「いつ運動するのが1番効果的ですか?」の質問に、パーソナルトレーナーである私が最も伝えたい回答は
最新科学はそのまま自分に当てはめていい答えではなく、あなたにピッタリの方法を見つけるための参考書。いつ運動するのがいいのかという問いに対する答えをめぐっては、まさにその「科学的な正解」と「あなたにとっての正解」の違いが成功と失敗の分かれ道になりやすいのです。
「いつ運動するのが1番効果的ですか?」は、非常によく聞かれる質問の1つです。
勉強、仕事、遊び、趣味、家族との時間、家事、睡眠、全てを24時間に詰め込まないといけない現代人は効率が命。効率的!即効性!という言葉がよく使われるのも、最短コースを選びたい需要が多いからなのですが、フィットネスではその近道がかえって遠回りになっているケースをよく見かけます。「科学的な正解」と「あなたにとっての正解」を区別して考えないと、この迷路にハマってしまうのです。
科学が見つけた答え
効率の需要に伴い、「いつ運動するのが一番効果的なのか?」に答えるための研究は世界中でされています。しかし、このトピックはまだ比較的新しくて、多くの研究者や専門家が異なる立場をとっている段階。明確な答えが1つあるわけではありませんが、傾向としては「脂肪燃焼に関しては朝イチに運動をするのが一番効果的なのではないか」という見解があるようです。
その理由も、研究によっては、朝運動をするとその日を通して代謝が上がると考察していたり、1日のエネルギー消費は変わらないけど脂肪燃焼のシステムが活発化するからではないかと考察していたりと、まだまだ謎の多い部分。
※このトピックの検索で注意しなければいけないのは、アスリートが対象の研究結果と、一般人が対象の研究結果がほとんど区別されずにメディアに流れているという点です。アスリートと一般人では代謝もライフスタイルも全く異なるので「自分の見つけた情報が誰を対象にしているか」は必ずチェックするようにしましょう。
近道がもたらす遠回り
じゃあ「朝イチ、仕事に行く前に運動するか!」となるかもしれませんが、この科学の答えには問題点もあります。
それは長期的な効果。
例えば、16週間に渡って朝運動したグループと夜運動したグループの体重変化を比較した研究があったとします。その期間で「朝運動の方が効果が大きかった」という結果が出たとしても、17週目以降にも同じ結果になるとは限らないのです。その期間の効果のみ分かる研究であることが大前提で、17週目以降になると結果があまり変わらない可能性や、その後のリバウンドのリスクの大きさまでは言及されてないことは頭の隅で覚えておかなければなりません。これをすっ飛ばして「朝運動が1番いい方法だ!」と早起きを始めるのは時期尚早。圧倒的に研究の数は少ないですが、年単位で行われている研究も今後注目し続ける必要があります。
また、継続性にも問題があります。
私のように夜型人間にとっては、朝の運動なんて苦痛以外の何者でもありません。いくら効果的だと言われても、前日の夜に布団に入って次の日の朝のめざましをかけるところからハードルが高い…!過去に何度も朝活にトライしたことがありますが、続いた試しがありません。自分のライフスタイルに合っていない方法を無理矢理自分に押し付けても、続かないのです。
仮にあなたが朝型人間だったとしても、実際には、夏と冬で朝起きた時の明るさや気温によって継続のしやすさが変わったり、忘年会などの季節行事で夜遅くなることが増える時期があったり、人によって続けやすい時間帯が異なります。いくら実験期間中の結果を元に「朝イチの運動がいい」と証明されたところで、長期的に見てそれが「あなたにとっての正解」とは限らないんです。
あなたにとっての正解
こういうことを言うと「それは甘えだ」「そんなの言い訳だ」という意見が必ず上がるのですが、世界一を目指すアスリートでもない一般人であるあなたが、嫌がる心を無視してまで朝運動しなければいけない理由なんてないんです。自分が1番生き生きできるライフスタイルを選んでいい。朝運動が原因で気持ちが重くなっては本末転倒。早起きしている方が勤勉だと信じる人は多いですが、朝やろうが夕方やろうが、やる量は変わらないのです。そもそも、続かなけば勤勉も何もありません。
あなたにとって1番効果的な時間を探すためには「自分がスケジュールしやすい時間帯はいつか?」考えましょう。「平日は急な予定が入ってプランが立てにくいから、まとまった時間を取るのではなく歩行時間を増やそう」「絶対運動を優先できるように、トレーナーとセッションを予約しよう」のような、継続可能な方針が立てられるようになります。スケジュールだけでなく、昼過ぎの方が元気がある、夜はいつも疲れて何もする気になれない、なども考慮すべき点です。
健康、ダイエット、ボディメイクなど、どんな目的で運動をするにしても「数ヶ月だけ改善して結局その後は元通り」では、あなたの労力も時間も無駄になってしまいます。より効率的な方法を選ぶのは大切。でも継続的にできない方法であればその効率性の意味はありません。続かなければ、世界で1番効果のある方法だってあなたの身体を変えることはできないのです。
遠回りをしたり無駄を省きたいのであれば、即やせで短期間の結果が出るエビデンスばかりを追うのではなく、「継続できること」を優先的に選ぶようにしましょう。長期的に見れば、それが1番効率的。最新科学で分かっていることは、あくまでも「あなたにピッタリの方法を見つけるためのヒント」ですので、科学的な正解を参考にしながら自分のライフスタイルに運動を取り入れて実践していくようにしましょうね。
AUTHOR
mikiko
パーソナルトレーナー|自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱|身体と人生観が変わるフィットネス哲学で、一生ブレないための視野と学びを発信しています|流行を根拠と本質で斬る人| 筑波大学健康増進学修士|NZベストトレーナー入賞
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