約20万人の鼻に存在する?鼻詰まりやニオイがわからないのは「鼻茸」のせいかも|医師が解説

 約20万人の鼻に存在する?鼻詰まりやニオイがわからないのは「鼻茸」のせいかも|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-04-04

風邪や花粉症でもないのに鼻が詰まっている、ニオイがわからない…もしかしたらそれは「鼻茸」のせいかもしれません。

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鼻茸とはどのような病気か

ポリープ状のできものが鼻の中にできる際には、鼻茸(別名:鼻ポリープ)と呼んでおり、この疾患は、主に中鼻道や嗅裂という部位にできることがあり、特に嗅裂に鼻茸が形成されると匂いが感じづらい症状が出現します。

鼻茸の組織学的な特徴は、強い炎症によって末梢血管から漏出したアルブミンを中心とした血漿タンパクの貯留による著しい浮腫、線維化の低形成、そして好酸球の著しい浸潤であると考えられています。

鼻茸は、慢性的な炎症反応を基盤として生じることが少なくなく、炎症が継続することによって鼻の中の粘膜が変化し、ポリープが形成されるため、鼻茸は慢性副鼻腔炎の患者にみられることが多いです。

鼻茸は、主に鼻の奥の、空気の通り道にできて、仮に中鼻道にできると鼻づまりの原因となりますし、嗅裂(鼻の奥の匂いを感知する場所)に病変があると、匂いがわかりにくいという症状を引き起こします。

鼻茸

鼻茸になりやすい人とは

副鼻腔炎のなかでも、好酸球性副鼻腔炎では両側の鼻の中に複数の鼻茸ができやすいと考えられています。

好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻の中に多発性の鼻茸ができて、手術治療を実施しても再発しやすい難治性の慢性副鼻腔炎として認識されています。

一般的な慢性副鼻腔炎は、抗菌薬と内視鏡手術によって治ることがありますが、このタイプの副鼻腔炎の場合は、手術をしても再発しやすく、ステロイドを内服すると軽快する特徴があります。

好酸球性副鼻腔炎(英語表記:eosinophilic chronic rhinosinusitis, 略名ECRS)は厚生労働省の指定難病の診断基準から診断されます。

好酸球性副鼻腔炎は、匂いがわからない嗅覚障害が起こって、両側の鼻から粘稠な鼻汁が出て鼻閉感を引き起こします。

血液検査では、好酸球がたくさん血液中に現れて、鼻のCT画像検査を撮影すると目と目の間の所(篩骨洞)に陰影像が認められます。

好酸球性副鼻腔炎における詳細な発症原因はわかっていませんが、主に気管支喘息の場合、あるいはアスピリンなどの解熱剤などで喘息発作を起こすアスピリン不耐症の方や薬物アレルギーの人に起こりやすいと考えられています。

鼻茸の治療予防策は?

一般的に、慢性副鼻腔炎の患者例の10~20%程度(約20万人)に鼻茸が存在すると言われています。

鼻茸による症状を改善するために、鼻噴霧用(点鼻薬)や経口(飲み薬)のステロイド薬を使用することが見受けられます。

治りにくい慢性副鼻腔炎の鼻茸は、鼻の両側にできやすいため、手術で鼻茸を取り除くことが必要となります。

鼻茸によって鼻の中が痛い場合には、まずは鼻の粘膜を刺激しないことが大切です。

鼻をなるべくかまないようにして、冬の寒い外出時や夏の冷房が効きすぎている部屋など、乾燥した環境ではマスク着用を心がけましょう。

鼻うがいなどを習慣に行っている人は、鼻の中に入れる液温を体温に近づけることが重要ですし、基本的には鼻の中が痛くなる原因に応じた対策が必要ですので、鼻茸に伴う症状が継続或いは悪化すれば耳鼻咽喉科など医療機関を受診しましょう。

鼻茸は、放置しておくと病変が大きくなり、鼻に関連する症状が悪化する可能性がありますので、早めに耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診して、適切な検査と治療を受けることが重要なポイントです。

まとめ

これまで、鼻茸とはどのような病気か、鼻茸になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

鼻の中のできものが痛い症状で考えられる原因疾患として、「鼻茸」が挙げられます。

鼻茸は、特に嗅裂という、においに関わる部位に形成されやすいことが特徴的ですし、明確な原因は不明ですが気管支喘息やアレルギーを持つ場合には、鼻茸を合併して発症しやすいことがよく知られています。

鼻茸は、主に鼻の奥の、空気の通り道にできて、仮に中鼻道にできると鼻づまりの原因となりますし、嗅裂(鼻の奥の匂いを感知する場所)に病変があると、匂いがわかりにくいという症状を引き起こします。

鼻茸による症状を改善するために、鼻噴霧用(点鼻薬)や経口(飲み薬)のステロイド薬を使用することが見受けられますし、手術療法としては鼻茸を切除する治療があります。

鼻が痛くて症状が治りにくい場合には、内視鏡やCTといった専門の検査が必要なので、早めに耳鼻咽喉科専門の病院に行きましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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