「寝れば治る」と安易に考えないで!朝まで様子見してはいけない【脳梗塞】の意外なサイン|医師が解説
いつもならできているようなことが夜になってできないことに気づいた…でも「寝れば治るだろう」「朝まで様子を見よう」そんなふうに思わない方が良い場合があります。もしかしたら脳梗塞のサインかもしれないからです。医師が解説します。
体の片側が動かせないなら要注意!
脳の血管が血栓などで詰まり血流が悪くなることで、脳血管が細くなって脳細胞に障害が起こって様々な症状を呈する病気が脳梗塞です。
高齢者が寝たきりになる原因の多くを占める脳梗塞は、初期段階での早期治療を行うと共に発症予防することが非常に重要なポイントであると言われています。
脳梗塞では、「腕」「脚」「顔」などの部位の片側に麻痺(まひ)が起こります。
「腕」に麻痺が出た場合は、手のひらを上に向けて両腕を前に伸ばすことで、脳梗塞による症状かどうか、素早くチェックすることができますし、麻痺が出ている腕は、力が入らないため、手のひらが内側に向いて、腕が下がってきます。
「脚」に麻痺が出た場合は、麻痺のある側の脚に力が入らず、体が傾いてうまく歩くことができません。
「顔」に麻痺が出た場合は、本人はほとんどわかりませんが、いつも顔を合わせている家族などが見れば、いつもと顔が違って見えます。
体の片側が動かせない場合には、脳梗塞かもしれませんので要注意です。
思うように話せなかったら要注意!
脳梗塞は、いわゆる危険因子を持った方に起こりやすいのですが、その危険因子にはいくつかの要素があり、脳梗塞の主なリスクファクターは高血圧、糖尿病、心房細動です。
脳梗塞は脳の血管が詰まることが原因で起こり、その原疾患でもっとも多いのは高血圧であると考えられています。
一般的には、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば、「高血圧症」と診断されることからも、最高収縮期血圧が140mmHg以上を上回ったら脳梗塞の発症リスクが高くなります。
また近年では、糖尿病の増加に伴って、アテローム血栓性脳梗塞の発症数が増えてきており、血糖値が高い状態が続くと血液中に多量に存在するブドウ糖が血管の壁を傷つけることで、動脈硬化が悪化して脳梗塞などの病気の発症リスクも高くなります。
脳梗塞では、「呂律が回らない」など言語障害の症状が出る場合があります。
「今日はいい天気です」など、短い文章を繰り返して発音してみます。言いにくかったり、途中の言葉や語尾が抜けたりしますし、思うように言葉が出てこない、言っていることが理解できないなどの「失語症」も起こる場合があります。
たとえば、「めがね」などを指差して「これは何ですか?」と質問されたとき、「めがね」と答えられないこともあります。
思うように話せない場合には、脳梗塞かもしれませんので要注意です。
見え方がおかしかったら要注意!
脳梗塞は突然に起こる病気であり、かかってからしまったと後悔しても手遅れですので、健常人でも普段から脳梗塞を予防しておく方法を知って身に付けておくことが重要です。
脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病は動脈硬化を進展させますので、脳梗塞の発症や再発を予防するために、高血圧や糖尿病を罹患している場合には疾病の治療を行うとともに、常日頃の生活習慣を見直すことも重要な観点となります。
脳梗塞では、両目で見ても、左右どちらかの目だけで見ても、同じ側の視野の半分が欠けてしまう症状が出現することがあります。
単純な目の病気と勘違いして、眼科を受診してしまうケースもありますが、これは脳梗塞の症状なので適切に治療を受けることが重要です。
見え方がおかしい場合には、脳梗塞かもしれませんので要注意です。
まとめ
これまで、夜に異常な症状があれば要注意であること、脳梗塞の意外なサインを見逃してはいけないことなどを中心に解説してきました。
脳梗塞は、初期段階での早期治療を行うと共に発症予防することが非常に重要なポイントであると言われています。
体の片側に力が入らずに脱力する、言葉が思うように話せない、物の見え方がおかしいなどの症状を自覚する場合には、脳梗塞を発症している可能性がありますので、特に注意を要します。
脳梗塞を疑う症状が現れたときは、迷わずに救急車を呼び、神経内科や脳神経外科など脳卒中の専門医がいる医療機関に搬送してもらいましょう。
特に、夜間に軽い症状が現れているような場合、「寝れば治る」と、朝まで様子を見てしまう場合が多くありますが、命に係わる病気が隠れている可能性もあるので、ためらわずに救急車を呼びましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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