【更年期世代の薄毛・抜け毛対策】育毛プロが教える「抜けにくい髪」のためのケア&マッサージ
薄毛は男性に多い印象ですが、加齢と共に他人事ではないと気づく女性もいるのでは。見た目の印象を左右する「薄毛」。年齢相応の若々しさをキープするために効果のある予防策とは?予約が取れない人気のヘッドスパ専門店「プーラ」の創業者で、白髪ケアと育毛のプロフェッショナルである辻敦哉さんが育毛の実績をもとにアドバイスします。
「休止期」は抜けにくい強い毛を育むチャンス期
―シャンプー後に抜けた髪の毛を見ると、「髪の毛が薄くなるのでは」と心配になってしまいます。薄毛のサインなのでしょうか……。
「人の髪の毛は1日に50本~100本抜けるため、シャンプーやブラッシングのときに髪が抜けるのは正常なことで、心配しすぎるとそのストレスが自律神経の乱れや血流の悪化を招き髪の成長に悪い影響を及ぼしかねません」
―では、髪の毛はどのくらいのサイクルで抜けて、また生えてきますか?
「髪の毛は、休止期(3~5カ月)・成長期(2~6年)・退行期(2週間)というサイクルを繰り返しています。休止期は髪の成長が止まる期間で、新しい髪が生えてくると古い髪は自然に抜け落ちます。そして髪の毛が伸びる成長期、髪への栄養供給が弱まり成長が遅くなる退行期を経て、再び休止期へ。今生えている細い髪を見違えるほど太く丈夫にするのは難しいですが、適切なケアを行い休止期の毛穴の状態を良くできれば、これから生えてくる毛を太くしっかりとしたものにできますし、寿命の長い抜けにくい髪にすることも可能です。秋は抜け毛の季節です。夏に紫外線対策などを怠った人は頭皮が健康な人に比べて2倍以上も抜ける可能性があるので、心当たりがある人はケアを見直すきっかけにしましょう」(辻敦哉さん)
タンパク質とミネラルが二人三脚で育毛を促進
―抜け毛を予防するには、普段の生活で何に気をつければいいですか?
「抜け毛の原因には、添加物を多く含む加工品や外食に偏った食生活のほか、ストレスフルな生活や運動不足による血流の悪化などが考えられます。栄養面では、特に髪を作るのに必要なタンパク質とミネラルが不足すると、髪の健康を維持しづらくなるので注意しましょう。ベジタリアンやヴィーガンを選ぶ人も増えていますが、期間を決めて行うぶんには問題なく、長期におよぶとタンパク質に含まれる必須アミノ酸が不足してしまいます。食生活の考え方はさまざまですが、五大栄養をバランスよく摂取する食事を心がけることが、髪と体の健康には大切です」(辻敦哉さん)
―また女性の場合、更年期になると女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が低下しますが、それも薄毛に影響しますか?
「女性ホルモンのエストロゲンには、髪を健康に保つ働きがあります。だから分泌量が減ると抜け毛や薄毛だけでなく髪のハリ、コシ、ツヤが失われてしまいます。更年期が始まる40代半ばから、毛根部の老化もあり、髪に元気がなくなりロングのストレートヘアを保ちにくくなった、と思うのはエストロゲンの減少が影響していると言えます。更年期は避けては通れない体のステージなので、食事や睡眠など生活習慣を整えてカバーしましょう」(辻敦哉さん)
―女性と男性では、薄毛の原因に違いはありますか?
「栄養不足や血行不良は、女性と男性に共通する薄毛の原因といえます。一方、男性特有の薄毛であるAGA(Androgenetic Alopecia)は、男性ホルモンのテストステロンと5αリダクターゼという酵素が結合して発生する、ジヒドロテストステロンという男性ホルモンが原因です。AGAの場合、生え際のある前頭部と頭頂部の髪の毛が局所的に薄くなり、対策としては医薬品を使ったケアが最も効果的。併せて行いたいセルアケアは、「三陰交」(左右の内くるぶしから指4本分上)というツボの刺激と、耳周りのマッサージがおすすめ。男性ホルモンの分泌を抑制して女性ホルモンの分泌を活性化させる効果が期待できます」(辻敦哉さん)
体の内側と外側から頭皮と髪の健康ケアを
―できれば薄毛になる前から、自分でできる予防と対策を実践したいもの。おすすめの方法を教えてください。
タンパク質・ミネラル不足を解消
「髪を構成するタンパク質は、消化吸収率を考えて選びましょう。動物性タンパク質であれば肉より魚を。植物性タンパク質ではナッツ類が高タンパクですが、日本人は欧米人に比べて消化力が低いため、日本人が昔から食べている大豆や大豆を発酵させた味噌、納豆などから摂取するほうがベター。また内臓の働きを正常に保つために欠かせない栄養素であるミネラルには、1日に約100mg以上摂取する必要があるカルシウム、ナトリウムなどの『多量ミネラル』と、100mg以下でもよい亜鉛、鉄などの『微量ミネラル』があります。育毛には特に『微量ミネラル』が重要なので、動物性タンパク質食品、ノリ、わかめ、ひじきなどを積極的に食事に取り入れましょう。そのうえでできる限り加工食品を控え、天日塩や醤油などの調味料を育毛に必要なミネラルや酵母を豊富に含む天然製法で作ったものに変えてみてください」(辻敦哉さん)
運動習慣をつける
「血流を促進するには筋肉を動かす必要があります。運動の中でもヨガは、筋肉を使うだけでなく呼吸を意識することで交感神経と副交感神経のバランスが整い、ストレスからくる自律神経の乱れを改善できるとても有効なツールです」(辻敦哉さん)
頭皮の健康を損なう塩素を除去
「日本の水道水は、衛生管理の面から塩素濃度がとても高く、シャンプーのたびに塩素が頭皮を守るために必要な常在菌まで殺菌してしまいます。また髪の毛の成長を促す細胞を構成するタンパク質を分解し、細胞を破壊してしまうデメリットも。対策として、塩素除去のシャワーヘッドやお湯に入れるだけで塩素を除去できるタブレットを使うのがおすすめです」(辻敦哉さん)
シャンプーは「アミノ酸系で2度洗い」
「液体シャンプーに含まれる洗浄成分の界面活性剤は、主に高級アルコール、アミノ酸、石鹸の3種類です。頭皮と髪への刺激が強いものと、優しいものがありすべてが悪者ではありません。避けたほうがいいのは特に洗浄力が強く常在菌も殺菌してしまう高級アルコール系の界面活性剤で、天然の植物から作られたアミノ酸系の界面活性剤を使ったシャンプーは刺激が少なくておすすめです。成分表記にラウリル硫酸、ラウレス硫酸、ラウリルベンゼンスルホン酸Naと表記されているものは、高級アルコール系の界面活性剤を使っています。そして、洗い方は2度洗いがベスト。1度目で頭皮と髪についた汗やホコリを落とし、2度目でシャンプーの有効成分を浸透させて健康な頭皮と髪を育んでいきましょう」(辻敦哉さん)
マッサージ法
「マッサージは、筋肉の緊張をほぐして血液とリンパの流れを良くするのが目的ですが、頭だけほぐしても不十分。頭・首・鎖骨にかけてほぐし、脇の下の腋窩(えきか)リンパ節に続く『老廃物の通り道』を作る必要があります。まず腋窩リンパ節に近い胸周りからほぐし、次に首・頭の順にマッサージしましょう」(辻敦哉さん)
・胸周り
左手の親指以外の4本の指を、右鎖骨から指3本ぶん下にセット。後方に押し開くイメージで、胸の中心から外側に向かってらせんを描きながら大胸筋をほぐす。痛すぎず気持ちいいと感じる強さで2~3セット×1日3回。反対も。
・首
頭の重みを利用して、20秒~30秒かけてゆっくり首を右回りで回す。首筋、首の前後をまんべんなくストレッチし、特に凝っている部分は動きを止めてじっくりストレッチ。早く回すとストレッチ効果がなくなるのでNG。1セット×1日3回。反対も。
・頭
机に両肘をついて腕を固定し、頭の重さを利用して力をかけて側頭筋を指の腹で円を描くようにマッサージする。次にこめかみから前髪の生え際に手首をあて、前頭筋をゆっくりと押し上げる。各1分×1日3回。
育毛剤は「土台」を整えてくれる成分が重要
―ドラッグストアに行くとたくさんの育毛剤がありますが、選ぶときのポイントは?
「一つ言えることは、『新成分の○○配合!』といった目新しい成分に振り回されないこと。それよりも髪が生える土台となる頭皮の健康に必要な保湿、保水、ミネラル成分がきちんと配合されていることが大事。例えばミネラル豊富な海藻成分のフコイダンや、その吸収を助けるフルボ酸、保水力に優れた水溶性プロテオグリカンやグリセリンなど。あとはアルコール成分のエタノールを含む刺激の強いものは、女性にはおすすめしません。そして食事などの生活習慣を整え、体の内側からのケアを忘れないように!」(辻敦哉さん)
教えてくれたのは…辻 敦哉さん
ヘッドスパ専門店「プーラ」代表。現在は東京・埼玉・栃木・神奈川・愛知・兵庫・大阪に店舗展開し「プーラ式ヘッドスパ」を普及させる。ヘッドスパプロデューサーの傍ら脱毛症の研究に取り組み免疫力を上げて脱毛症の改善を目指す免疫育毛法®を提供。社会貢献の一環として小児がん、脱毛症・抜け毛に悩む小児とその家族の支援に従事。また白髪ケア、育毛に関する著書を執筆し、ベストセラーも多数。最新刊『「髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』(アスコム)では、辻式育毛マッサージ法を紹介。ヘッドスパ専門店「プーラ」 https://www.spa-pula.com/
監修医師/佐藤瑠美先生
内科医として朝倉医師会病院に勤務。医学博士、内科認定医、総合内科専門医、感染症専門医、感染症指導医、呼吸器専門医、呼吸器指導医、アレルギー専門医、化学療法認定医、化学療法指導医、抗酸菌症認定医、抗酸菌症指導医、インフェクションコントロールドクター、肺がんCT検診認定医
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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