【健康診断】「アミラーゼ」って何?アミラーゼの数値が異常だと何を意味する?医師が解説

 【健康診断】「アミラーゼ」って何?アミラーゼの数値が異常だと何を意味する?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-03-23

健康診断や人間ドックを受けて、検査結果が届いた!けど…「γ-GTPって結局何?」「アルブミンってなんのこと?」など、わからない用語がたくさん。知っているようで実はよく知らない用語について、医師が解説します。

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アミラーゼとは

アミラーゼとは、膵臓や唾液腺に含まれている消化酵素のことであり、主に糖類であるα-グルカンを加水分解する働きがあります。

アミラーゼの検査は、血液や尿から濃度を測定することで可能であり、膵臓や唾液腺に炎症や異常がある場合は、血清アミラーゼの数値が上昇するなど、アミラーゼの数値によって身体に異常があるかどうかをチェックすることができます。

アミラーゼはデンプンや糖質を分解して糖にする消化酵素であり、主に膵臓、睡液腺、耳下腺から分泌されており、この消化酵素は血液に混じった血清に存在する状態で全身を循環したあとに、腎臓で濾過されて尿成分として排泄されることが分かっています。

アミラーゼは、唾液アミラーゼと膵型アミラーゼに大きく分類されます。

唾液アミラーゼとは、唾液に含まれる消化酵素のひとつであり、ストレスや体型とも関連性がある成分であり、唾液中に含まれる消化酵素であるアミラーゼは、デンプンと反応して麦芽糖へと分解する役割を担っています。

唾液由来のアミラーゼは、咀嚼行為によって摂取した食べ物と混ざって、デンプンを糖に変える作用を有しており、このアミラーゼのおかげで消化を促進して胃腸の負担を軽減することができます。

アミラーゼ自体は膵臓の特異性が低く、急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪時、あるいは膵嚢胞、膵癌、薬剤の副作用としての膵炎などを含む膵疾患の診断には、特に特異性の高い膵型アミラーゼの測定が有用であると考えられています。

アミラーゼ

アミラーゼの数値が異常になると何を意味するのか

血液中の血清アミラーゼが上昇している際には、膵臓や睡液腺の細胞に異常があることを反映しています。

膵臓に炎症が存在するケースや膵管の通りがせまくなって膵液の巡りが悪化している場合には血清アミラーゼが高い数値を示すため、膵炎を発症した場合の指標値や膵臓癌などの腫瘍マーカーとして有効的に評価できます。

膵型アミラーゼが増加する病気としては、急性膵炎を始めとする膵疾患以外にも胆道や十二指腸乳頭部などにおける疾患に伴う膵障害合併で認められます。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やESWL(体外衝撃波胆・膵石破砕療法)の治療後における膵管内圧上昇や膵液の逆流時、あるいは消化管穿孔や腸閉塞などに伴う腹膜炎などの疾患によっても膵臓由来のアミラーゼ値の上昇所見が認められます。

アミラーゼは、急性膵炎など膵臓疾患のスクリーニング検査として活用されていますが、このアミラーゼ値が高いからといって、必ずしも膵臓疾患であると断定はできません。

そのため、アミラーゼが異常に高値であった際には、膵型アミラーゼ、あるいは膵酵素として関連しているリパーゼなどを測定する血液検査を実施して、あわせて超音波検査やCT検査など画像検査と組み合わせて膵疾患の有無を評価することになります。

特に、アミラーゼが高値であり、かつ唾液由来のアミラーゼが相対的に高値の場合には、唾液腺の中や唾液を口に流し込む導管の内部に唾石という病変ができることによって、唾液の流れに異常を呈する唾石症やおたふくかぜを含む急性耳下腺炎などを疑います。

その一方で、膵型アミラーゼが低下する場合には、慢性膵炎非代償期、膵癌末期や広範囲の膵切除術後などに認められることが多く、残存する膵予備能の低下を反映していると考えられています。

まとめ

これまで、血液検査の結果のところにある「アミラーゼ」の概要やアミラーゼの数値が異常になると何を意味するのかなどを中心に解説してきました。

健康診断で血清アミラーゼの数値異常を指摘された方もいらっしゃることでしょう。

アミラーゼは、主に膵臓や唾液に含まれており、膵臓や耳下腺などの機能をチェックするために重要な数値となっています。

血液中のアミラーゼが増加している際には、膵臓や睡液腺に異常があることを示しており、特に膵型アミラーゼが上昇する場合には膵臓に炎症が存在する、あるいは膵管の流れが悪くなっているケースなどが想定されます。

自覚症状があまりなく血清アミラーゼの上昇が続く場合は、命に関わる可能性がありますので、症状が判定しにくい病気を早期に発見するためにも、健康診断検査などを受けて血清アミラーゼの数値を測定することが重要なポイントです。
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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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