耳掃除はした方がいい?しなくてもいい?正しい掃除の仕方とは|医師が解説
耳掃除は危険だからしないほうが良いという話を聞いたことはありませんか?実際に耳掃除は危険なのか、そして耳掃除をするのであればどのようにすれば良いのかについて解説します。
耳掃除はしない方が良いのか
先日、日本耳鼻科学会が驚くべき発表をしました。「耳掃除は危険だからしない方がよい」というのです。それは一体どういうことでしょうか。
先ずは耳掃除をする理由である耳垢について考えてみましょう。
耳垢は実は遺伝によって種類があります。主に2種類で、粉耳、アメ耳と呼ばれるものです。その名の通り、粉耳はパラパラとした耳垢です。医学的には乾性耳垢と言います。一方でアメ耳はねっとりした耳垢です。湿性耳垢と言います。
日本人のデータでは、乾性耳垢の人がだいたい7-8割程度と言われています。これらの耳垢の違いは、耳垢の状態が変わるというだけで、その機能や病的意義なとは全く変わりなく、ただ単にそういう特性なのだと理解すれば良いでしょう。
さて、耳掃除をするとなると、特にアメ耳の人は綿棒でぐりぐりと掃除をすると思います。一方で、粉耳の人もまずは綿棒を使うという人もいらっしゃるかもしれませんが、一部には、耳かきを使って耳の穴の中をカリカリと掻くという人もいるでしょう。特にかゆみがある場合には非常に気持ちが良く、毎日している人もいると思われます。
しかし、このように盲目的に耳の中を掻くという行為は、耳の穴の中の外耳道表面を傷つけることが多いです。傷ついて出血したという記憶がある人も多くいらっしゃるでしょう。出血するだけならまだしも、その傷から感染し、外耳道炎になってしまう人もいます。
そのため、耳鼻咽喉科の専門医からすると、盲目的に耳掃除をするという事は危険極まりない行為なのです。ですので、耳鼻科学会は綿棒や耳かきによる盲目的な耳掃除はしない方がよいと発表しているのです。
正しい耳のケアの仕方
そもそも耳垢が多少たまっても、外耳道を塞がなければ特に除去をする必要はありません。特に粉耳の場合は、パラパラと自然に脱落してきますから、掃除をしなくても耳が塞がれるということはほとんどないのです。
一方で、アメ耳の人はやややっかいです。自然に脱落することなく、べっとりと耳の中に付着してなかなか出てこないこともあります。
それでも、多くの場合、耳垢は耳の出口付近にたまっていることが多いです。そのため、耳鼻科学会が推奨しているのは、タオルやティッシュなどで耳の入り口を拭き取るやり方です。特に濡れたもので拭き取るほうが肌にも優しく、勧められるでしょう。この場合、耳の溝も同時に掃除ができるため、お勧めです。
もしどうしても耳の中に異物感があり、除去したい場合は、綿棒を優しく挿入し、そっと周囲を拭き取るようにして掃除しましょう。ぐりぐりと内腔をこそぎ取るような掃除はしてはなりません。
耳かきの使用は推奨されません。やはり、どうやっても傷をつけやすく、外耳道炎の原因となってしまうからです。どうしても使用する場合があるのであれば、他の人に耳の中を見ながら見えている耳垢を除去してもらうような使い方ぐらいでしょうか。
耳は非常に大事なものですから、丁寧にケアしてあげるようにしましょう。
AUTHOR
郷正憲
香川大学医学部医学科卒業後、徳島赤十字病院で臨床研修、その後麻酔科医として勤務。麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。その他多数の医療コラムを執筆。
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