健康寿命を延ばす「40代からの口腔ケア」要介護への第1の扉は口まわりの衰え!?【専門家が解説】

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健康寿命を延ばす「40代からの口腔ケア」要介護への第1の扉は口まわりの衰え!?【専門家が解説】

全身の健康と口腔の関係性や、健康寿命を延ばすために重要な口腔ケア方法について、ドライマウス研究会代表/前・鶴見大学教授(歯学部)斎藤一郎先生に教えていただきました。

平均寿命と健康寿命には9年~12年のギャップがある!?

日本では医療の進歩により、平均寿命が男性は世界2位、女性は世界1位の長生き大国です。しかし、平均して男性は9年、女性は12年が寝たきり状態であると言われ、平均寿命と健康寿命の差が課題です。またこの差は、少子高齢化社会における介護者の負担増大、医療費圧迫などの点からも問題視されています。このような背景から、要介護一歩手前の状態の「フレイル」を予防する動きが近年加速しています。

「フレイル」とは、虚弱や老衰、脆弱を意味しており、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態のことです。なんと80歳以上では、3人に1人がフレイル状態となっています。

その人口は年々増える一方で、予備軍まで含めると2025年には約44%(1620万人)もの高齢者がフレイル状態になると予測されています。この事態を受け厚生労働省は2018年から本格的なフレイル対策事業を始動し、積極的な支援・介入を行うことで課題解決を目指しています。

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要介護への第1の扉、口まわりの衰え「オーラルフレイル」に注意しよう

「フレイル」にならないためには、運動や栄養、社会参加などにより生活機能の維持・向上が重要です。運動や栄養面に焦点が集まりがちですが、口まわりの“ささいな衰え”を放置する「オーラルフレイル」に注意が必要です。口の機能低下、食べる機能の障害、さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖に陥る警告が「オーラルフレイル」なのです。

2025年には65歳以上の人口が30%を占めることが予測されており、健康寿命社会の構築が課題です。高齢者の健康寿命には、唾液分泌量の減少、口腔乾燥といったオーラルフレイルが大きく関係しています。

オーラルフレイルとなる原因としては、口の役割である「食べる」「話す」「笑う」「歌う」「噛む砕く」「飲み込む」などの口腔機能が衰えることでなります。噛む力が衰えて固いものが食べにくくなると、やわらかいものばかり食べるようになります。すると、噛むために必要な筋力がさらに低下し、さらに噛む力が衰えるといった悪循環に陥りやすくなります。

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口の老化を7項目でチェック!

口の老化のサインは、見た目からもチェックすることができます。

・上唇に縦しわがある
・口唇が薄くなっている
・フェイスラインにたるみがある
・左右の鼻から口角、あごにしわがある
・口角が下垂気味
・あごのたるみ、二重あごが気になる
・首のしわや皮膚のハリの消失が気になる

該当する項目が多い人は、口の老化が進んでいるかもしれません。食事の時には背筋を伸ばしてアゴを引いて食べるのも、口元の筋力をアップさせるコツ。意識的に口元に筋肉を鍛えるなど、老化を防ぐ意識が大切です。

オーラルフレイルの加速と影響度

下図のように、オーラルフレイルの危険は、口の動きの衰えだけに留まりません。オーラルフレイルが身体のフレイル、要介護状態、死亡の発生とも関連していることが分かります。「口腔の小さなトラブル」を放置しておくことが、身体の健康維持に対し、いかにリスクが高いかが分かります。

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(参考: 歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版)

口腔の健康は唾液がカギ?

唾液は健康な成人で一日1.0〜1.5リットル分泌されると言われています。しかし個人差も多く、季節・年齢・性別・身体状況・服用薬剤などによって変動します。唾液には粘膜保護・消化・抗菌をはじめとする作用があり、口腔のみならず身体が正常な機能を発揮するため無くてはなりません。疾病などにより唾液分泌が低下すると、嚥下障害・咀嚼障害・発音障害・味覚障害などがおこります。また、口腔乾燥や唾液分泌低下により自浄作用が低下すると、歯周疾患などのトラブルも発症しやすくなるのです。


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口腔の乾燥ケアは40代からがベスト

口腔乾燥について調査を行ったところ、「常時口腔が乾燥している」と回答した人は年代が上がるほど増加するという結果となりました。また、65歳以上の3人に1人は唾液分泌障害(=ドライマウス)であることがわかっています。そのため、40代頃から唾液分泌力を高める対策を行う必要があります。ドライマウスが及ぼす影響として、「歯周病」「粘膜疾患」「口臭」のほか、「上部消化管障害」など多岐に渡る病態があります。その原因は老化のほか、ストレスや更年期障害など様々です。

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口の中の潤いを改善させるための3つのポイント

①酸化ストレスの緩和

活性酸素の量に対して抗酸化力が少ない状態である「酸化ストレス」は、細胞や遺伝子を傷つけ、多くの病気の重要な要因の一つとして考えられています。特に、加齢による酸化ストレスの蓄積は唾液分泌量を減少させることが報告されており、酸化ストレスを緩和することは口の中の潤いを保つためにとても重要な要素です。

酸化ストレスを緩和する抗酸化物質について研究した結果、還元型コエンザイムQ10を摂取すると唾液分泌量が増加することが分かっています。加齢に伴い体内のコエンザイムQ10量は減少することから、体内コエンザイム Q10量の低下と唾液腺の加齢変化には深い関わりがあります。

②ストレスの緩和

唾液腺は交感神経と副交感神経に支配されています。緊張すると口が乾くのは、ストレスが高いと交感神経が優位になって唾液分泌を抑制するためです。

そこで、歌唱(カラオケ)を週4回程度を8週間継続した際の唾液分泌効果、ストレス解消、免疫能等について検討した結果、歌唱により唾液量が増加、ストレスも改善され免疫力も向上することが分かりました。カラオケの好き嫌いや上手く歌えたかに関係なく、ストレスが減少し、前向きな感情を促進することが報告されています。Biopsychosoc.Med.,21:8-11.2014

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③口腔細菌(オーラルフローラ)の適正化

口の中も腸内と同様に、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が共生しています。この細菌叢を「オーラルフローラ」と呼び、腸の中に次いで、細菌数が多いのが口の中です。

口腔内の細菌は、 腸内で増えるとクローン病や潰瘍性大腸炎を誘発し悪化させることや、アルツハイマー型認知症の発症リスクとも関連することが分かっています*。口腔内だけでなく腸内フローラおよび全身の健康を維持するためにも 「オーラルフローラ」の適正化は重要なのです。

*Scientic Report,7:13510.2017より

唾液分泌に効果がある栄養素「還元型コエンザイム Q10」に注目!その働きは?

生命維持・活動に必要なエネルギーを作る

これらは細胞の中にあるミトコンドリアで作られます。食事から摂取した栄養素と、呼吸で取り入れた酸素を利用して作られますが、このエネルギー工場(ミトコンドリア)で不可欠な成分が還元型コエンザイム Q10です。

活性酸素による体の錆びを防ぐ

酸化の原因は活性酸素。呼吸で取り込んだ酸素の一部が活性酸素に変化し、体を錆びつかせます。還元型コエンザイムQ10は、活性酸素を除去する高い抗酸化作用で、体を錆から守ります。

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※Erecinska M, et al. (1982) J Memb Biol, 70:1-14.

研究でわかった「還元型コエンザイムQ10」による唾液分泌の効果

還元型コエンザイムQ10は、唾液量分泌改善に効果が期待できます。唾液は唾液腺細胞内で生成・分泌されており、その細胞内のミトコンドリアのはたらきを還元型コエンザイムQ10が活性化させるからです。口の乾きが気になる成人健常者を対象とした還元型コエンザイムQ10入りグミを使った試験では、グミの摂取により唾液分泌量が増加したという結果が得られています。

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いかがでしたでしょうか? 口元の筋力アップや今回ご紹介した口腔の乾燥ケア方法など、口まわりの“ささいな衰え”を放置せずにケアをし、歯と口の健康を保つ生活習慣を心がけていきましょう。

教えてくれたのは…斎藤一郎先生

1954年東京生まれ。東京医科歯科大学等を経て、現在、前・鶴見大学歯学部教授。専門は口腔乾燥症(ドライマウス)を呈するシェーグレン症候群の研究に長年従事し、現在会員数約4,800名のドライマウス研究会を主宰する。2003 年に鶴見大学歯学部附属病院にドライマウス外来を開設した。NHK『あさイチ』、『ためしてガッテン』、『チコちゃんに叱られる』、日本テレビ『世界一受けたい授業』等に出演し口腔から全身の健康を守ることの大切さを広く呼びかけている。

Text by Chiaki Okochi 

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。

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