「突然、聞こえなくなる…」年間3万人以上が治療している突発性難聴とはどんな病気?医師が解説

 「突然、聞こえなくなる…」年間3万人以上が治療している突発性難聴とはどんな病気?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-04-15

知っているようで知らない突発性難聴について、医師が解説します。

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突発性難聴とはどのような病気か

突発性難聴とは、ある日の朝に目が覚めると急に耳が聞こえにくいと自覚するなど突然に発症する難聴の病気であると言われています。

過去の厚生省の研究班調査によると、「突発性難聴で治療を受けている人」は年間で約35000人程度と推定されており、患者さんの特徴として男女差はほとんどなく、30~60歳代の年齢層が中心です。

突発性難聴を発症する原因は明確になっていませんが、これまでの研究では内耳のウイルス感染や血流に関する循環障害、日常生活上の慢性的なストレスなどが大きく関与していると考えられています。

例えば、ムンプスウイルスの感染に伴う流行性耳下腺炎では片側の高度難聴をきたすことが知られていますし、突発性難聴を呈する症例の約7%程度はムンプスの不顕性感染(ウイルスに感染したが顕著な症状が現れていない状態)であるとも指摘されています。

また、内耳における血液の循環障害に関しては、耳の奥の聴力と平衡を司る内耳と呼ばれる器官を栄養する血管が痙攣する、あるいは何かを契機にして狭窄することで難聴の症状が生じると考えられています。

突発性難聴では、これまで健康的で特に耳の病気を経験したことのない人々が、突然に耳が聞こえなくなる難聴症状が認められて、それに付随する形で耳鳴りやめまいを併発して合併することがあります。

難聴症状については、通常であれば左右いずれか片側のみに認められて、再発することはほとんどなく、難聴症状を発症してから治療を開始するまでの間に難聴症状の重症度が大きく変動することはありません。

突発性難聴になりやすい人とは

突発性難聴とは、突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患として認識されていて、主に30~60歳代の働き盛りの方々に多くみられる病気であり、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などを抱えている人は発症しやすいことが判明しています。

特に、突発性難聴とストレスとの関係は注目されていて、肉体的な負担や精神的なストレスも突発性難聴の引き金になると考えられています。

突発性難聴 ストレス
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人間は、睡眠不足や悪い人間関係など多大なストレスを感じると自然と交感神経が活発化して血管が収縮して、血管が収縮すると内耳は血流不足になって循環障害が起こります。

血流不足では酸素など必要な成分が十分に内耳に供給されない結果として、内耳機能が悪影響を受けて突発性難聴が発症するという考えもありますし、日々継続するストレスに伴って内耳障害を引き起こすウイルスが再活性化して難聴症状を呈する可能性があります。

突発性難聴の治療予防策は?

突発性難聴を発症した場合には、症状が出現してから1週間以内に治療を開始することが重要であり、最もよく行われる治療策としてはステロイドホルモン剤やビタミンB12製剤の投与です。

通常の治療期間は1週間から10日前後であり、3日間隔で高濃度から徐々に投与量を減らしていくのが一般的ですし、同時に糖尿病などの疾患の有無について血液検査などを実施して評価することもあります。

これらの初期治療で改善がみられない際には、プロスタグランジン薬などの血管拡張剤を投与、あるいは高圧酸素療法、ステロイドホルモン剤の鼓室内投与、星状神経節ブロックなどの追加治療が検討されることも想定されています。

実際には、前向きに治療を実施してもまったく後遺症を残さずに症状が完治する例は、全体の1/3程度であると言われていて、突発性難聴に関連した耳鳴りなどの後遺症があると非常に不快であり、日常生活を送るうえでも悪影響を及ぼします。

入院治療では安静が保たれるので、ストレスとなっている外的環境などから一時的に離れることができますが、外来での治療期間中も、日常生活においては出来る限り安静を保ちながらストレスや負担を減らすことが重要です。

また、喫煙行為は内耳を含めて全身の血管が収縮するので、突発性難聴の危険因子として捉えられていて、日常的に喫煙の習慣を持つ人の場合は、タバコを吸うことを控えましょう。

まとめ

これまで、突発性難聴とはどのような病気か、突発性難聴になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

突然に耳が聞こえにくい症状を来す突発性難聴は、誰にでも発症する可能性がある難聴疾患であり、その発症原因が明確にわかっておらず、予防法といえるような対策も厳密にはありませんが、日々のストレスや疲労が引き金になることもあると考えられています。

身近な病気といえる「突発性難聴」は、特に継続する肉体的、あるいは精神的なストレスや負担が発症の引き金になると言われていますので、過労や睡眠不足など、誘因となることを避けて自分なりにストレス緩和ができれば、発症予防につながることが期待できます。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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