そしてお散歩は、これからも私の中で続いていく|デンマークお散歩日記・後編【私のウェルビーイング】

 そしてお散歩は、これからも私の中で続いていく|デンマークお散歩日記・後編【私のウェルビーイング】
Chiaki Okochi
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「初めまして」はお散歩から

そしてついに私は、日本に留学予定の彼女に会う日を迎えました。私たちは彼女のサマーハウスがある海辺の美しい町へ。海岸沿いを2人で歩き、休憩にはアイスクリームを食べながら、どうして日本に興味を持ったのか、趣味や学校のことなどを話しました。

彼女は小さい頃からジブリのアニメを見ていたらしく、「日本にはまだ行ったことがないけれど、なぜだかデンマークに通じるものがあると思うんだよね。何でかは言葉にできないけれど」と言っていました。これはまさに私がデンマークに初めて来た時に感じたことで、何だかそれだけで「きっとお友達になれるんじゃないか!?」と強く感じたことを覚えています。こうして私は時折、週末に彼女のお家にお邪魔して日本語を教えるようになったのです。

思いがけない提案

あっという間に時は経ち、気が付けば学校生活も残すところ1ヶ月を切ろうとしていました。すると、今度はママが「2人でお散歩に行かない?」と、誘ってくれました。この日はよく彼女が家族と歩くコースへ。そして「もしまだデンマークに居たいのなら、私たちと一緒に住むのはどう?」と提案をしてくれたのです。

前に冗談半分で「デンマークにまだ住みたい」と口にはしていたものの、あまりの厚意に素直に受け取るのをためらう私。この上ないありがたさを感じるのと同時に、思春期の娘2人がいるご家庭にいきなり同居だなんて、もし逆の立場だったらと想像することが難しかったのです。そして、初めての同居に「せっかくこうして出会えたのに、もしもそれが壊れてしまったらどうしよう」という怖さもありました。

すぐには答えが出せない私に対し、彼女は「返事は急がないからね」と時間をくれました。数日経っても「心配だな、大丈夫かな?」とこの期に及んで感じながらも、ここは勇気を振り絞って厚意に甘えてみることにしてみました。

同居生活1日目

学校が終わり、こうして始まった同居生活初日。「きっと1人の時間も欲しいだろうから」と、母屋とは別の離れに私の部屋を用意してくれていました。しかもパパが、私のためにわざわざ床を綺麗に塗り直してくれたそうです。到着すると、「ここに置く家具は、母屋と納屋から好きなものを選んでデコレーションしていいからね」とママ。お嬢さんは観葉植物を用意してくれていました。窓際には、ひいおばあちゃんが所持していたクロスをピンで打ちつけてカーテンに。何もなかった空間が、あっという間にお気に入りのお部屋になりました。

荷解きを終えると、今度は「エルダーフラワーを摘みに行こう!」と裏庭へ。満開のこの時期、デンマークではお花を摘んでジュースを作るそうです。バスケットいっぱいにお花を摘んで、初めてのジュース作り。季節を感じながら、自然と共に暮らす美しさを満喫しました。

夕方には、彼女は学校がある本島のお家へ帰ったため、私とママでお散歩へ。この日、学校のお別れ会で朝から号泣していた私は、家族の温かい迎えもあり胸がいっぱいに。すでにお疲れ気味だと話しながら歩いていると、ママが「私の好きな花!」と見せてくれました。「あ、これも!これもだ!」と3つ摘み、私にくれました。お家に帰ると、私は陶芸のクラスで作った花器にそれらを飾ってみました。

「ここがあなたにとってのお家だと感じられるように、自由に過ごしてね」と何度も声をかけられ終わった初日。私はこれからの暮らしもきっと大丈夫な気がして、ぐっすりと眠ることができました。

お散歩の途中で摘んだ花たち
お散歩の途中で摘んだ花たち
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大河内千晶

大河内千晶

1988年愛知県名古屋市生まれ。大学ではコンテンポラリーダンスを専攻。都内でファッションブランド、デザイン関連の展覧会を行う文化施設にておよそ10年勤務。のちに約1年デンマークに留学・滞在。帰国後は、子どもとアートに関わることを軸に活動中。



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学校の裏手にある遊歩道
夕暮れ時の眺め
お散歩の途中で摘んだ花たち