健康診断で「糖代謝異常」との結果が…「糖代謝異常になりやすい人」の特徴は?治療は必要?医師が解説

 健康診断で「糖代謝異常」との結果が…「糖代謝異常になりやすい人」の特徴は?治療は必要?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-03-30

健康診断の結果表に「糖代謝異常」と書かれていたことはありませんか?わかるようでわからない糖代謝異常という病気について、医師がわかりやすく解説します。

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糖代謝異常とはどのような病気か

一般的に、健康な人の体では、食事などで摂取した糖分はエネルギー源となるブドウ糖に変換されて、血液によって全身に送られ、余剰に余ったエネルギーは、肝臓や筋肉などに蓄えられています。

食事をしていない時間帯は、その備蓄されたエネルギーが少しずつ血液中に放出されることで、一定の血糖値を保つようになっていて、この主要な働きを普段から司っているのが、インスリンというホルモンであり、これらの一連の流れを「糖代謝」と呼んでいます。

糖代謝異常とは空腹時または食後の血糖値が異常に高くなった状態を指しており、血糖値を正常範囲に下げる役割を有するインスリンホルモンの働きが、肥満やインスリン抵抗性、インスリン分泌能低下などによって減弱されることによって引き起こされます。

糖代謝異常は、空腹時または食後の血糖値に応じて、糖尿病とその予備群に大別されます。

糖代謝異常とは、現代病として注目される糖尿病と密接に関連している状態であり、インスリン抵抗性とも深く関係性を有しています。

糖代謝において重要な働きをするインスリンホルモンが十分に分泌されていなかったり、分泌量はあったとしても細胞に機能的に働きかけられなかったりすると、糖代謝異常が起こります。

インスリンの分泌量が少なくなる「インスリン分泌不全」は、インスリンを分泌している膵臓がうまく働かなくなっている状態であり、十分量のインスリンが分泌されているにもかかわらず、細胞に正常に働きかけられなくなる状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。

細胞の表面には「インスリン受容体」と呼ばれる鍵穴のようなものがあります。

受容体に鍵となるインスリンがはまることで初めて、細胞がブドウ糖を取り込むようになりますが、インスリン抵抗性がある場合にはインスリン受容体の感度が悪く、十分量のインスリンが分泌されても、細胞はブドウ糖を取り込むことができません。

インスリン抵抗性の状態が続くと、自然と糖代謝異常に陥って、血糖値が健常よりも上昇して異常をきたすことに繋がります。

糖代謝異常になりやすい人とは

特に、肥満の方では脂肪組織の機能の低下が生じて、アディポネクチンの分泌量も低下して糖代謝異常を引き起こしやすいと考えられています。

肥満の場合には、肝臓や骨格筋に脂肪が蓄積して、2型糖尿病やメタボリックシンドロームの根源であるインスリン抵抗性が引き起こされて糖代謝異常に繋がると考えられています。

それ以外にも、遺伝的に糖尿病になりやすい体質である、普段から食べ過ぎや運動不足、ストレスや喫煙といった悪い生活習慣や環境要因が重なって、糖代謝異常は発症すると考えられています。

また、妊娠中でははじめて発見または発症する糖尿病に至っていない糖代謝異常を引き起こすことがあり、妊娠すると胎盤などから放出されるホルモンによって、血糖値を下げるインスリンの効果発現が悪くなることもあります。

肥満
肥満と診断された人や、遺伝的に糖尿病になりやすい、普段から食べすぎている、運動不足に陥っている、ストレスや喫煙といった悪い生活習慣や環境要因にとって発症すると考えられています。
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糖代謝異常の治療予防策は?

糖代謝異常を引き起こす主な原因は肥満であるため、普段からバランスの良い食事を心がけて摂取カロリーを適度にする、あるいは定期的に運動習慣を身につける対策を講じることが重要です。

単純に糖代謝異常が起こっただけでは、糖尿病にはならず、軽度の糖代謝異常であれば、食事療法や運動療法によって状態を改善することが期待できます。

糖代謝を改善するために重要な運動習慣は糖の利用を効率的に促進させるため、血糖値を上手くコントロールするのにも役立ちます。

「ややきつい」と感じる中等度のレジスタンス運動などを含めて、定期的な運動を実践することは、糖を利用するだけでなく内臓脂肪を減らしてインスリンの働きを高めることができるメリットもあります。

日々の食事内容は、バランスを意識して自分の活動量に応じたエネルギー摂取量を目標にして、食べ過ぎることなく、油ものの摂取を減らして野菜を多く摂り、腹八分目に抑えることが重要なポイントとなります。

まとめ

これまで、糖代謝異常とはどのような病気か、糖代謝異常になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

食べものから摂取したエネルギーを使って、余分なエネルギーを備蓄するために重要なのが糖代謝です。

健康な方であれば、血糖値を上げたり下げたりするためのインスリンホルモンが正常に働いているため、血糖値が上昇しすぎてしまうことはありません。

しかし、なんらかの原因によって血液中のブドウ糖が増える、HbA1cの値が高くなる、あるいは尿糖が検出される場合には糖代謝が異常をきたしている可能性があります。

何か異常があって心配する場合には、早めに糖尿病内科など専門の医療機関で相談するようにしましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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