「母親なのにお腹を見せるなんて品がない」シエナ・ミラーへの批判に見え隠れする【母親への呪縛】
先週、雑誌アメリカ版『VOGUE』の130周年を記念してロンドンで開催されたイベント「Vogue World: London」。会場となったウェストエンドのシアター・ロイヤル・ドゥルリー・レーンには俳優のケイト・ウィンスレットやエミリア・クラーク、デザイナーのステラ・マッカートニーら多くのセレブリティが集まった。
中でも注目を集めたのはシエナ・ミラー。彼女は現在恋人のオリ・グリーンとのベビーを妊娠中だが「スキャパレリ」のクロップ丈のシャツとスカートでレッドカーペットに登場、ふっくらしたお腹をアピールした。彼女の装いは「妊娠中の女性の魅力を表現している」「母性を讃えている」という賞賛される一方で批判の声も。「ひどいデザイン」「カーテンみたい」とドレスそのものを批判するものだけでなく「妊娠中のお腹を露出するのは間違っている」「母親なのにお腹を見せるなんて品がない」という中傷めいたものもあった。
「お腹が冷えるのは良くない」と赤ちゃんの健康を心配するものもあったのだが、それはさておき「妊娠中のお腹を見せるのは品がない」「見せるべきではない」という意見は、これまで社会が考えていた「こうあるべき」という妊婦ファッションが、「お腹をなるべく目立たせない」ものであったことをうかがわせる。シエナに先駆けて、この常識に逆らっていたのがリアーナ。彼女は昨年5月に第1子を、今年8月に第2子を出産したが、レッドカーペットだけでなくファッションショーを見に行くときもプライベートで出かけるときもお腹をしっかり露出していた。ファッション誌やサイトはリアーナが「世間の固定概念を打ち破った」と評価したがネット上、つまり世間はやはり賛否両論。「かっこいい」「真似したい」という賛成派と「下品だ」「母親なのだからお腹を出すべきではない」と反対派が対立した。
シエナがリアーナの影響を受けたかどうかは定かではないけれど、アメリカではリアーナのように大胆なマタニティファッションを自由に楽しむプレママも現れ始めている。マタニティファッションの変化は女性たちの妊娠に対する意識の変化。そしてそれに対する社会の賛否は女性たちの意識の変化に対する賛否でもある。女性の生き方が自由になっているとはいえ「母親だから」というルールや「母親なのに」という批判が今も社会に残っているのは事実。お腹見せマタニティファッションがそういった無言の力を跳ね除け、世界に広がっていくのか興味深い。
Rihanna had the best response to those who are criticising her maternity style
AUTHOR
長坂陽子
ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。
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