【健康診断】肝機能検査結果にある「AST」「ALT」って何?医師が解説【意外と知らない検査数値】

 【健康診断】肝機能検査結果にある「AST」「ALT」って何?医師が解説【意外と知らない検査数値】
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-02-12

健康診断や人間ドックを受けて、検査結果が届いた!けど…「γ-GTPって結局何?」「アルブミンってなんのこと?」など、わからない用語がたくさん。知っているようで実はよく知らない用語について、医師が解説します!

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AST・ALTとは

ASTとALTは肝臓の機能を調べるための代表的な検査項目です。

肝臓に何らかのダメージが起こって肝細胞が破壊されると、血液中にこれらのASTとALTが大量に放出されるため、血中濃度が上昇するため、ASTとALTの数値が高い場合、肝臓が破壊されていることを示唆します。

AST(別名:GOT)、ALT(別名:GPT)は肝細胞で合成される酵素であり、いずれも「トランスアミナーゼ」と呼ばれていて、主に肝臓領域でアミノ酸の代謝に関連する働きを担っています。

一般的にAST、ALT自体は健康な方の血液中にもみられますが、肝細胞が破壊されると血液中に放出されるため、AST・ALTの数値を測定することによって肝機能を簡便に調べることができます。

心筋や骨格筋、赤血球中などにも多く含まれているASTと異なって、ALTは肝臓中に多く存在しているため、肝細胞の障害の程度を調べるのにより適している項目値です。

AST の正常値は7~38 IU/L、ALT の正常値は4~44 IU/Lであり、通常であれば、健康人ではALTよりASTが高値を示しますが、肝障害の場合にはALTの方が高くなると認識されています。

AST自体は肝臓以外にも筋肉や赤血球中にも存在するため、ALTが正常でASTのみが上昇している場合は肝臓以外が原因で高値を示している可能性を念頭に置く必要があります。

AST・ALTが高いとどうなる?

日本人間ドック学会によると、ドック受診者の中でおよそ3割の方が肝機能の障害やAST・ALTを始めとする肝臓数値の異常を指摘されていると報告されています。

肝機能障害とは、何らかの原因によって肝臓にある細胞が障害を受けて炎症が起こることで細胞破壊されてしまう病態のことを意味します。

肝臓の機能障害を引き起こす原因は、B型やC型の肝炎ウイルス感染、アルコールの多飲、過剰な脂質の摂取や肥満、そして自己免疫の異常など非常に多岐にわたります。

肝機能が著しく低下する状態が継続されると、肝硬変や肝臓癌を発症するリスクも高くなりますし、顕著な肝障害を呈する場合には食道静脈瘤や肝性脳症など命に関わる重篤な合併症を併存しやすくなることが知られています。

AST・ALTが高値を示す場合には、急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がんなど肝疾患を疑うことになります。

健診で肝機能異常が見つかった場合には、精密検査として主に血液検査と画像検査(超音波検査やMRI検査など)を実施する事が重要なポイントとなります。

血液検査では、異常がみられた肝機能が改善しているか悪化しているかを評価して、B型・C型肝炎など感染所見の有無や自己免疫性疾患があるかどうかに関して自己抗体検査を実施します。

また、超音波検査やCT検査などを用いて脂肪肝、胆石、肝硬変、肝臓がんなどの病変がないかを画像検査によって判断することも見受けられます。

健診や人間ドックで肝機能の数値に異常があったにもかかわらず放置している、あるいは健診や人間ドックを受けておらず自分の肝臓の状態を把握していない場合は、健康状態や肝機能に関して現状を把握するためにも早期的に専門医療機関を受診することが重要です。

まとめ

これまで、AST・ALTとは何なのか、その数値が高いとどうなるかなどを中心に解説してきました。

健診や人間ドックでAST・ALTの採血項目値が上昇している際には、肝機能異常を疑うことになります。

ウイルスや薬剤による肝障害や自己免疫性肝炎以外にも、普段アルコールを飲まない場合でも引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患や肝炎に伴う肝障害が昨今では増加傾向を示しています。

健診や人間ドックはただ受けるだけではなく、AST・ALTが血液中で上昇している場合には、重大な肝臓疾患が隠れている可能性が考えられますので、心配であれば消化器内科など専門医療機関を受診しましょう。
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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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