のいずれかで発症します。

  1. 血管が腫れ上がりくも膜下出血を合併する
  2. 血管が狭くなり脳梗塞を合併する
  3. 偶然にも運良く頭痛のみで収まる

椎骨動脈解離だけで済めば頭痛が徐々に治まり、解離した部分も自然治癒します。

軽症の際には、数ヶ月で大部分が自然治癒しますが、一部の例で合併症が発症します。

くも膜下出血発症は大部分が生命に直結する状態になりますし、脳梗塞を合併した際には、延髄と小脳に脳梗塞ができて、温痛覚が消失(温かいものを温かいと感じない)、痛みが感じない、ふらつきなどの症状が出ます。

椎骨動脈解離が必ず手術が必要となるわけではなく、自然修復することもあるため、出血や梗塞がなく、発症後の画像追跡で離部の拡大傾向がなければ基本的には血圧コントロールによる経過観察となります。

椎骨動脈の裂ける場所や程度によっては、裂けた血管が詰まって脳に血液を送れなくなる場合があります。

また、解離した場所から血栓と呼ばれる血の固まりが血管の中を移動して末梢血管を閉塞したりして、脳梗塞を起こします。

脳梗塞を発症すると、めまい、運動麻痺や言語障害や嚥下障害などが出現します。

従来は、脳卒中を起こして発見される椎骨動脈解離が多かったのですが、最近は精密な脳の検査を早期にすることが可能になり、軽症の段階で発見される患者例が多くなっています。

椎骨動脈解離の典型的な症状としては、めまい以外にも、左右いずれかの頭の後ろ、首の痛みを突然感じるところから始まりますが、なぜか右側の方が多いとされています。

解離が継続している間は強い痛みが持続し、その後血管腔が狭窄を起こすことで、脳への血液の流れが減り、意識障害やめまい、嘔吐、手足の麻痺などの脳梗塞症状が出現します。

椎骨動脈解離を発症した際には、できるだけ血圧を上げないようにして解離が進行にしないように治療して、脳梗塞が起こっていないかをMRI検査でこまめに調べていくことが重要です。

まとめ

これまで、放置してはいけない、注意したい危険なめまい症状と侮ってはいけない隠れた疾患などを中心に解説してきました。

椎骨動脈解離を生じる原因はよくわかっていませんが、整体やカイロプラクティックでの首の過度な動き、美容院でのシャンプー後、スポーツ、交通事故などにより生じたとの報告があります。

血管の解離は血管内膜が裂けたことで、血流が内膜と中膜ないしは中膜と外膜の間に流れ込む事によります。

椎骨動脈解離に伴うめまいを自覚する際には、専門医療機関で適切な治療を受けることをお勧めします。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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