ハワイのヨガティーチャーが語る、妊娠と出産とヨガ

 ハワイのヨガティーチャーが語る、妊娠と出産とヨガ
Yoga Hawaii Magazine
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私のヨガのリズムは、妊娠が分かると急速に変化した。激しい吐き気でほぼ2か月間一日中寝込んだ。トーストと塩味のクラッカーしか食べられなかった。不快な症状のまますべてのヨガクラスを教えていた。きついヨガウェアを着ると、微妙な体形の変化でさえ違和感があった。アーサナのプラクティスから切り離されて、計り知れない喪失感とフラストレーションを感じた。そのとき『アートマン』と『マヤ』を思い出した。ヨガは内省のプラクティスであるべきで、幻想のベールを取り除き、本当の自分との結び付く機会なのだ。

だから私はビーチに行った。肌に太陽、髪に風、澄み渡った潮風を体内に感じた。日の出と日没の頃に行き、時には海に入り、時には砂浜にただ座っていた。ヨガスタジオにはいなかったし、アームバランスや深く後屈をしているわけではなかったが、私の周囲と内在する美しさで、私はその瞬間に存在することができた。私は自己認識、環境、内なる光の瞬きに応じて、新たな種類の信頼を発展させ始めた。吐き気が最終的に収まったとき、アーサナのプラクティスを再開した。状況が変わるにつれて、それに適合した。忍耐と身を委ねることが新たな状況に新しい意味を加えてくれた。

ヨガの非現実的な基準(私が考えたこと)を維持しようとしなくなったので、身を委ねることで妊娠期間を楽しめるようになった。私の体に期待や要求はしなかったし、何回かホット・パワー・ヴィンヤサのクラスや長いハイキングに挑戦したが、それはごくまれなことだった。ほとんどの夜は家にいて、深い『陰』のポーズで、ピローやブロック状でバランスを取り、体内で成長する小さな魔法のボールと絆を結び、長く安定した呼吸をしていた。いくつかの身体的な変化に折り合いをつけるのは容易ではなかったけど、全体的には体ができることにいつも驚いていた。

現在、息子を出産して6か月が経ったが、とても多くのことが変化した ― 私の生活のほとんどは新たな役割と責任に費やされている。出産後の回復には時間が掛かり、かつて私が知っていたアーサナのプラクティスにすぐに飛び込みたいと駆り立てられるような感情を心に抱いたが、私に許された経験を楽しむ時間を取り、体が回復するために必要な時間を与えることは、すべて素晴らしい過程なのだと理解していた。それを考えると、『新米の母親』と冒頭の『本当の自分』の正体の距離は気が遠くなる程に感じたが、現実にはそれらは同一のものだった。『澄んだ湖』の表面に新しい人生の波紋が形成され、だんだん大きくなり、時間のみがそれらを穏やかにし、落ち着かせる。

そのうちに幻想を投げ捨てる方法を見つけた ― 『マヤ』のことだ。朝のプラクティスは、今や息子にミルクを飲ませ、くつろぐセッション、プラーナヤーマ(呼吸)を行う機会と『今この場』を楽しむことで構成されている。小さな赤ちゃんのつま先、指の爪、瞳の輝き、唇の震えに気を払っている。この瞬間にいることに全力を傾け、息子がミルクを飲み終わるまで急がないようにした。息子は私よりもプラーナヤーマが上手いので、彼に呼吸のリズムを教えてもらっている。今や彼の3回の呼吸が私の一呼吸に等しいことを知っている。このようなはっと悟る瞬間を幾度か経験して、確かに、神に近付いたと感じた。息子が昼寝をしている間は、単に呼吸して感じてじっとするダウンドッグを行うためにヨガマットを広げる。今は本当の自分に再び結び付くためのわずかな時間が必要なだけなので、気分的に落ち着いている。息子がいつ泣き出すか分からないので、これまでよりもダウンドッグの時間に価値を感じている。ポーズに対して難易度をつけることはもうなくなった。すべてのポーズは単に贈り物なのだ。

産後6か月、ついに私はスタジオでの週に1回のヨガクラスに出席し始めた。週に2回、4回や6回のプラクティスに復帰する時期は未定だが、そのときはもうすぐだろう。息子は私が考えていたよりも成長が早く、気付かないうちにアーサナのプラクティスをまた優先できるようになりそうだ。ヨガのプラクティスを止めることはなかったが、現在使っているメソッドは前とは異なる。それは単純に挑戦と環境が違うからだ。西洋の文化はヨガの身体的な側面を賛美するかもしれない。でも、最小限の行動や何もしないことの中にさえも精力的な意識は存在することができる ― 休息と回復の中にも ― そこに正しい意図があるなら。

ヨガハワイマガジン掲載
http://yogahawaiimagazine.com

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Text by Naomi Iwabuchi
Translated by Hiroe Humphreys