今こそ心に『GALS!!』のギャル哲学を! #ルッキズムひとり語り Vol.7

 今こそ心に『GALS!!』のギャル哲学を! #ルッキズムひとり語り Vol.7
前川裕奈
前川裕奈
2024-04-16

SNSや雑誌、WEB、TV、街の広告には「カワイイ」が溢れている。けど、その誰かが決めた「カワイイ」だけが本当に正義なの? セルフラブの大切さを発信する社会起業家・著者の前川裕奈さんがオタク的に綴る、ルッキズムでモヤっている人へのラブレター。

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「自分らしく生きるってなに?」

「自分で自分をもっと好きになりたい」

セルフラブをテーマとしたアパレルブランドを運営していると、こういった相談も度々受けるようになってきた。実際にスマホを開けば「”モテる”髪型特集」「”彼氏に愛されるために”脱毛」と、煽り商法とルッキズム全開ワールドでもううんざりだよね。自分に自信がなくなりそうになった時、エネルギーが必要になった時、「ギャル哲学」に触れることを一つの特効薬として処方したい。 

金髪、ルーズソックス、日焼けした肌に厚底ヒールで渋谷を闊歩する「平成ギャル」。一世を風靡したかつての平成ギャルの存在は、今の大人たちにとっては懐かしいのではないだろうか。当時、彼女たちが主役の代表漫画といえば、『りぼん』で1999年から2002年まで連載していた『GALS!』(心の扉が開く…!)。そして、その『GALS!』がびっくりマークを増やして『GALS!!』として令和に続編として戻ってきた。きっとそれは今を生きる私たちこそギャル哲学を必要としているからではないだろうか。主役の寿蘭ちゃんのギャル哲学による数々の名言が、現実世界を生きる私たちにハッとした気づきを与えてくれることがある。

たとえば、彼氏に愛されているか不安に思う友人に対しては、

彼氏から自信をもらいたいとか輝かせてもらいたいとか思ってたら、そりゃいつまでたっても自信なんてもてねーだろー(中略)今を楽しく生きて自分から輝いていこうぜ!それがギャル道ってもんだろ!!  (『GALS!!』1巻より)

自分の価値を証明してくれる数字(ランキング)や肩書きにこだわる友人には、

おまえの価値は他人が決めるもんじゃねーだろ、おまえが自分を愛してて自分の価値をちゃんとわかってりゃ十分じゃん  (『GALS!!』2巻より)

『GALS!!』2巻

ちょ、ギャル哲学最高すぎない??

彼女の言葉には、形に見えない不安要素を一撃して視界を晴らしてくれるパワーがある。正論といえば正論であり、けど忙しない現代社会を生きる私たちは、そんな正論を忘れてしまいがち。寿蘭の数々の名言によって、周りも次第に変わっていき、自分に自信を持ち始める。そしていち読者としても、言葉のビタミンをもらえた気持ちになれる。

彼女のような王道平成ギャルはもうあまり見かけなくなってしまったものの、「ギャル」という存在はどの時代にも、形を変えながらも常に健在だ。自分たちの好きな格好をして、”自分サイコー”の精神。最近では、「ギャル」の定義はもっと広範囲になってきたように感じる。見た目どうこうよりも、陽のエネルギーの塊であり、良い意味でこだわりも強く、自分を貫いている。

令和のギャルたちは、誰かカリスマ的存在を目指しているわけではなく、それぞれが自分にとってのカリスマであるようにみえる。そして、漫画キャラだけでなく、タレントや文化人でもギャルは支持率が高い。どんな人であれ、一般的に「こうであるべき」とされている価値観に合わせる必要はない。自信をもって、「自分を貫く」。そんな「ギャル哲学」を体現して生きている彼女たちは、かっこよく、社会の生きづらさをやっつけてくれる正義のヒーローにすら見えてくる。ギャルたちから元気をもらえるのは、派手なルックスだけではなく、もっと内面的なものなのだろう。

自分らしくいられない、自分軸がぶれそう、そんな悶々とした時こそ脳内でギャルピースしながら思い出したい、意気揚々としたギャル哲学を。

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前川裕奈

前川裕奈

慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。 独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にフィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、様々な社会課題について企業や学校などで講演を行う。趣味は漫画・アニメ・声優の朗読劇鑑賞。著書に『そのカワイイは誰のため? ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。



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